星剣編 Ⅱ 雷の遣い
カイル・セイリオス。
セイリオス学園を統べる者。
何百年も世を生き、新たな芽を育ててきた。
【星の魔女】カペラ・リーゼロッテの作ったオーバーテクノロジー、【星剣】と人工的な天才児、【覚醒者】を集め、自他両方の大陸の均衡の崩壊を防ぐ為奔走中。
「んで?ガラ悪い連中と迷惑な動物の両方終わったの?」
手に持った液晶画面から少女が鬱陶しそうに話し掛けてくる。
その服はサイズがあっておらず右肩が露になっていて、髪もけっして綺麗とは言い難かった。
「いや、動物の方はまだだ。」
そういうと少女は食ってかかってきた。
「はぁ!?なんでわざわざ相手が有利な夜に行くわけ!?おかしいんじゃねぇの!?」
「言葉が汚いぞ、あと風呂に入った方が良い。お前が何かの手違いで外に出たときに、次の外出のチャンスが潰れる。」
「一生出ねぇわボケ。金積まれても出ねぇからなゴミカス!」
注意には聞く耳を持たずに罵倒を繰り返す少女に鎧の騎士は言う。
「お前を外に出す人間は、もう白馬の王子様しかあるまい。もっとも、交遊関係が狭過ぎるが…。」
少女は耳を塞いで騎士の言葉を遮る。
「あー!はいはいわかった!わかったから!んで、剣はどうしたの?」
「あぁ、その事なんだが。この村には持って来た剣に釣り合う物はなかったようで、丘にあるのをやると言われたものだから頂いてきた。」
少女は首を傾げた。
「持ってったのに見合う剣だったの?」
「星剣だったよ。」
「せ…は?」
少女は首を傾げる。傾げに傾げて、もう半回転しようという所だった。
「星剣だったよ。」
「アンタそれどうしたの?」
「引き抜いた。」
簡易的な返しに少女は叫ぶ。
「アンタそれマズいんじゃないの!?」
「かなりな…。そんなことよりガイドを頼む。」
少女は頭を抱えた。
「そんなことよりじゃないでしょ…学園がこの辺りに行く計画があったから…もしかしなくても星剣目当てで来てるし…。てかあれ、アンタ死ななかったの?」
「適応率四十を切っていたときもあったが無理矢理したら大丈夫だったよ。」
「通じないのね…アンタにはそういうのも。」
少女が呆れ果てて言う。
「結構激痛だったがまぁなんとか私は生きている。それだけで充分だ。えーと、マ…なんだったか、案内を。」
「マ、ル、カだっての!一年近く喋ってんだろブサイク!」
騎士は喋りながら森へと足を運ぶ。
「クッソ!マジかよおっさん!一部屋も空いてねぇ の!?」
「悪いねぇ…調度さっき取られてね。村で顔をきかせて悪さしてた奴等を騎士様が追い払ってくれてな。その人が取った部屋で最後だったんだ。」
宿屋の受け付けと話していた青年が叫んだ。
「で、そいつは何処に!?」
「さぁ…丘の上の剣を抜きに行ったんじゃないかなぁ。」
その一言に、青年は態度を変えた。
「今なんて言ったおっさん…剣を抜きに行ったって… ?あのバカみたいに危険な剣をか…?」
「あ、あぁ…。」
「お前ら…恩人を殺してどうすんだよ…?」
「べ、別にアンタには関係ないだろ…。それに…」
受け付けの態度に青年は怒りを募らせる。
「まぁ、良い…。結局剣を手に入れて世界のバランスを握るのは俺達のカイル・セイリオスだ。星剣は所詮剣。使い手も強者じゃないと意味がない。使い手でカイル・セイリオスを越える奴なんていないさ。当然な。」
そう言って青年は外へ歩いていく。
「まぁ、当の本人に合う剣が今のところ無いのは…いや。その内現れる筈だ。」
「ガヴェウン、今良いか?」
青年の耳にある機械から声が聞こえる。
「なんだカイル様。」
「さっきNO.4が所有権を認めた。しかも、性質の書き換えがされてある。」
ガヴェウンは舌打ちをする。
「さっき星剣を抜きに行った奴がいたらしい。
とりあえず寝る場所の確保も含めて森に向かう。」
「わかった。もう少ししたらこちらから連絡する。」
ガヴェウンは森へ歩き出す。
その後を追いかけるように、騎士も森へ。
剣をめぐる戦いは始まった。
To be continued