【覚醒者】 編 【凶星】編 III 光と闇 そして始動。
「カイル爺さん…!?」
「ようアルファルド。あれが覚醒者か?」
そう言っているカイルは少し息が上がっているように感じた。
「多分、自分で名乗ってたし。」
「ほぉ?にしても馬鹿でかいドラゴンが中にいるみたいな魔力してるな。」
「うん。大陸海竜だって。」
二人が話している途中。
「さぁぁぁぁぁぁあ次の挑戦者ッ!!どーぞぅ!!!」
という声。
そうして入ってきたのは、アルファルドと同じくらいの若い男だった。
「さぁあ!マーメイドか!?挑戦者か!?開幕ですッ!!」
「正直、さっきの私を見て挑戦とは、愚かとしか言いようがないですよ!」
竜の力を纏ったまま、水の覚醒者、カナロアが言う。
「そうそう、その慢心が非常に心地良いぞ。僕の舞台にぴったりだ。」
「…?」
そういうと、男は言う。
「楽園光竜、《ユートピア》!」
雷光。
と、共に四本足の鷲のような生物が現れる。
希少生物、グリフォンである。
「…っ!あなたは!」
カナロアが驚愕する。
「…竜依…!」
そういうと、彼の体には鱗ではなく、金の鎧が現れる。
肩、胸、そして兜はカナロアの竜のように、大陸を表しているようだった。
そして、背中の翼。
まるで、[自らの理想の世界に相応しい者の選定者]に感じられた。
「光神魔法士連、代表…アラマズド・ペレンティ…!!」
「いかにも…!」
カナロアの声を肯定すると、続けた。
「カナロアと言ったか、僕の理想郷に相応しい。僕はそう思った。僕と来る気は無いか?」
「あなたを止めるためにわざわざ眠ったのに…そんな言葉を投げかけるの…!?勿論ノーッ!!」
そう言って殴りかかる。当然巨大な竜のエネルギーを纏っているので超がつくほどスピードのついた一撃。
「残念だ…。それはとても。」
そういってアラマズドが放っていたのは、無数の光の矢。
カナロアの体に突き刺さる。
それだけではない。カナロアを吹き飛ばす。
カナロアの進行方向とは逆から来たはずの矢は、巨大な竜のパワーをも跳ね返したのだ。
「神の洗礼を受けろ。水魔法士の作ったまがい物よ…。」
「…そんな…ムーの防御を突破してくるなんて…!」
「当然だ…!僕自身が理想郷の体現!全ての選定者なんだからね…!っともう息切れか…他愛ないなぁ。」
カナロアの竜依が解け、ただの無防備な姿に戻る。カナロアが気絶したのだ。
「挑戦者ーッ!相手がダメージで気絶したら勝ちなんで、次の挑戦者を待ってくださーいッ!」
実況が言うが、アラマズドは聞かない。
「はっ…!バカ言え、これは選定だ。僕のルールで僕が動く。それだけだ。」
そう言って手に光の矢を構え、投げる。
距離はそれなりにあるが、客席から何かで止められるとは思えない。
「ヤバイぞ爺さんっ!」
「安心しろ。」
カイルの横を黒い物が通る。
矢を受け止めたのは。黒い光だった。
矢は爆発した。
「もう…勝負…ついてる…。」
そう言って、カナロアと同じくらいの身長の少女が言う。
黒いフードで顔は隠れているが髑髏をあしらった服から連想されるのは、死神。
「選定を邪魔したのだ。ただでは済まさん!」
「掩蔽団が一人…闇の覚醒者、セケル・ヘル・トナー、我らが聖域に…選定など…必要ない…。」
アラマズドが光の矢を放つ。
それをセケルは何かを投げて相殺する。
二つは消滅し、セケルの投げた物の残骸が散る。しかし、それを見てアラマズドは怒りに燃える。
「貴様…!僕の選定の一撃に、石を使って相殺しているのか…!?僕の矢に、石を…!?舐めているのかっ!!!。」
そう言って三本矢を放つ。
「うん…もちろん。これは…この聖域の意を示す為の戦い…。」
そう言って。二つ石を投げ、一本はその手で掴んでみせる。
「なっ…!?手が焼け落ちない…だと…!?」
その矢はすでに、闇が覆いかぶさり、まるで元からセケルの物のようだった。
「これがトリックの正体…私は…手に触れたものに魔力を流して…武器に出来る…返すね。」
そう言って矢をアラマズドの方に投げる。
「威力が一緒なら、関係ないっ!!」
そう言って矢を正面からぶつけたアラマズドは、さらに驚くことになる。
「バカ…私の魔力で強化されて…威力は二倍以上…。」
「ぐっ!」
矢を食らって吹き飛ぶ。
しかし、倒れる事は無い。
「舐めるなよ…学園の犬がッ…!」
数年前。
とてつもない長さの縦穴。一応今座っている一番下の所に面会室がある。勿論プロジェクターなので、相手がこちらへのコンタクトをしなければ何も起きないただの空いた空間。
射す光はほんの一筋。
何もする事もなく、何百年と生かされた私の体感した時間はとてつもなく長い、悠久。という言葉が相応しいのだろうか。
ただの地獄だったのだが。
最初の方に、大罪人がどんな人間か見に来た奴はいたが、既に時魔法をかけた牢獄はここだけになったのかもしれない。誰もいない。
私がいるのは孤島。
この島の人間は、この穴の事は知っているだろうが、何かわからない不気味さで何にもしなかった。時たま子供が上の部分を土で塞いで、雨で流れるものだから、ちょっと嫌な思いはした。
でも、そんなのどうでもいい。
何もする事のないという地獄。
あの時、私を買った奴の穢らわしい身体を受け入れていれば、ここにいなかったのだろうか?そんな事はない。いずれ私はあの主人を殺して外に出た筈だ。
そうしていたら、どこかの町で野垂れ死んでいただろう。
そう思うようになっていた。
時魔法がゆるかったのか、私の身体はそれなりに成長している。十七歳くらいだろうか。自分の顔が見たい。できれば次の雨の日に水浴びした後で。
この島は雨がほとんど降らない。
降ってほしいなぁ。
「何もやることが無い、というのはウソですね。」
「誰だ。」
誰かに話しかけられたら、そう訊く。
私以外の人間。いや、私も厳密には人間ではない。他の者の声は久方ぶりだ。
「まぁ、そう冷たくしないでください。これでも全大陸の牢獄跡を走り回ったんですから。それで、やる事がないという事でしたが、あなたは、その腕に付けられた監視装置を逆に利用して、限定的ではありますが、世界中の情報を仕入れている筈ですが。」
いきなり訳のわからない質問だな。
「私にそんな事が出来ると…?」
本当はしていたのだ。しかし最近はやっていなかった。それで退屈してやる事が無かったのだから少し話を盛ったって良いじゃないか。というか、なんで一人語りに入って来たんだ。
『出来るでしょうに、アプラちゃんならそうするもんね☆。』
「まぁ、それはそれとして、ここから出ないのですか?」
これも聞かれるのは予想外。
「どうしてだ。私に、出る理由は無い。」
「アンナ・リーゼロッテさん。」
おぉ、私をその名前で呼ぶとは。
「あなたに出る理由が無いなら作って差し上げます。」
そう聞こえると、プロジェクターが起動する。
というより、カメラはずっと動いていたのかもしれない。見られていたのかもしれない。
そうだとしたら、何もやる事がないような顔をしていたかもしれない。
一人の男が映った。若い眼鏡をかけた男。
しかし、今の時代年齢はアテにならないのではないだろうか。
「癪にさわったのはそのフクロウか?」
彼の腕には梟が止まっていた。
「梟を通して、若作りをしている五人の子持ちの女性が話しています。」
『あぁー!?なんで言ったの!?アプラちゃん傷つくーっ!』
「騒がしい。理由を作るとはどういう事だ。」
「頼まれてほしい事があります。私の子供を連れてきて欲しい。その達成までどれ位かかっても良いので。セイリオス学園という場所に行って欲しいのです。」
「それは、生徒として行くという事か?」
「それでも良いですし、コッソリ入っても構いません。手助けはあまり出来ないので、侵入の手配が出来ません。」
「それでは出る理由にはならないな。」
『なぁにこの子。ホントにカペラさんの娘なのぉ?アプラちゃんびっくり。こんなにタンパクなんて。』
「仕方ありません。地獄の底にいるのですから。」
「そうだな。ここは地獄だよ、でも住めば都という物だ。退屈以外には困っていない。」
「セイリオス学園には、ノア・リーゼロッテがいます。」
「誰だ?それは…。」
「あなたを産む前にカペラさんが迎え入れた養子です。」
あぁ、思い出した。確か忌まわしい出来事の始まりはノアに会いたいだのなんだのとあの売女が言っていた気もする。
『そして、唯一の娘と思っているノアちゃんに危険が及ぶかもしれなければ、カペラさんは学園に向かうでしょ?☆』
「今、何と…?」
『ゆいいつのー…む・す・め☆』
「アプラと言ったか、お前は姉が兄がいるな。コンプレックスだろう。」
『なぁにこの子…殺したいなー!今すぐー!☆何でそういうの見抜くわけ?ウっザ!』
「同じ境遇のような物だろう。」
「仲良くなったところで、申し遅れました。私はカノープスと言います。」
「本当に現れるのか?あの売女…私の母が…。」
「えぇ。それに応じて、武器なども手に入れつつ、戦力を集めて、学園に向かっていただきたい。」
「向かった後に戦力を整えるのは?」
「それでも構いません。私の双子を、片方でも良いので、学園に潜入後連れて来てください。いつでも良いです。もしあなたの意志にそぐわない武器などがあれば、その時調整しましょう。」
「こういう時の脱獄の理由は何になる?」
私は問い掛けた。
「まぁ、既に刑期は過ぎているのですが…。」
少し溜めて、カノープスは言った。
「復讐、ですかね。」
私は、その言葉を心で噛み締めた。
そして、声に出す。
「ここから始めるとしようか、【復讐】を。」
脚に力をこめる。
凄まじい長さの縦穴だが、結構前から跳んで出られそうだと思っていた。
読みは合っていた。
上の格子を思いっきり壊してやると、
風が吹き荒れる外に、私は出た。
Revenge start
フォロワーに後書きが自己批判だと言われました。
別にセミの奴はそんなつもりなかったんですが、そんな風に聞こえたらしいです。
今日はどっちかっていうと性癖の話なのですが、私は低い声のお姉さんであったり、年上に可愛がってもらうのが好きなのですが、それがとっても良い!というわけではなく、普通にロリっ子とかも好きです。
しかし、なぜか小説になるとそういう描写を書きたくなってしまう。どうしてなんでしょうか。