【蒼の弓】編 Ⅴ 【覚醒者】編 I 炎神 マリア
燃える屋敷の中で、必死に彼を探す。
「兄ちゃん!」
走る、走る。
皮膚が焼かれ、口の水分は蒸発する。
炎の壁の先に、彼はいた。
「宵…来るな。奴の悪事を明るみに出すまで、この家は腐りきったままだ。だがお前が真実を知りたいなら、強くなれ。お前が俺を越えたのなら…すべてを話す。」
「くっ…!」
赤黒い短剣を弾く度、森を囲んだ炎がこちらに押し寄せてくる。
神無が家に火を放ったあの時を、強く思い出させた。
しかし、あの時とは別物の火であると宵はわかっていた。
「火は嫌いなんだよなぁ…!仕方ない。弓で仕留めに行こう…。」
そう言って左手の弩弓を構える。
「まず射るのは…[絶対に当たらない一矢]。」
火の光剣を射る。まっすぐ飛び、奥の方で爆発。
「次に射るのは…[当たるかもしれない一矢]。」
もう一度、今度は相手の動きを少し予想して射る。
そして宵はしっかりと、相手が木の影で動くのを捉えた。
「そしてこれは…[絶対に当たる一矢]!」
矢はしっかりと相手に向かって飛ぶ。
だが、それは自分の方に帰ってくる。
「!?」
宵はかがむ。氷の光剣を球状に展開しての防壁も忘れない。
すぐ後ろで爆発した。
すぐさま木から飛び降り、地面に着地。爆発した方を見る。
「…後ろにいたのか…!?」
「…ほう…。まさか前方に飛んだ後帰って来る矢があろうとは…それに離れた私めがけて、とは。」
声が聞こえる。
煙から短剣の、柄に鎖が付いたものが地面に刺さる。
それを伝って降りて来たのは、グレーの髪の少女。
どこかの制服のような黒い服が、彼女の白い肌を強調していた。
「君は…?」
宵は尋ねる。
少女は右手を薙ぐ。
刹那、周囲の木が消し飛ぶ。
「…!!」
宵はその現象が信じられなかった。
消し飛んだ先は炎の壁。
分厚い炎を抜けなければ逃げられない。
「申し遅れた。私は、火炎魔術魔法士連、火の【覚醒者】。ペリウェスタ・マリア・マテル。」
「覚醒者…!?」
「おや、芽望 宵 程の魔法士が知らないとは驚いた。ならば名前だけ覚えてくれ。マリアで良い。」
少女は驚いた顔で首を横に傾けた後。スカートの両端をつまみ上げお辞儀をした。
「なら…マリア、君の目的は何だ…。」
「決まっていよう!手合わせだ。」
宵の警戒した表情とは正反対に、マリアは無邪気に言った。
「どうして…?」
「それは勿論、君が弓兵だからだ!私なら一捻りなのではと思ったのだ!」
「…なら確かめよう…!」
宵はなんの構えも取っていなかったマリアへ一気に距離を詰め光剣を振りかざす。
しかし、地面の違和感に気付く。
地面から少し上が歪み、赤黒い剣が現れる。
先ほど投擲武器のように使用していた短剣より長い物で、直ぐに宵の顔を掠めそうになる。
「(どういう仕組みだ…!?)」
魔法で一気に後ろへ跳躍。超躍という字が相応しい程だが、宵はそれでも驚いた。
既に、宵が斜め上に飛んでいた筈の距離は、既にマリアが一飛びすれば良いほどの距離に詰められていたのだ。
向こうで剣が跳ねている。つまり、マリアは宵と同じスピードで移動したのだ。
「どうした?矢を射らないのか?手が止まってるぞ、ほい!」
瞬間に宵の目上へ、蹴りを浴びせる。
宵は地面に叩きつけられる。
息を吐き出され、行動を制限される。
それでも攻撃は止まない。
鎖付きの剣を宵めがけ投げる。
「させ…るかよ!」
光剣をむやみに振る。
光が伸び、地面に刺さると、宵はその場へ引っ張られる。
地面を転がり、立ち上がる。
「驚いた!…そんな使い方も出来るのか!」
くるくると体操選手のようなアクロバットをしながら着地をして、マリアは言う。
「そうかい…!」
宵は矢を三連続で放つ。湾曲して、マリアに向かう。
「この矢は避けられないのだったな…!ならばこうすれば良いのだ!」
矢の正面から短剣をマリアは投げる。
しかし、矢は曲がる。
「何!?」
「芽望 宵の矢は必ず当たる…。狙ったものに!」
雷の魔法の矢が三つ爆発。
「ぐぁぁああぁぁぁぁぁあ!!??」
マリアは膝を着く。
「少しは驚いたかな…。」
宵は呟く。少しでも自分を奮い立たせる為の一言。現実はうまくいかなかった。
「くぅ…効くなこれは…!矢を撃たれる訳にはいかなくなったぞ…!」
そう言ってマリアは剣を両手に構える。
それに加え、手の甲の辺りにも剣が出現する。
宵が光剣を構え終わったと同時に、打ち合い。
宵は芽望家の剣術だが、マリアの剣は我流。
だが魔法での身体強化に加え、空中での姿勢制御を魔法で行っているようで、何もない場所を足場のように使って剣を振るって来る為、隙がない。
片手二本の計四本の剣は、受ければひとたまりもないだろう。
必死に耐えるが、宵の注意するべき物はこれだけではない。
追加の剣の召喚。
時たま剣を振り終えた後飛び出す追加の剣が、宵の防御を崩さんと襲い来る。
そして、爆発。
宵がダメージを食らった時、マリアが動く。
追加で六本も剣を出現させる。
勿論全て防ぎきれる訳もなく、宵に刺さる。
「っ…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
剣が刺さった痛みだけではない。
火傷。
剣は超高温だったのだ。血と肉が焼き切られ苦痛は倍増という言葉では片付ける事が出来ない。
「そうれ、これで終わりだぞ!芽望 宵!」
剣をマリアが突き立てた時。マリアの頭上から矢が降る。
「!?」
マリアの体に当たると、爆発ではなくどろり。と、溶け、マリアの体にまとわりついたまま、地面に触れる。
「なっ…!?重い…!?も、燃えない!?…動けないではないか!芽望 宵!…!?」
とどめを刺した筈の宵は、遥か空中にいた。
宵はその手から魔器を開封する。
そこから出てきたのは、蒼い弓。
雷の光剣を弦に掛け、放つ。
「結構プライドは高い方でさ…ちょっと怒ったんだよ…!ホントは神無兄ちゃんとの戦いまで使いたくなかったけど!これでお終いだ!」
矢がマリアの頭上から落雷として降りかかる。
「…しぶと過ぎる…。」
「痛いー!痛いぞー!芽望 宵ー!」
跳ねるマリアに宵は頭を抱えていた。
戦意は相手に無くなったが、不意討ちをするにもかなりの強者を正面からどうこう出来る程宵には余力が無い。
「痛いのだー!全身痛いのだー!助けろー!」
「わ、わかったから落ち着いて…。」
そう言って、宵が手を前に出した時、マリアの無邪気な宵へのジャンプと宵の手の位置は偶然にも、噛み合ってしまった。
「あ。」
身長が近いのがいけなかったのか、無闇なジャンプのせいか、宵の手のせいか。
マリアが宵に寄りかかり、宵はそれを両手で受け止める形になった。
宵の手の中に、厳密には手の中から溢れているが、マリアの柔らかな感触が伝わる。
声を出したのは宵の方で、表情が、これは取り返しのつかない事をしてしまった。で止まる。
マリアは手で受け止められたのを感じると同時に、自らの膨らみが鷲掴みにされている事に気付く。
「ご、ごめ…」
宵は声が出ない。
マリアの白い顔はどんどん赤くなっていく。
「ほ、ほんとにごめ…」
「〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
言葉にならない叫びをあげてマリアが後ろに倒れた。
To be continued
ラッキースケベが書きたかったのです。
某有名な野球選手がすごい記録を打ち立てたり、とてつもない規模の即売会があったりした季節な訳ですが、僕は特に何もしてません。
カードやって、寝て起きてご飯食べて、ついた脂肪を落とさず寝る。
堕落して堕落し切った最低な生活ですが、これ位しかやる事が無いのです。外に出たく無いのです。
んなことより、覚醒者 ウェイカー はノアの治療法を応用した、魔法を寝てる間に脳に詰め込む技術を施された子供な訳ですが、
マリアちゃんは中々子供っぽいですね。自由に育ったんですねきっと。
子供っぽい人ばっか増えて困る気もしますが、全員があんな感じではないですので安心を。
マリアちゃんがずば抜けてあほの子なだけです。
かわいいよマリアちゃん。
僕も即売会に出るならマリアちゃんのえっちな本を描きたい。それでは続きまでさようなら。