【蒼の弓】編 IV 炎の襲撃者
「神無兄ちゃん…!」
「よぉ宵。俺を殺しに来たか?家の裏切り者だもんな、仕方ないから相手しないとな?」
神無は静かに言った。
「陽嵐姉ちゃん、トリム、離れて、ヤバイ!」
そう言い切るかどうかの時には、神無の手には銃が握られていた。
そのまま発砲する。
宵は光剣で弾く。
「おぉ、さすがだ。」
そういって発砲を続ける。
音は三回。弾道は見えている。弾く手応えを感じる直前に、おかしな事が起こった。
空振り。
そして、振り抜いた腕に弾丸。
「うっ!?」
「宵ぃっ!」
弾丸が曲がったのである。
「ほら、避けろよ宵。」
神無は発砲を続ける。
「くっ!見てらんねぇ!」
トリムは陽嵐を下がらせると、前に出た。
「おおぉぉおおおお!!」
弾丸が曲がる前に、盾で弾き、神無へ向かう。
「ダメだトリム!神無兄ちゃんの特技は!」
トリムが吹き飛ぶ。
「そう、俺の得意なのは居合術だ。射程に入れば斬り殺す。いくら盾でも厳しいだろう、防ぐのは。」
「くっ…なんだあの衝撃…!」
銃を持っていた手には、鞘に収められた刀が握られていた。
「良いねぇ、生きている奴は久々だよ。」
そういって、手を刀にかけると、そこから衝撃波が発せられる。
「くっ!」
盾をトリムがすぐさま構え、防ぐ。
しかしそれでも、トリムと宵の体は切り裂かれた。
「ど、どうして!?…」
「クソ、盾を抜けて来た!?」
「防ぎきれないとは、修行不足だな。」
両脚を知らぬ間に斬られ、二人はバランスを崩した。
「クソっ!動けない!」
「頭を垂れ無いのが勇ましいぞ。宵、そして宵の理解者。だから、潔く、死ね。」
「だぁー!あれどうなってんだよ!」
「わからない…だが、少しだけはわかった。」
いつもの喫茶で反省会をする。
「ほんとか!?すげーな宵はやっぱ。」
「いや、もしかしたら不正解もあるし神無はまだ隠してるわ。」
陽嵐が口を挟む。
「正直、神無は強くなり過ぎよ。本気を出さないとやられるわよ。」
「まだ隠してる手があんのか?宵。」
「まぁ、なくはないんだけど…。正直、一騎討ちとか対人用じゃないんだ。」
そうか。といってトリムは座り直す。
「とりあえず一週間後、どこにいるかは掴んである。それまで特訓しよう。」
三日後、宵は森にいた。
勿論仮想世界。魔法の産物だ。
しかし、樹の枝は本物のように宵の足場となってくれている。
「これで終わりだな…。」
神無の一件で、立ち止まるわけにはいかなくなった。
帰って、特訓に戻ろうとした時。
赤黒い短剣が飛んでくる。
「!?」
光剣で弾く。
短剣が燃えて消える。
「…これを片付けないとダメそうだな…!」
しかし、異変に気付くのが遅すぎた。
「森が燃えてるのか…!?俺を囲むように…!?」
こんな事を行える魔法師が近くに潜んでいるとなると油断ができない。
「せめて姿さえ捉えられれば、射抜けるんだが…。」
To be continued