「同性を好きになる人は、じつは左利きの人と同じぐらいいる。」
「同性を好きになる人は、じつは左利きの人と同じぐらいいる」
このキャッチコピーを見たのは大学二年生だった
私の家族はとても自由な家族だった
母親は放任主義だが面倒見は良く、父親は単身赴任で数ヵ月に一回帰ってくるぐらいだった
生活で言えば不自由はない
むしろ恵まれていたほうだと言える
姉妹四人全員希望の学校に入れてきた
もし私が恵まれていないというなら
それは運ぐらいだ
恋が楽しいなんて誰が言ったのだろう
恋が素敵なんて誰が言ったのだろう
青春は眩しいなんて誰が思ったのだろう
青春は爽やかなんて誰が思ったのだろう
もし恋や青春を本気で賛美する人間がいるなら
その人は運が良かっただけ
もしくは美化しているだけ
恋も青春も
ほんとうは砂漠なのだと私は言える
私は運が悪かった
たまたま苦しむ側のクジを引いただけ
「同性を好きになる人は、じつは左利きの人と同じぐらいいる」
それはただの運だ
同性を好きになることに、なんの理由もなく
そして左利きと同じく、なんの善悪もない
ただ、すこし変わっているだけ
隠す必要もないし、存在を否定される意義もない
けれど時に
人との違いは迫害を呼び、
自分自身さえ受け入れることを拒む
孤独を愛する人は、本当の孤独を知らない
恵まれた幸福に守られていることに気付かない愚者だ
もしくは人を愛することを知らないただの人間嫌い
人を愛することを知っている限り
孤独からは逃げられない
それは私も同じ
特に青春は逃れられない
孤独の流れにもがき溺れて愛情の葦を探している
恋や青春が美しいなんて大人の嘘だ
大量生産された商業用の恋や青春は欺瞞に満ちている
ただ、
もし私が他者だけでなく自分も愛せていたのなら
こんなに長く苦しまなくてもよかったのかもしれない
孤独を作るのは他者ではなく自分だと知るために
私は恋をして愛して独りになってきた