戦闘教育//模擬戦
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──戦闘教育//模擬戦
私たちは基礎を習得した生徒たちに模擬戦を提案。
これまでひたすら飛行魔法と魔力装甲を展開し、維持する地味な講義ばかり受けさせられていた生徒たちが盛り上がる。
「私たちも二つ名付きみたいに戦えるようになりますか!?」
「強力な攻撃魔法を教えてください!」
生徒たちはまるでゲームのように盛り上がっていた。
だが、これから教えるのはゲームのように華やかなものでもなければ、安全なものでもない。
実戦に即した訓練なのだ。
「静かに。私が教えるのは言ったように生き残るための手段だ。生き延びなければ、英雄になることはできない」
ソフィアのその言葉で一度は生徒たちは静まったものの、やはりどこかわくわくしているように感じた。
その無邪気さが私には少し気の毒にも、不気味にも見えた。
彼らは戦場について何も知らないのだ。
「まず2名1組を作るように」
私たちが教える戦闘の術は2名1組のフォーメーションのもの。
それは帝国軍でコルネリアたちに教えたのと同じものだ。
思えばコルネリアたちも魔法学校で戦争と英雄に夢を見て、実際の戦場に落胆していたっけ。
私はそんなことを思い出しながらソフィアの隣に立つ。
「ダフネちゃん。一緒にやろう」
「ええ、テオドラ」
ダフネはテオドラと一緒になった。
仲のいいふたりだから、当然だとも言える。
その仲の良さは羨ましいぐらいだ。
それから全員が2名1組となり、私たちはいよいよ模擬戦を始めた。
「最初の1組から始めよう。誰から私たちに挑む?」
「はい!」
そこですぐに手を上げたのはダフネだ。
テオドラの方は心配そうにしているが、ダフネはやる気満々であった。
しかし、ダフネには他の生徒のような浮ついたような雰囲気はない。
彼女は真剣に私たちに挑もうとしている。
「いいだろう。私たちの教えるやり方ではどちらかひとりが防御を担当し、ひとりが攻撃を担当する。それぞれの役割を決めるんだ」
そんなダフネたちにソフィアがそう指導する。
「ダフネちゃん。私が防御をやるよ」
「任せたわ、テオドラ」
どうやらダフネとテオドラはダフネが攻撃、テオドラが防御を担当するようだ。
テオドラは魔力装甲を展開し、ダフネとともに空に上がる。
「リンクス。怪我をさせないように手加減しろ。帝国軍の訓練とは違う」
「了解、師匠。でも、ダフネは強いよ。油断しないで」
「そうか。それならお前も良い友人になりそうだ」
ソフィアは私の言葉に本当に嬉しそうだった。
彼女はダフネと言う友人をとても歓迎しているように見える。
それから私もソフィアと一緒に空に上がり、ダフネとテオドラに対峙する。
「では、模擬戦を開始する。お互い怪我をしないように」
「ええ、ソフィア先生」
ソフィアがそう言い、ダフネとテオドラが身構える。
「──始めよう。『偉大なる精霊たちよ。願い奉る──』」
役割通りソフィアは魔力装甲を展開し、防御に努めた。
私の方は怪我させない威力ながら複数の魔力の矢を形成し、ダフネたちに向ける。
「テオドラ。動くわよ」
「りょ、了解、ダフネちゃん!」
やはり初めからフォーメーションが上手く行くわけじゃない。
ダフネとテオドラは近すぎたり、遠すぎたりの位置となり、なかなか攻撃と防御の分業ができていなかった。
私たちは容赦なく、その隙をついて攻撃を行う。
小石がぶつかった程度の威力の魔力の矢が飛び、テオドラの魔力装甲から漏れたダフネが攻撃を受ける。
「ご、ごめん、ダフネちゃん!」
「大丈夫だから落ち着きなさい、テオドラ。まずは歩調を合わせるところからよ」
「う、うん!」
しかし、それからの飲み込みは早かった。
ダフネとテオドラは魔力装甲による防御を適切に展開しながら、ふたりでフォーメーションを描いている。
それはダフネがテオドラの歩調に合わせたという感じであり、テオドラの飛行がよろめいてもすぐさまダフネがそれに合わせていた。
ダフネの方はそうやって調整しながら私たちに魔力の矢を放つ。
「初めてにしてはなかなかだな。コルネリアたちよりも覚えが早い」
「だね。けど、あれはダフネが無理してるよ」
「そうだな。リンクス、それを教えてやれ。切り崩すぞ」
「了解」
私は無数の小威力の魔力の矢をダフネたちに差し向ける。
テオドラはそれを防御しようと止まり、ダフネもそれに合わせて停止した。
それが私たちの狙いだ。
「斬り込むよ、師匠」
「ああ」
私たちは急接近して肉薄し、魔力の刃を形成。
「えい」
それを振るってテオドラの魔力装甲を揺さぶった。
テオドラの魔力装甲の表面に波紋が生じ、テオドラが小さく悲鳴を上げた。
「そこまでだ、リンクス」
そこでソフィアからストップがかかった。
私はすぐに魔力の刃を解除し、ダフネたちから距離を取る。
「どうだ? これが実戦に近い戦闘だ」
ダフネたちは肩で息をしながら地上に降り、ソフィアがそう生徒たちに告げる。
場はしんとしていた。
生徒たちが夢見た華やかさも何もないが、これが効率的な殺しであることは誰の目にも明らかだっただろう。
「凄い……」
「あのダフネさんが一方的に……」
生徒たちはそれから私たちが行ったことの難易度を理解し、感嘆と畏敬の呟きを漏らしていた。
「流石だわ、リンクス……。私たちはまだまだ勉強が必要ね……」
ダフネもそう言い、荒く息をしながらもにやりと笑った。
「さあ、次のペアの相手をしよう。時間はまだある。全員相手できるぞ」
それから私たちは模擬戦を繰り広げた。
怪我をさせないように生徒同士での模擬戦は禁止し、私とソフィアが彼ら全員の相手をした。
帝国軍のコルネリアたちに教えたときよりハードな仕事だが、私とソフィアはその大変な仕事をこなしていった。
私たちは実戦経験があり、戦闘時間も長い。
その点、生徒たちの相手をするのはコルネリアたちを相手にするよりは楽だ。
私とソフィアは挑みかかる生徒たちを倒していき、ようやく全員の相手が終わった。
そのときには運動場ではへばった生徒たちで満たされていた。
私も疲れていたが、ソフィアの方はまだまだやれそうなほど涼しい表情だ。
「よし。また次の講義は飛行魔法と魔力装甲の維持からだ。今日はこれで終わりだ。戻ってゆっくり休め」
「はい、ソフィア先生……」
ソフィアはそんな彼らに優しくそう言い、生徒たちは疲れ果てた様子で戻っていく。
「リンクス」
そこでダフネが話しかけてきた。
「あなたは流石ね。あなたからもっといろいろと学びたい。次の週末にあなたの家に遊びにいってもいいかしら?」
「もちろん、いいよ。遊びに来て」
ダフネの提案に私は頷く。
隣にいたソフィアも異論はないどころか歓迎しているらしく微笑んでいた。
「ま、待って、ダフネちゃん。それなら私も一緒に行く……」
と、ここで慌てた様子でテオドラがそう言った。
彼女はダフネのローブの裾を握り、そう言って私の方を睨むように見る。
「テオドラもいいかしら?」
「……もちろん。断る理由がないよ」
テオドラは私の家に来て遊びたいというより、私がダフネを傷つけないか見張りたいのだろう。
彼女の視線からは未だに困惑と警戒を強く感じる。
「決まりね。なら、週末は遊びに行くからあとで住所を教えてちょうだい」
「分かった。あとでね」
こうして私はダフネと約束し、ソフィアの始めての講義も終わった。
「どうだった、師匠? これからも講師、やれそう?」
「ああ。何とかなりそうだ。お前のおかげでもあるな……」
ソフィアはそう慈しむように微笑み、私の頭を撫でてくれた。
「私は助手をしただけだよ」
「いいや。それ以上の存在だよ、お前は」
彼女はそう言い、私たちは講堂の方に戻っていく。
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