09
危ない!!
ボアの突進を何とかギリギリで避ける。
傷口から出血し続けているせいで、ボアの突進も最初よりはだいぶ遅くなってるように感じる。
とはいえ、森の中で足場が悪い。気を付けないとテオみたいに転んで一気にピンチになっちゃうな。
時々、木を間に挟んで何とか距離を保つ。
くっ、次の突進が来る!またギリギリまで引き付けてボアの死角側に避ける。心なしかボアの突進の勢いもだいぶ落ちている気がする。
いまだ!
ふぅ、何とかこれも躱せた。
「なっ!?まだだ、イリーナ避けろ!」
テオが叫んだとき。ボアが体を捻り、目の前にあった木に横から体をぶつけることで勢いを殺し、避けたはずの私めがけて追撃の突進を仕掛けてきた。
「ぐっ、うわぁ!」
直撃を食らわないように体をボアの進路から反らす。最初の突進の勢いが弱く感じてたのはこの追撃をするためだったのか。やられた、低く見積もったつもりはないけど獣に対する認識が甘かった。
何とか直撃は避けることができたが、右肩に当たってしまった。腕や手は動くからそこまでひどくはないが、少しの衝撃でも肩に響く。ひびくらいは入ってるかも。
どのみち、ボアは目の前だ万全の状態でもこの距離から逃げるのは難しいだろう。
「ちくしょう!!俺が相手だ!」
息を整えたテオが私とボアの間に入って木の枝で威嚇する。
「バカ!私はもう動けないからテオだけでも逃げて!!」
「バカはお前だバカ!お前みたいなバカでも女の子を見捨てるような奴は男じゃねぇ!!」
ボアが再び突進の構えを取る。もうだめだ、全力の突進は子供の私達じゃ止められない。
「よく言った!それでこそ俺の自慢の息子だ!」
声とともに私たちとボアの間に剣を持った男が現れた。
「親父!」
そう、兵士団でもあるテオのお父さんだった。
「二人ともよく踏ん張ったな。あとは任せろ」
ボアにとってはもはや相手が子供だろうが大人だろうが関係なかった、ただ目の前の敵を倒す、それだけだ。
ボアが勢い良く突進する。
「親父!あぶねぇ!」
さらりと、余裕を持って躱すとボアが急に足をもたつかせて転んでしまった。
よく見るとボアの足の裏の筋が切られていた。ボアは立ち上がることも満足にできず、とどめを刺された。
「二人とも無事だったか」
この世界で初めての、いや前世を含めても初めての命を懸けた戦いはようやく終わったのだった。
ゴツン!
「痛てぇ!」
「このバカ息子!子供だけで森に行くなって行っただろうが!」
「殴ることねえじゃんかよ…」
「イリーナちゃんは大丈夫だったかい?」
「ちょっと肩が痛いけどそれ以外は平気」
「肩だね少し痛いかもしれないけど、触るよ」
痛ったーい!!!
「痛い、痛い痛い!」
「うーん。完全に折れてはなさそうだが、ひびが入ってるな歩くだけでも痛いだろう」
やばい、さっきまでアドレナリンでよくわかってなかったけど、ちょー痛い。
「マジか!?イリーナの怪我は酷いのか?」
「大丈夫だ、今は痛いかもしれんが、このくらいだったらシスターのスキルで直してもらえるさ」
「そうなのか、よかった」
ゴツン!
「痛ぇ!なんでまた殴るんだよ」
「うるさい!満足に女の子一人も守れんのかこのバカは」
「俺だって、必死に頑張ったんだから少しくらい褒めてくれてもいいじゃんかよ!」
「問答無用!!次から訓練は二倍だ」
「そ、そんなぁ。それだけは勘弁してくれよ親父~」
「はははっ、痛っ」
笑うだけでも痛いや。でも何とかなって本当よかった。
「ヒール。よし、これでもう大丈夫ですよ。よく頑張りましたね」
シスターが赤く腫れていた私の肩に手をかざすとスーっと痛みが引いていき、腫れも気づいた時には元のすべすべお肌に戻っていた。
「ひどく痛かったでしょう、もう大丈夫ですからね」
「むぐぐぐ」
シスターの腕の中に包まれて頭ポンポンされた。
「シスター、実は俺もボアの突進避けるときに足をくじいて」
「お前はつばでもつけとけ、実は最近兵士団が忙しくてよく眠れないんです」
「馬鹿親父!母さんに言いつけてやる!」
「なっ!それは違うだろう」
「あらあら、二人とも元気そうでよかったです」
まったく、親子そろってシスターの大きなお胸に鼻の下伸ばして。カッコいいと思った気持ちを返してほしい。
「シスター、怪我を治してくれてありがとう。治療費は私が大きくなったら払うから待っててください」
「いえ、大丈夫ですよ。こんな小っちゃくて勇敢な子からお金を取ってしまっては、神に使えるものとして失格ですそれに」
「ああ、先ほど倒したボアはあとで部下に処理をさせてから教会に寄付するつもりだ今回はそれを治療費としてもらうう」
「久しぶりにお肉がいっぱい食べられますね。ですのでイリーナさんは心配しなくて大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
「でも、もうこんな危ないことしちゃだめですからね。め!ですよ」
この後家に帰った私はボロボロになってしまった服を見たお母さんに心配されこってりとお説教されたのであった。




