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あれから更に3年の月日がながれたのであった。
訓練学園へ向けて出発しないといけない、今日でこの13年育った街を出るのかと思うとちょっとしんみり。
ただ、いつかは他の街にも行ってみたいと思っていたから少し楽しみな部分もある。
私とテオは3年前にあのおっさん騎士に言われて基本的な体力トレーニングを続けていた。
剣術とかそういった武術一般は、変な癖がつくと大変だからテオも素振りをするにとどまっていた。
私たちがトレーニングをしてる間に、アンナちゃんはこの間お父さんに連れられて隣町にはじめての行商に行っていた。
限定的だけど持っていく商品の一角を任されて、自分で情報を集めて何が売れるのかを見極めるいい学びになったと言っていた。
オラクに至っては2年前から新たに自分の畑を開墾して、今では一人前の農家さんだ。スキルのおかげで自分の子供のように感じちゃって納品するときに根性の別れだと言って号泣してる。
一番食べてるのはオラク自身なんだけど、自分が食べる分にはいいらしい。
さて、そろそろ出発の時間だから向かわないと。
「それじゃあ行ってきます」
「体には気を付けるんだよ。これはお父さんとお母さんからだ。大抵の準備は向こうがしてくださるそうだけど、だからと言って無駄遣いはいけないよ」
お金が入った革袋を受け取る。
「うん、どうしても買いたいものがあったら自分で働いて買う」
「そういうことじゃないんだけど、頑張ってきなさい」
「イリーナ、ちょっとだけ抱きしめさせて」
お母さんに抱きしめられる。生まれてから何度も抱きしめられてきた、世界で一番あったかい場所。
「行ってくるよ、お母さん」
「ええ、子供が大きく成長しようとしているのに、背中を押さないでどうして親を名乗れましょうか。行ってらっしゃい、イリーナ」
「行ってきます。お父さんお母さん」
これで、しばらくお別れ。13年過ごした小さくて心地よい家が遠ざかっていく。
広場につくと街の多くの人が見送りに来ていた。
「よーし、嬢ちゃんに坊主、二人ともそろったな。ちゃんと両親にはお別れしてきたか?」
「うん、ばっちり!」
「大丈夫、親父ったら昨日はすんごいうるさくて一気に酒を飲み干したかと思ったら泣き出してよ、鬱陶しいったらありゃしないぜ」
「それだけテオのこと、大事に思ってくれてるってことだよ」
「そうだぞ坊主、お前も親父さんのことは大事にしてやれよ」
「イリーナちゃん!頑張ってね、離れていても応援してるから」
「ありがとうアンナちゃん。私もアンナちゃんのこと応援してるよ」
オラクが大きな木箱を持って、近づいてくる。
「これ、僕が育てた野菜。よかったら王都につくまでの食料にしてよ」
「嘘だろ、あのオラクが進んで野菜をくれるところなんて俺初めて見たぞ」
「僕だってテオやイリーナは幼馴染だし応援してるんだよ」
「ありがとう、オラク。大事に食べるね」
「うん、美味しく食べてくれると嬉しいな」
テオがオラクの持ってきた木箱を馬車の荷台に乗せる。
あれ、そういえば
「竜車じゃないんですか?」
「うん?ああ、確かに竜車のほうが早いがちょっと訳ありでな、なあに近道するからそこまで遅れないさ。さて、そろそろ出発するぞ」
オラクやアンナちゃん以外の街のにも見送られながら私とテオは生まれ育った故郷を初めて旅立った。
ガタガタと馬車が激しく揺れる。
「おい!おっさんここ本当に道なのか?あたり一面森なんだけど」
「バルガだ、おっさんにだって名前はあるんだぞ。この森を超えれば一日で隣の伯爵領に着くんだ。それに騎士目指してるやつがこの程度で音を上げてどうする」
「わ、バルガさん前!前!」
この森は街からもだいぶ離れた魔物の領域だ、いつ魔物が現れてもおかしくない。
けもの道を走る馬車の前に現れたのは大の大人よりも一回り大きなオークだった。
「ちょうどいい、お前ら見とけよこれが魔物を相手にするってことだ」
馬車を止めたバルガが腰の剣を抜く、剣に手をかざすと根本から炎が立ち上る。
「何だあれ、かっけぇぇぇ」
テオは完全に炎の剣のカッコよさに見とれている。
「これが俺のスキル炎加だ」
そういって一太刀のもとにオークを切り裂き倒してしまった。




