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テオが台座の上の水晶に手を伸ばす。
上位スキル 剛剣術
剣の道を究めんとする者よ驕ることなかれ、これは始まりにすぎぬ
上位スキルだ、テオが上位スキルを授かったぞ!!
誰かが声を漏らすと方々から祝福してるのか驚いてるのかよくわからない怒号がしばらく響いた。
「嘘だろ、この俺が騎士になれるかもしれないのか…。よっしゃー!」
ようやく実感が沸いてきたのか、飛び跳ねて喜んでいる。
「静粛に、まだイリーナのスキルの儀が残っているのですよ」
先ほどまで騒いでいた大人たちもシスターにいさめられてどこかばつが悪そうにこちらを伺っている。
そうだよな、普通だったら直前で上位スキルが出て自分が残念なスキルだったらいたたまれないもんな。
私はあまり気にしないけど。
「それではイリーナ。水晶に触れてください」
「はい」
騎士は嫌だ。騎士は嫌だ。騎士は嫌だ。
ほう、騎士は嫌か、いいのかね?騎士になれば多くの成功が約束されているのだが。嫌か…それなら…騎士!!
もし、水晶が喋ってたらこんなやり取りができたかも。
スキル 加速
一度動き出したら誰であっても止めることはできない
制限スキル 神の瞳(6)
神の瞳に映るは森羅万象、全てがその眼下にさらされるだろう
誰も、声を発することができない。皆、自分の目がおかしくなっているのではと疑っていたからだ。
神の瞳て、名前がすごすぎてとても実はしょぼいスキルでー、とか言える雰囲気じゃない。
あと、もう一つの加速は私も知らないな。単純に足が速くなるとかなのかな。
「制限スキル…初めて見ました」
シスターがようやく声を絞り出すと同時に
うおぉぉぉ!!制限スキルだ!
初めて見た制限スキルに街の人たちも、さっきの上位スキルの時よりも大きな声で騒いでいた。
あとで聞いた話だが、制限スキルを出した領地には王様から直々に褒賞が与えられるらしく、それに対する喜びもあったとか。
「ごほんっ、以上を持って今年のスキルの儀を終わります」
気を取り直したシスターが場を何とか収めてスキルの儀を終わらせた。
「すっげぇなイリーナ!イリーナだったら何かしらの上位スキルでも授かるんじゃないかと思ってたけど、まさか制限スキルを授かるとはな」
「おめでとうイリーナ、騎士候補生になっても頑張ってね。時々僕が育てた野菜とか送るよ」
「じゃあ、あたしがそれを商売のついでに持って行ってあげるわ。安くしとくわよ」
「えー、僕たちからもお金とるの?」
「当たり前でしょ!友達だからって贔屓してたらそれこそ商人失格よ」
「逞しいことで。スキルのすごさじゃ負けたけど騎士候補生としては負けないからな!勝負だイリーナ」
「待って待って、まだ騎士候補生になるって決まったわけじゃ…」
「い~や、二人とも騎士候補生になってもらうぜ」
動きやすそうな軽装の黒い鎧を着た男が歩み寄ってくる。
「誰だよおっさん。見覚えがないから最近来た冒険者か?」
テオが怪しそうにおじさんに聞く。
「彼は、今日のためにわざわざ王都から足を運んでいただいた立派な騎士様ですよ」
おっさんについてきたシスターが説明する。
「そうだぞ!ただのおっさんじゃねぇ、騎士のおっさんだ」
「マジかよ…これが騎士、飲んだくれのおっさんにしか見えない」
テオがそう思うのも無理はなく、無精ひげが生えた顔はどこかほんのりと赤い。絶対にこのおっさん、さっきまで酒飲みながら見てただろって顔だもん。
「テオとイリーナだったか?二人には3年後に騎士候補生として王都の訓練学園に行ってもらう」
「あのー、それって辞退出来ますか?」
「嬢ちゃんは無理だな、珍しいとはいえ居ないわけじゃない上位スキル持ちだったら強制じゃねえが、国に五人といない制限スキル持ちを見逃したとあっちゃ俺の首が飛んじまう」
「デスヨネー」
やっぱダメかー。制限スキルだもんなー、国に五人もいないんだもんなー、逃がすわけないか。
「でも、珍しいな。大抵の子は騎士になりたいって子のほうが多いのによ」
「イリーナちゃんは冒険者になりたいのよ」
アンナちゃんがおっさん騎士の疑問に答える。
「ほー、冒険者ねぇ。まあでも、騎士候補生になった奴の中には冒険者になったのもいるから希望はゼロじゃないと思うぞ」
歴代の制限スキル持ちは全員騎士になってるけど、と続く言葉はおっさんの心の中にしまい込まれた。




