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婚約破棄されたので、未来を先に潰します!  作者: あけはる


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3/3

後編

これで完結です。

 ローキエウとの条約更新の本会議は、

 王宮最奥の会議室で開かれた。

 

 宰相、外交局、財務部、軍務部、ローキエウの大使。

 各部署の官吏たちが慌ただしく出入りしている。


 王太子エイドルフと新たな婚約者ロザリアが

 たいそう華美な衣装で席につき、

 国王陛下の登場で会議開始の鐘が鳴らされた。



「我々は更新に前向きです」


 ローキエウの大使が穏やかに切り出した。


「ただエイドルフ殿下の先日のご意見は……少々懸念材料でして」


 エイドルフは椅子にもたれ、薄く笑った。


「懸念?我が国は対等を望んでいるだけだ」


「ほう、対等と?」


 大使の言葉に、エイドルフの頬が引きつった。

 国王陛下が低い声で問う。


「エイドルフ。お前は何を言った」


「誇張ですよ父上、大使殿が少々過敏なだけです」


 エイドルフが机を叩いた。

 自分が主役だと示すために。


「更新条件が気に入らぬなら破棄も辞さないと、そう申し上げたのです!」


 ――言ってしまった。


 私の視界に、白い火花が散った。

 未来の失敗が、現実の言葉に重なった瞬間。


 会議室が凍る。


 国王陛下が、ゆっくり立ち上がった。


「エイドルフ、お前は何を考えている」


「我が国が折れる必要はないのです!」

 

 エイドルフは自信ありげに答える。が、

 国王陛下の声は重かった。


「・・・お前が折れない代わりに、我が民を折るつもりか」


「そ、それは・・・最新鋭の軍備や・・・」

「そ、そうですわ!我々貴族を守る盾になれば民草も本望でしょう!」


 劣勢と見たのかロザリアも慌てて口をはさむ。


「戦になれば死ぬのは兵と民だ。

 お前たちは王太子とその妃でありながら、血を、命を、理解していない」


 国王陛下は場違いに派手な衣装を着ている二人を強く睨んだ。


「ロザリア、君は王太子妃の器ではない。

 そしてエイドルフ、お前もだ。加えて最近の狼藉は目に余る」



「――退席せよ。今この場で、“王家の席”から追放する」


 厳しい表情をした国王。

 彼から放たれた言葉を、聴衆は理解しざわめきだす。


「そ、そんな!」


 エイドルフの顔から色が消えた。

 

 ロザリアが崩れ落ちるようにエイドルフへ縋るが、

 エイドルフは、言葉を探し、何も見つからず、口は開いたまま。

 

「さあ、連れていけ!」


 王の言葉にどこからともなく国王直属の騎士が現れ、

 喚く二人を捕らえ、有無を言わさず会場の外へ連れ出していった。


 誰も同情しなかった。

 民を軽んじる言葉は、この国で最も重い罪だ。


 ローキエウ大使が静かに言った。


「……貴国の意向は、理解しました。では協定更新は――」


(ここだわ・・・!)


 私は一歩前に出て、静かに手を挙げた。


「陛下。発言の機会を」


 国王陛下が頷く。


「セレスティナか、許す」


 私は深く一礼した。


「私に交渉権をいただけませんか」


 ローキエウの大使が静かに席を立つ。


「我々も交渉相手が変わるなら、改めて協議の場を設けましょう」


「セレスティナ」


「はい」


「……お前のような者が必要だ」

「外交顧問として任命する。ローキエウとの交渉に携われ」


 私は深く頭を下げた。


 誇りが胸の奥で静かに鳴った。


 会議室を出て、扉に背を向け、歩き出す。

 すると隣にアーヴィンが並んだ。


「……セレスティナ様ご自身の未来は、見えるんですか」


「私には、他人の失敗しか見えません」


 私が答えると、彼は小さく笑った。


「じゃあ、僕が見ますよ」

「あなたが選ぶ未来を、隣で確認していきます」


 灯が柔らかくほどける。

 

 私は一度だけ、足を止めた。

 王妃陛下の形見――小さな護符を、掌の中で握る。


『逃げないで。あなたの目は、国を守る目になる』


「仕切り直しですね」


 誰に聞かせるでもなく、私は呟いた。

 そして再び歩き出す。


 国を守るために。

 私自身の未来を、今度こそ選ぶために。

最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
国王陛下がまともで良かった。 &周りの寄贈品達もまともで良かった。
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