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方針決定

 これまでのあらすじ。

 隣で寝ているヒナさん? 27歳だよ。


 などとすっとぼけている場合ではない。状況を、整理しなければ。

 と、いっても、整理すべき情報はそう多くはない。

 まず、純然たる事実として、かわいらしい寝顔ですうすうと寝息を立てている彼女は、27歳。こればかりは、疑う余地がない。さすが、我が国において最も身分を証明してきた公文書ICカードだ。身分の証明能力というものがひと味違う。


 となると、この事実――真実ともいう――を受け入れた上で、問題となるのは、だ。

 俺は――どうするべきか?

 ……このことである。


 まず、確認しておきたいのだが……そもそもこの状況って法的にOKなのだろうか?

 別段、法曹家を目指しているわけではなし……法律について詳しいわけではないが、性別が逆だった場合、一発アウトだった気がした。

 まさか、男女の性別ごとに判例が異なる……というのも、こういう問題だと普通にありえるのか?

 まあ、いいや、罪だったとして、おそらく申告系のそれであろうから、俺さえ黙っていれば何も問題はない。

 よって、法律的、倫理的な側面では問題がないものとする。問題にしようとする人間がいないのなら、罪は発生し得ないという理屈だ。


 だから、この状況下で考えるべきなのは、社会のルールでもモラルでもない。

 ずばり、俺がどうしたいのか……この一事である。


 ハッキリ言おう。ヒナさんとの初体験は、そりゃあもうすごいものだった。

 何日も溜め込んでいてギンギンだった時でさえ、一人では連続四発もヤッたことないのだから、男女で行う営みの破壊力というものがうかがい知れる。

 あるいは、彼女が個人的にすごいのか、はたまた、俺たちの相性が素晴らしいのか。

 いずれにせよ、あの感覚は生涯反芻し続けていくであろうし、できれば、今後もこのような機会に恵まれたい。


 おや、答えが出たではないか。

 そう、俺の望みは――継続。

 ヒナさんとのとの関係を、ナンパによる刹那的なものではなく、継続的なものにしたいと望んでいるのである。

 ぶっちゃけると、まだまだヤリたい!


 ならば、ここで俺が取るべき行動は、ただひとつであろう。

 すなわち――気づかなかったフリである。

 素早く免許証を財布にしまい、財布そのものもハンドバッグの中へとイン!

 ……ついでにググールレンズで調べてみたところ、このハンドバッグ、ルイ・ヴィトンだったわ。

 つーか、普段接点がなさ過ぎて気付くの遅れてたけど、すごい特徴的なモノグラム柄だったわ。

 へー、ついでのついででググったけど、これって日本の家紋に触発されて思いついたデザインなんだ。


 ……ヒナさん、これ堂々と持ち歩いて実年齢隠すつもりあったんだろうか。

 あるいは、気付くかどうか、俺が試されていたという線もあり得……ないな。彼女は天然だ。


「ん……」


 隣で眠るヒナさんが、身じろぎした。

 そうすると、彼女の胸にかぶさっているかけ布団がズレて、細身の割になかなかのボリュームを誇るお胸がポロリと露わになる。

 うわおっ! グレイッ!

 心の中でガッツポーズなんぞ決めつつ、布団を元に戻してあげた。


「うーん……よく寝ている」


 そりゃ起こさないように気を使ってはいるが、さっきから免許証を調べたり、スマホのアプリを立ち上げてみたりと、そこそこ動いてはいる。

 ちょっと腕を動かした際に生じる空気の動きだけでも、十分に感じられてしまいそうな距離感なのだが……ヒナさんは、気付くことなく爆睡中であった。

 免許証の情報だけではそこまで分からないが、彼女はほぼ確実に社会人。

 どのような仕事をしているかは定かでないものの、少なくとも、俺ごとき一介の男子高校生などとは、比べ物にならないくらい疲れているに違いない。

 この熟睡っぷりは、日頃の疲れが出ているからと考えるべきだろう。


 だが、どんな物事にも終わりというものは訪れるものであり、ぶっちゃけ、いつまでも寝続けられる人というのは存在しない。


「う……ん……」


 目元をこすりながら、ヒナさんがそっと起き上がってくる。


「おはよう、ヒナさん……」


 俺はそんな彼女に、できる限りさわやかで、かつ、優しい笑みを浮かべてみせたのだった。

 さあ……気づいていることを、気づかせないで済ませられるか?


 ――勝負っ!




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