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異世界救済 シナリオを変えて推しの王子様を救え!からの溺愛&どんでん返し?  作者: たかなしコとり
推しの王子様が物語を救う

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第64話 明日は大晦日


見ていると、サイン会を終えた夜空先生が降りてきて、そのお兄さんに話しかけた。

励ますように、肩を叩いている。

ああ、あの人、イオ〇の人じゃなくて、編集さんとか書店さんとかに近いスタッフさんなんだな。


しかしまあ、よりによって「僕、ファリスです」って、なんなの。

ひどいよね。

自分が主人公だと主張したら、そりゃ「鷲羽国物語」の作者のイベントだもん、女の子が釣れる確率上がるよ。


やめてほしい。

私の大事な物語を、ナンパの道具にしないでほしい。

キャラメル・マキアートをずずッとすすりながら考える。

ふと思う。

だけどファリスってそう言えば、本編では出てこなかった名前だな。

私でなかったら、ファリスが標の君の本当の名前だって、分からなかっただろう。


あれ?


なんか変だな。

どうしてあの人、自分がファリスですって言ったんだろう。

よくよく思い返せば、私の事をディラーラって呼んだよね。

ん?

いや、呼んだっていうより、なんか独り言っぽかった。

だけどディラーラって名前も、小説では出てこなかった名前だ。

そもそも、ディラは話の中に登場しなかった。


なんでディラーラ。


あー、しまった。

あのお兄さんの話、もう少し聞いておけばよかった。

裏設定集が漏洩したとか何とか言ってたっけ。


でも正直、そんなの聞いたことない。

他の小説、例えばハリーポッターの話に裏設定があった、として、コアなハリポタファンが狂喜乱舞したとする。でもおそらく数日中にはその内容がネットに流れているだろう。

でも、「鷲羽国物語」でそんなの、聞いたことない。

裏設定集があるらしい、というのも、この謎クイズに関連して流れている噂であって、「あった」「見た」という人はネット上でも皆無。


謎クイズに正解しても、私みたいに釘を刺される上に、その裏設定集を見せてもらえるわけでもない。


じゃあ、あのお兄さんはどういうつもりだったんだろう。

「あなた、裏設定集、盗んだよね?」てこと?

それとも、まさかとは思うけど、私みたいに「『鷲羽国物語』に行ってきたんです」、てこと?


うそ。そんなことある?


まだあそこにいるかな。

一応、確かめてみたい。


急いで、さっきのイベントスペースに戻ったけど、遅かった。

もう全部撤収済み。

その辺の椅子の上では、買い物待ちの疲れたおじさんとか、ベビーカーの赤ちゃんに飲み物をあげているお母さんとかがちらほらいるぐらい。


ああ。

残念。


もし「僕ファリスです。」が本当なら、標の君の中身が、あのお兄さんだったって事?

うわ。なんかすごい。


え、でもあれ、結局夢オチだったんじゃないの。

混乱する。


どゆこと?


でももう、全部撤収済み。

次回のイベントにでも参加して、もう一回あの謎クイズに正解するしかないのかも。

年末セールの垂れ幕が目に入る。

く~。

このもやもやを抱えたまま、年越しか。


でもちょっと元気出た。

ありがとう、お兄さん。


とりあえず、いろんなもやもやは置いておく。

もう明日は大晦日だからね。

家に帰って、まだ半分以上箱に入ったままの荷物を、出来るだけ片付けよう。

トートバッグももらえたし。


晩御飯の買い物をして、バス停でバスを待っていると、目の前にちっちゃいピンクの車が止まって、窓がうにーんと開いた。

「お嬢さん、乗ってかない?」

運転席にいたのは、夜空ひかり先生。

わぉ。


「早く早く。後ろからバス来ちゃう。」

えっえっ。

急かされて、思わず助手席に乗り込む。

「あのっ。」

後部座席を見ると、さっきのお兄さん。

ひっ。


「近くのファミレスで、一緒に晩御飯食べよう。いい?」

いい、と言われても。

「あのー。何か御用なんでしょうか?」

「うちの弟が、なんか恐がらせちゃったみたいだから、謝ろうと思って。」

後ろを見ると、さっきのお兄さんが小さくなっている。


夜空ひかり先生は、てきぱき運転して、駅近くのファミレスに車を止めた。

〇イゼリヤだった。

「ごめんねー。この辺、あんまりよく分かんなくて。」

売れっ子エッセイストが、急に身近になる。


「私もよく来ます。」

大学の近くにある。

入り口近くのボックス席に座って、クリームパスタを頼む。あと、ドリンクバー。

作家先生もお兄さんも、それぞれ頼んで落ち着いた後、おもむろに夜空先生が切り出した。


「私たちね、『鷲羽国物語』の原案者を探してるの。」


ん?

「原案があるんですか?」

「そーなの。あ、ちょっと陸、ドリンクバーで、コーヒー入れてきて。あなたは?コーヒーでいい?」

背の高いお兄さんは、口の中でへいへい、みたいなことを言いながら、ドリンクバーのコーナーへ歩いていく。


もう見るからに、とぼとぼ、という歩き方に笑いそうになる。

悪い人ではなさそうだ。


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