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異世界救済 シナリオを変えて推しの王子様を救え!からの溺愛&どんでん返し?  作者: たかなしコとり
推しの王子様が物語を救う

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第60話 カルガモ


ピンポーン。


遠くでチャイムの音がした。


ああ、なんか気絶してたみたい。


ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

連打。うるさいなぁ。誰か止めて?リナはどうしたの。


目を開けると、目の前に箱があった。

何これ。

ゆっくり体を起こす。

帝王切開はうまくいったのかな。

全然痛くない。


赤ちゃんは?

どこ。


見回したけど、なんか箱だらけの狭い部屋に押し込められている。

何これ。

え、まさか今度こそ、砂嶺国の連中に誘拐されたとか。


ピンポーン。ピンポーン。


チャイムが鳴っている。

もう。どうして誰も出ないの。


よいしょと起きて、部屋のドアを開ける。

狭い廊下。木で出来ている。

え?木?

廊下の先に、玄関。ガラスの引き戸。数人の人影。


またピンポーンと音がした。


「・・・はい?」

返事してみる。


「あ、田中さん!よかったー!お留守かと思いました。カルガモ引っ越しサービスです!」

田中さん。

カルガモ引っ越しサービス。


「えーと。」

「とりあえず、開けてもらえます?」


あー、はいはい。


鍵を開けると、そろいのジャンバーを着た数人の男性が立っていた。

「九時のお約束でよかったですよね?早速始めますんで。よろしくお願いします!」

ぼぅっとしている私を横目に、毛布を敷いたり、段ボールを壁に貼り付けたりし始める。

何人かが、靴を脱いで、中に入っていく。


「あー、残ってるのはこの部屋だけですね!箱詰めの最中に寝ちゃったんですね!よくありますよ!」

威勢のいいお兄さんが、そう言って笑った。

背中のジャンバーに、カルガモの親子が書いてある。


さっき私が倒れていた部屋で、どんどん箱を組み立てていく。

「じゃ、ここにあるもの全部詰めていきますね!」


はぁ。

まだ頭が追い付いて行かない。

私の子供たちは?リナは?ミッテさんは?

つっかけをはいて、外へ出て、しげしげと周りを見て、それが見たことのあるものだと気付く。


おじいちゃんちだ。

ていうか、私んちだ。

ちっちゃ。

ええ?


服はボロのトレーナーと、ちょっとよれたジャージ。

うわ。こんな格好で。


ぼーっと見ていると、冷蔵庫と洗濯機とテレビ、電子レンジといった家電がどんどん運び出されていく。続いて段ボールの箱・箱・箱。

「えーっと田中さーん!服、どうします?」

声をかけられて、我に返る。


「あ、あの、あの。」

女性スタッフが一人いて、中から呼んでいた。

「着替えられます?あと、靴も一足残しておきますね。」

あ、はい。

心遣い、ありがとうございます。


着替え終わった頃に、来客があった。

誰だっけ、と思ってぼーっと顔を見ていてやがて思い出す。

「おはよう。伯父さん。」

「どうした、まだ寝てんのかい。もうちょいだから頑張んなさいよ。」


伯父は、てきぱきと引っ越し屋さんに指示して、

「住所ここだから。」

とスマホで見せて、家の中を確認して、私を自分の車に押し込んだ。

「弁当、買っといたから。後で食べなさい。」


後部座席から、唐揚げのいい匂い。


車が止まった先には、もうさっきの引っ越し屋さんのトラックが止まっていて、伯父さんがアパートの鍵を開けると同時に搬入開始。

たったか中に運ばれていく。


私がぼぅっとしているので、全部伯父さんが仕切ってくれた。

お昼ちょっと過ぎには、すべて完了。

カルガモさんは全員撤収。

伯父さんも、私の手にお弁当を残して、

「家は今月末までの契約だからな。それまでは覗きに行くぐらいは大丈夫だぞ。」

との言葉とともに去って行った。


唐揚げのいい匂い。

久しぶりだ。


アパートの部屋の中に入って、茫然とする。

箱だらけ。

狭い。


押し入れ付き六畳一間とダイニングキッチン、の間取り。

バス・トイレ・ベランダ付き。

狭い。

大公邸の、入り口ホールぐらいしかない。


百個近い段ボールが、壁の両脇にずらっと積み重ねられている。

ああ、開けないと。


でも先に、お弁当食べよう。

朝ごはんも食べてなかった。


透明なフタを透かして、お米が見える。

ご飯だ。

懐かしい。


空いている場所に座って、一口食べたら、涙が出てきた。

懐かしい。

帰って来たんだ。


唐揚げは唐揚げの味がした。


お腹を触ってみたけど、当然、帝王切開の跡なんてなかった。

ああ。あんなに頑張って産んだのになぁ。

みんな元気かな。

赤ちゃんは無事生まれたのかな。


標の君は。


標の君はどうしただろう。

無事王都に帰って来ただろうか。

赤ちゃんに会えたかな。


私は、ディラはどうなったんだろう。

元のディラが戻ってきたのかな。


確かめる術はない。

あー涙が止まらない。

向こうにいる間に、ディラの泣き癖がうつったみたい。


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