第41話 これでゴール!
結婚式はホントに、大変でした。
涼しくなってからの式を想定していたので、服にしろ料理にしろ、秋に合うものを考えていたんだけど、それを全部夏向きの物にする必要があったし。
王宮の宮内省みたいなところから何度も何度も人が来るので、きっと向こうもすっごく大変だったんだと思う。
対応していたおばあ様も、サディナも、発狂寸前って感じだった。
私のせいではないけど、ちょっと申し訳なかった。
でもそのおかげで、結婚式は本当に華やかで、何もかも行き届いて、「幸せになるのよ?」とサディナに涙ながらに見送られて、そう言えば私、本当の両親には花嫁姿を見せられなかったなぁとじーんときたり、じいちゃんばあちゃんに彼氏を紹介することも出来なかったなぁとか思ったり。
王都にある主神殿で、神官立ち合いのもと、誓いの言葉を述べたりなんかして、紙に名前を書き込んだり、標の君と手を取り合って階段を下りたり、もうリハーサルやりすぎて本番感が薄いことだけが残念だったけど、それでも、これでもう練習することもないんだなぁと思うと、感慨もひとしお。
ちなみにドレスはまたしても緑。
そこは白が良かった・・。でも国旗が緑で、まあ国の色なんだよね。
仕方ない。
その後、王宮の広間で披露宴。
国王陛下臨席で。
私の助言がよかったのかどうか、陛下はかなり元気になったのだ。良かった。
見たら、前と近習の顔ぶれが変わっていた。
もちろん、毒を盛ったとかではない。毒見役はちゃんと仕事をしている。
ただ、健康な人間にはただのおいしい食事でも、病気を抱えた人間には致命傷になる食事がある。
塩気が多いとか。脂っこいとかね。
前の近習は、やたらお酒を勧めて来たらしい。
遠方から取り寄せた、口当たりの良い強い酒。毒見役はもちろん飲んでも平気。
だけど肝臓を悪くしている国王陛下には、あやうく致命傷になるところだった。
わざとではない、とその近習は言ったらしいけど。
微妙なラインだ。
とにかく、国王陛下は毎日レモン水をがぶがぶ飲んでいる。
披露宴の間も、手酌でレモン水を飲んでいた。
本当は、肝臓の薬とか手に入ったらいいんだけどね。
陽昇国から取り寄せているという薬草を、ちょっと見せてもらったら、なんと乾燥させたドクダミだった。
あの、おばあちゃんちの裏庭に生えていて、抜いても抜いても抜いてもしつこく生えて来る、あのドクダミ。
確かにお茶にしたりしてたけどね。まさかこれをわざわざ取り寄せているとは。しかも結構な値段するのよ。
あんな雑草が。
ちょっと納得できない。
後、聞いた話だけど、実は、大地の君による国王暗殺説が流れる所だったらしい。
急に体調をひどく崩したので、王太子がなんかやったんじゃないか、ということだ。でもその後、大地の君が回復法を見つけて献身的に看護した、という話が流れて、暗殺説は消えた。
んふふ。その回復法、私だけどね。
披露宴は、一日目は王宮での晩餐、二日目は王都にある大公家の屋敷での正餐、三日目は領地に移動して、そこのマナーハウスでの晩餐でした。
めっちゃ大変。
そこそこの地獄でした。
でも。
でも。
これでゴール。ハッピーエンド。
標の君を、怪我から救い、兄君との仲違いからも救い、政略結婚からも救った。
エシル将軍ちも救ったし、ついでに王様の寿命もちょっと延ばしたし、大地の君を悪評から救ったし、なんなら鷲羽国も衰退からちょっと救った。
すごい。
よくやった。私。頑張った。
「標の君は、かわいいヨメといつまでも幸せに暮らしました。」
ていうエンディングまで持ってきたぞ。
後はのんびり、大公妃として領地と王都を往復しながら暮らすだけ。
マナーハウスは敷地がとても広くて、花を育ててもよし、畑を作っても良し。
憧れの、のんびりスローライフを満喫できる。
しかもあの標の君と一緒に暮らしながら。
最高。
めっちゃ幸せ。
ウキウキしながら、大公領に来て、披露宴をやって、標の君とイチャイチャして。
新婚!
いやーん。新婚です。
もう、世界はバラ色。
改めて、使用人たちと顔を合わせるまでは。
どうしよう。
「女中のリナです。」
にこにことこちらを見た、かわいい女性に、正直打ちのめされる。
標の君の、運命のひとがいた。
こんな所に。
どうしてここに。
それも今になって出てくるか・・。




