表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界救済 シナリオを変えて推しの王子様を救え!からの溺愛&どんでん返し?  作者: たかなしコとり
推しの王子様を政略結婚から救う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/73

第30話 むしろ荒れ地の〇女

思わず「マ」と言いかけて、後の言葉は飲み込む。

いや、もちろん顔が似てるわけじゃないよ。全体の雰囲気が。

あと誤解のないように言っておくけど、本物の方は結構好きだから。


だけど。目の前の姫は、なんというか。

うーん。よく見れば美人かも。

おそらく元々は、そうなんだろう。

でもその、たっぷりしたワンピースドレスの全身から、隠しきれない何かがあふれ出している。


え、一年のダイエットで、すっきりするの?

大丈夫?

〇イザップ並みに厳しい体重管理しないと、無理かもしれない。


「私の新しいイヤリングをお願いしたいの。」

よいしょ、とソファーに座ったエレーン姫が、はにかみながらそう言った。

ああ、美しい声。

小説の中でエレーン姫を表現した、いろいろな言葉を思い出す。

確か彼女は標の君の一個上、十八歳だ。

本が好きで、博識。うっとりと夢見るような黒い瞳。長いまつげと、賢そうな額、そして特徴的な鈴を振るような美しい声。が、〇ツコ・デラ・・・いやむしろ荒れ地の〇女の中に、埋め込まれている。


ごめん。

やっぱり標の君を渡すのはイヤだ。

私が、一生懸命知恵を絞って守った標の君だ。みすみす他の女に渡したくはない。


アルクト兄さんが、見本帳を出して、デザイン例を示している。

「今鷲羽国で流行していますのは、小ぶりな宝石を金の細工にあしらったものでございます。」

「そうねぇ。も少し宝石の大きなものがよいかしら。」

苦し気なお腹をよじりながら、見本帳を覗き込む姫に、ふと嫌な予感がして背筋を伸ばす。


「どのような場所でお召しになりますか?」

一応聞いてみる。あなた引きこもりですよね?

「まだ決めてはいないんだけど。ただ流行の違いもあるし、こちらにあったものを揃えたいの。」

「さようでございますか。ですが、こういった飾り物はお洋服との釣り合いも大事でございます。そちらを見せていただくことは出来ますか?」

横で、アルクト兄さんが、ちょっとびっくりしているのが分かる。


エレーン姫の侍女が答えた。

「新しいものを今、お仕立て中でございますので。」

「どこで仕立てているか、教えていただけますか?そうしたら次回、それに合ったデザインのイヤリングの見本をお持ちしますから。」

店の名前を聞いて、さっと前を辞する。


「どうしたんだ、ディラ。びっくりするじゃないか。もう少しあの姫様と親しくなっておけば、お抱えになれるかもしれないのに。」

帰る道々、ぶつくさ言っているアルクトに、断言する。

「あのお姫様は、戦争の賠償金替わりに鷲羽国に来たのよ?すっごい貧乏なの。宝石に払えるお金なんて、爪の先ほどもないはずなのよ。」

「えっ。」

アルクトはもう少しで馬車の操作を誤るところだった。


「だけど、アルダ商会で服を作ったって言ってたじゃないか。」

そこがどんなところが知らないけど。きっと一流の店なんでしょう。

でも。

「そこにちゃんと支払いがされてからじゃないと、信用しちゃだめ。」

アルクトは、感心して口笛を吹いた。

「すげぇ。お前がそんなこと考えているなんて驚くよ。しかしうちに話を持ってきたバラン商会の話じゃ、有力な貴族の後ろ盾があるとか。」

「絶対ムリ。やめて。」


かかった戦費を払わせようとしたが、砂嶺国の宝物庫から王冠を含めありったけの宝石やら金貨やらを出させても大した額にならなかった。

しかも蝗害のせいでこの冬を越せるかも怪しい。おそらく大量の餓死者が出るだろう。

仕方ないので、残りの賠償金は王族の命で贖え、というのでやってきたのがエレーン姫だ。


おそらく「姫」という肩書だけで、ツケで買い物をしているに違いない。

ほぼ詐欺に近い。

ドレスにどれぐらいお金がかかるか分からないけど、それをドレス屋さんが回収できる可能性は低い。

まして、純金のアクセサリーなんて。


あー。なんか色々裏側が見えて来そう。


標の君は大公だ。

今はまだ後宮住まいだけど、いずれ大公領をもらって独立する。

原作では、戦争で破傷風様の怪我を負ってどんどん弱る標の君は、周囲に押し切られる形でエレーン姫と結婚し、大公として独立する。

ただ、一年足らずで標の君は死んでしまい、残されたエレーン姫は大公妃として一人けなげに大公領を守っていく。


え。なんか怖くない?

見方を変えれば、エレーン姫はうまいぐあいに標の君の財産を手に入れた、とも言える。

あの調子で買い物をしていれば、おそらく借金は一年で大した額になるだろう。

それを大公領から上がる収入で返済した、とか。

そりゃ死に物狂いでダイエットに励むよ。


ちなみに大公家は一代限り。貴族三十六家の中には入らない。

大公領を召し上げられる前に何とかしたければ、子供に英才教育を受けさせて十二省に入れるか、あるいは三十六家と縁組させるしかない。

エレーン姫は子供を持てないが、でも自分一人が暮らしていくには十分だっただろう。


原作のイメージが変わるわ。怖いわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ