10月5日(金)
終わった。
この夢みたいな日々が終わりを告げられた。
明日、おばあちゃんが旅行を終えて帰ってくる。しかも、帰り際にあたしを拾っていくらしい。ゆえにおばあちゃん家に行くのを忘れていたなんてズルもできない。あたしの性格を知り尽くしたおばあちゃんの手の回しようが恐ろしい。血の繋がりなんてないというのにお母さんよりもあたしのことを知り尽くしていた。
お母さんがあたしに興味が無さすぎるだけかもしれないけど。
そんな死刑宣告後、兄は上機嫌であった。
あたしが出ていくのがそんなに嬉しいか。
あまりにも腹が立ったのでそのまんま問い質してみた。
「突然家に転がり込んできて築き上げてきた生活リズムをぶっ壊した奴が出ていくとなればそりゃ嬉しいに決まってるだろう」だとさ。
ぐうの音も出ない正論だったよ。
少しぐらいは家出してきた可愛い妹に優しくしてくれてもいいのではなかろうか。
「可愛いと思ったことない」
うん、前向きに考えよう。セクシーと思ってくれたということにしておこう。連日連夜モロパンを見せ続けた甲斐もある。少しはあたしの女性的魅力に気付いてくれたのかもしれない。今日も今日とてモロパン見せてやろう。キャバクラみたいに胸の一つでも押し付けてみようか。そんな心の中の小悪魔がニヤリと笑う。
さてこの小悪魔、威勢はいいけど、耳年増でバージンで小心者だった。
ちょっとエッチな描写がある少女漫画は大好きであるが、リアルな描写があるものは「自分にはまだ早いかな」と遠ざけるぐらいにウブだった。まだまだピュアな感性を残しているし、理想の初体験を夢描いてる面倒臭い乙女であった。乙女という部分は、処女とルビを振ってもいい。
パンツを見せれば興奮するだろうという浅い知識を恥ずかしげもなく実践する小学生男子程度の理解度と行動力であった。考え無しに実行するものだから予定外なことが起きると固まってどうしたらいいか分からなくなる。
そんな出来事が風呂上がりにモロパンを見せつけていた時に起きた。一瞬しか拝めなかった出来事であった。兄貴の股間にテントが張っていたのを見つけてしまった。ジーンズゆえ分かりにくかったけれど、それはたしかにピンと膨れ上がっていたのだ。兄貴はポジション直しを装ってそれをポケットに手を突っ込んで隠した。
あたしの洞察力と兄貴の危機感の高さ。
一瞬の交差であったといえる。
もっと見ていたかった気持ちがないとは言わないが、これで良かったと思う部分も大きい。
兄貴があたしに興奮したという証拠を見せつけられたままだったら、あたしはあたしがどうなっていたか分からない。怖気づくならまだいい。嬉し恥ずかし恐ろしいで、パニックを起こして兄貴に襲い掛かったかもしれない。
山姥如き醜悪さを発揮したやもしれない。何も知らない処女のくせに。
この事件であたしは考えを変えた。
この夢みたいな日々は早々に終わりを迎えた方がいいのだと。
これは早くおばあちゃんの家に避難した方が精神衛生上良いと思い直した。
あたしが正気でいられなくなるから。いっそのこと兄貴も正気でいられなくなったら、あとは二人して流されるだけで楽なのに。まあ修行僧みたいな日々を送った兄貴と堕落しきった生活に浸りきったあたしとでは、どちらが先に正気を失うかは明白だ。




