巻き込まれ召喚、貴方は何を選択する?
【2025/7/6 加筆修正しました】
ありがたいことにランクインさせていただいて感謝しかありません。
物語の展開を早めすぎてラストが分かりづらくなっていたので修正しました。
流れは変わっていませんが、1度読んだ方もどんな修正をしたか気になれば是非ご一読ください。
巻き込まれ召喚、様々なパターンの設定がありますよね!こんなのも面白そうでは?というのを書いてみました。
スキル「多数決」
神様達だったらこの状況どうしますか?
A.動揺した様子で取り乱す
B.落ち着いた様子で問いかける
C.その他
・・・・・・・・・多数決の結果「B」が選択されました!
Bよねやっぱり。
私の見た目的に取り乱したりすると相手の不興をかいかねないもの。
「申し訳ありませんが質問をしてもよろしいでしょうか?」
私の発言を聞いてやっと周囲の人間の視線が私に向いた。
見た目でいうと王様、王子様(複数)、宰相、騎士団長、神官、魔術師的な人?かな。
そして王子様に手を取られて頬を染めていたけど私の声でじゃまされて不快そうな顔を隠しもしない女子高生。
その中で1番偉いであろう王様が声をかけてくる。
「おぉ、すまない。・・・してそなたは一体なぜそこに?」
こっちが聞きたいくらいなんだけど・・・
そんな答えしたら転生小説でよくあるパターンの追放かな。
「私もなぜここにいるのか、ここがどこなのか、この状況が何なのか分かりません。
ですので、よろしければ皆さんにお話を伺えたらと思いお声をかけさせていただきました。
不敬であれば申し訳ありません」
深く頭を下げゆっくりと頭を上げてから王様に視線を合わせる。
「ふむ、そうか。伝承によれば召喚した聖女様は状況を理解していると聞いていたのだが・・・」
「陛下、発言をしてもよろしいでしょうか?」
神官的な人が王様に声をかける。
「うむ、なんじゃ?」
「恐らくそこの女性は聖女様の召喚に巻き込まれてしまったのではないでしょうか?過去の文献でも1度だけですがお2人で召喚された事例がありました」
聖女召喚・・・ね、やっぱりこれ最近流行の異世界転生だよねぇ。
本当に自分の身に起こるとは。こういう場合どうするのがいいんだっけ?
なんとなく状況を察した私は心の中で考えを巡らせる。さっきまでのは夢だと思ってたけど現実だったのかな。神様から説明されたスキルがどうのこうのって話とか、
神様達が暇つぶしに私の人生を見ていてスキルを使ったらアドバイスをしてくれるって話とか。
「過去にもあったとは本当か?聖女様が2人など・・・儂は聞いたことないがの」
「いえ、聖女様がお2人ではなく、あくまでももう1人は巻き込まれたという・・・」
王様と神官的な人が話し、宰相や騎士団長が聞いている間、王子様達と女子高生は楽しそうに会話している。
私のことはまた完全に放置。
目が覚めた時も女子高生にむかって聖女様が召喚に答えて下さった!とかで盛り上がってて、私のことは視界にすら入ってなさそうだったし。
それで暇だったから夢の中で神様からきいたスキルとやらを使ってみたりしてたけど・・・
これはもう悪者にされるパターン的なやつかなぁ?神様達どう思います?
スキル「多数決」
A.少しのお金をもらって城からでていく
B.一般常識を学ぶ為に城に置いてくれとお願いする
C.その他
・・・・・・・・・多数決の結果「A」が選択されました!
「C」を選択した神の中から愛の女神アフロディーテの回答を表示します。
「騎士団長と恋に落ちる希望!」です。
希望!ってなによ。そりゃ小説とかならそういうパターンもあるし、そういう恋愛は見ていて最高だよね?分かる分かる。
海外俳優?というか漫画とかの顔面そのままの美丈夫で、なおかつなにあの太さの腕!なにあのゴリラって言われかねない筋肉なのに顔がいいとあんなにかっこよく見えるんだ。
まぁ実際に体験してみるとあれって無理だなとか思う。だって騎士団長さんなんて私の方見てすらいない気がするもの。あきらかに仕事してますって感じ。
まぁどう見てもイケメンだしあっちから迫られれば絶対落ちる気はするけどね。
おっと、そんなことより王様と神官的な人の話も終わりそうかな?
「では彼女は聖女様ではないのだな?」
「はい、聖女様としての力はないらしいです。しかし強力なスキルを持っている場合もあると文献にはありましたのでよろしければ教会の方で・・・」
「それはなりません父上!」
「ん?どうしたエルヴィンよ」
いきなり王子様達の中で1番年下っぽい子が叫ぶ。
「聖女様からお聞きしてみればそこの女は聖女様を傷つけようとしているらしいのです!聖女様の側におけば何をするか分かりません」
は?セイジョサマヲキズツケヨウトシテイル?
そこの女子高生が聖女様でいいんだよね?初めて会ったし話したことすらないんですけど。
「わ、わたしここにくる前の世界で周りから虐められてて・・・その人は、あの、その」
目に涙を浮かべて声を詰まらせる彼女は確かに庇護欲をそそる。かわいらしい見た目に甘え上手な性格、王子の裾を指先で軽くつまんで体は王子の胸に寄り添う。
だがしかし、彼らの反対側にいる私に対してにやりとこちらを見る顔は優越感に浸った悪女のような雰囲気。状況把握からの私を追い出そうとする行動力、これはあれだ、あの子もこういう小説よく読んでるな。
となるとあの話し的に私を追い出して自分1人がちやほやされるパターンにしようとしてる感じね。
「聖女様、どうか泣かないで下さい。聞きましたか父上!聖女様を傷つける女なんて今すぐに追い出すべきです!」
「いやしかしだな、そこな女性は召喚に巻き込まれたというではないか・・・すればこちらの都合に巻き込んだともいえる」
「ですが!聖女様を傷つけるような女など・・・」
「あのー、また発言をお許しいただけますか?」
全員の目がこちらを向き誰も声を出さないので続きを話し始める。
「出て行け、というのは分かりました、私も状況的にここにいるのが難しそうというのは察していましたので。
ですが、王様がおっしゃって下さったように私も巻き込まれた、という点を理解していただきたく思います。
できればこの世界で平民?として生きていくことをお許しいただけないでしょうか?」
そう言えば全員が目を丸くして驚いた表情を浮かべる。
「いやしかし・・・こちらの都合で巻き込んでしまったようですし、教会で保護させていただければと思うのですが」
「いえ、保護などといった責任をとる、とは考えていただかなくてかまいません。
私はこの世界に来る前にすでに成人しておりますのでいくばくか援助をしていただければ自分でなんとかします」
「成人しているのか!?まだ十やそこいらのお嬢さんかと・・・」
宰相?さんが初めて驚いた表情をした。年上の眼鏡をかけたクールそうなイケメンのちょっと抜けた表情ってキュンとするよね。
「若いという言葉は嬉しいものではありますが、私は29にございます。あちらでは20で成人となるのでもうすぐおばさんと呼ばれる歳になりますね。
そしてそちらにいる聖女様?ですか、彼女は16~18でしょう。ですので正直いって関わりがありません。傷つける、というお話も私には身に覚えがないとしか・・・」
「そ、そうなのか」
王様は納得したようで困った顔で女子高生に目をむける。
「た、たしかにゆりあのこと虐めてたのは違う人でした。
ゆりあ、いきなりこんな知らないとこにいたからびっくりしてて・・・エルヴィンが優しくしてくれてたから、おばさんが虐めてきた訳じゃないって言えなくて」
分が悪いと感じたのか綺麗な手のひら返し、しかしおばさんって本当にいうかこの状況で?涙を流してうつむいた彼女をエルヴィン王子は抱きしめる。
「そうだったんだ。聖女様・・・ゆりあは悪くないよ、急にこの世界に呼ばれたんだからびっくりするよね」
「エルヴィン・・・」
「ゆりあ・・・」
名前を呼び合って見つめ合う、謝りすらしない失礼な2人は無視する。
「では、誤解も解けた様なので本題に入らさせていただきます。
私は聖女召喚に巻き込まれただけの一般人、それで間違いないですね?」
「一般人・・・、いや聖女様と共に現れる方は強力な・・・」
「強力なスキル?とやらは私にはないです。
この世界のことも何も知らないですし、元の世界の知識でお役にたてるほどの専門的な知識もございません。
ですので私はすぐにでもここを出て行きましょう、その方が皆さんにもよろしいかと」
「わしらが?」
「はい。皆さんにとって聖女召喚は普通のことなのかもしれませんが、私達の世界ではこのような状況のことを誘拐、と言います。」
「ゆ、ゆうかいじゃと!?違うわしらは・・・」
「理由があった、のだと思います。しかし私からすればいきなり知らない世界に連れてこられ、ここで住めば良いと言われましても・・・
正直、不信感しかございません」
きっぱりと自分の気持ちを言い放つ。
不敬かもしれないが、この王様はさっきからの言動を聞いていると比較的人情的な気がする。だからたたみかける。
王様は誘拐・・・とちっちゃく呟いている、顔は青く動揺しているみたい。
宰相さんや騎士団長さんは険しい顔をしているからそっちは見ない。
「ですが、王様が私に寄り添おうとしてくださっているのを感じました、ありがとうございます」
またまた深く頭を下げて顔をあげたら少し微笑む。人と人が仲良くなるには笑顔は必要だよね。王様はちょっとほっとした様子だ。
「ですので、失礼なことは承知の上でいくばくかの援助と共に私を平民としてここから追い出してもらえればなと思っている所存です。
いかかでしょうか?」
「しかしだな・・・」
王様は悩んでいるようだ。他の人は何も言わない、後一押しかな・・・
「では・・・」
「ゆりあは!ゆりあは出ていきたいって本人がいうならその方がいいと思うの、ね?エルヴィン」
「ん?そ、そうだね。ゆりあがそういうならその方が良いと僕も思う。父上そうしましょう!そこの女が自分で出ていくと言っているのですし」
女子高生と年下王子の賛同する意見に王様が何を思ったのかは知らないがついに折れた。
「分かった、そなたの望む通りにしよう。宰相よ平民として過ごすのに問題ないように手配してくれ」
「・・・かしこまりました」
宰相は何か言いたそうではあったが動いてくれるようだ。これでなんとかなるかな・・・
そしてその後は
宰相さんからお金をもらってこの世界の一般常識をかいつまんで教えてもらい、王様からは非公式ではあるがきちんと謝罪をしてもらった。
聖女召喚はこの国では何度か行われており、呼びよせた以上は最高のもてなしを、必ず幸せにしなければならないとされているそうだ。
そんな中聖女であるあの子が追い出すことを望んでいた為、下手な問題が起きる前に私の案を受け入れたらしい。
やっぱりこの王様はまぁ信頼できるかな。私に対しての態度はくそだったとはいえ同郷の子がひどい目に合うのは目覚めが悪いしいいんだけど…
その女子高生は私がいよいよお城から出るっていう日も勝ち誇ったような顔でこっちを見てきた。貴方の逆ハーレムを邪魔するつもりはないっての。
・・・はぁ。まぁここでお世話になっている間に聞いた話だと聖女としての働きに意欲的で王子様達全員と等しく仲良くして私以外には友好的らしい。
自分の立場を脅かすかもしれないと私にだけ攻撃的らしいので、私が出ていけばあの子も聖女としてうまくこの世界に馴染むだろう。
愛の女神アフロディーテ様からはあの子の恋愛事情を盗み見しては楽しんでいるみたいだし。
そして私は城をでた。もちろん、近くの村まで騎士さんに護衛してもらってね。
こうして、いきなり聖女召喚に巻き込まれた私はさっさと自分の運命を自分の意思で平民ルートに確定した。まぁ、実際にはスキルを使って神様に相談もしたけどね?
その後の私?
私は平凡な人生を送ったよ。本当に異世界召喚されたやつの人生か?って小説で読んだら思うくらいに。たまに神様達に多数決をとって意見交換する以外は本当に普通。
お城を出たら村で宿屋のご夫婦の元で働きはじめて、働きながら村の人と交流を深めていって・・・。
ちょっとこの世界にも慣れてきたかな?って頃、村のすぐ近くにあるダンジョン攻略を目的にきていた冒険者達とも仲良くなって、その中の1人と恋をした。
魔法をメインに使って戦う彼は真っ黒なローブと長い前髪で顔から全身を隠してる。ただ私がいる宿屋では比較的軽装になることが多いからそのカッコよさが見えてしまう。
そしてこれがまぁいい男なのよ。何に惹かれたのは知らないけど私を好きになってくれたみたいで・・・無口で全然喋らないんだけど、毎回私にだけお土産を持ってきてくれたり、何に対しても必ずお礼を言ってくれる。
人としても男としても好きかなって思ってたらいつの間にかそういう関係になってたの。まぁ私も30歳超えたからね?一緒にお酒飲んだりしたらそういう展開もあってしょうがないよね?
とまぁ始まりがきちんとした告白からの~って流れじゃないことに多少なりとも不安はあって、そんな時に他の冒険者の女の子からいろいろ言われたわけよ。
やれ、ただのおばさんより自分の方が若くて可愛いだの。ソロなのに冒険者ランクが高い彼には自分のような一緒に戦える方がいいだの。それに私が知らない彼のことをさんざん聞かされた。
こっちの世界にきて初めて好きになった人だったから私もかなり精神的に不安定になってて・・・そんな時に宿の彼の部屋からその子が出てきたの。
その時の誇らしげな顔はあの時の聖女と呼ばれた女子高生と重なって見えて・・・あぁやっぱり私は選ばれないのか、と絶望して彼に別れを告げる手紙を残して休暇をもらった。
そんな時たまたま、ダンジョンに演習として来ていた騎士団長さんに再会した。当時の話から今にいたるまでの話をしていたらかなり盛り上がった。
さすが騎士団長というべきか、私を追放・・・というかお城から出すことにかなり反対していたそう。そしてずっと心配していたと。
弱っている時にかなりグッとくる言葉だよね。
ほだされかけてたうえに困っていたらいつでも自分のところにくるといい、一生面倒見てやる。と、告白かって思うことを言われて別れたその日の夜、悩みすぎてスキルを使った。
そしたら神様達、特にアフロディーテ様から猛プッシュされた。
多数決にそった方が今まで上手くいっていたからその手をつかもうと騎士団長に会いに行こうとした次の日、彼が急に私の前に現れた。
「なんでここに・・・」
行先は誰にも言ってないし彼はあの冒険者の子と・・・って思ってたら彼が跪いて言ったの。
「お、おれは君が好きだ。言葉にするのは苦手だしこれからも多分ちゃんと言わなくて君を不安にさせることも多いと思う。
だけど君を、この世界で・・・いや、全世界のどこの誰よりも君を愛してる。
君の平凡でいいから幸せに暮らしたいという願い、おれが叶えたい。おれに一緒に叶えてさせてくれ。
君の全てが愛おしいんだ。
おれの帰りを喜んで見せてくれる笑顔も、一生懸命働いて動き回るところも
たまに何にもない空間を見てしかめっつらをするところも
周りの人間に優しくて、でも自分に少し厳しいところも、身分が上の者にも発言できる強いところも、おれにだけ見せてくれる弱さも全部。
あんな手紙で終わらせられる訳ないだろ?他の女なんかいるわけない!おれが好きなのは愛しているのは君だけだ。君がおれの全てなんだ。
君がいないならこんな世界いらない。ここに生きてる意味もないんだ。
だから、どうか・・・・・・・・・おれと結婚してくれ」
ふふ、熱烈なプロポーズでしょ?
冒険者の女の子のことは誤解というか、彼女が彼に惚れて勝手にしていたことだったみたい。彼としっかりと話し合いをしたら簡単に片付いた問題だったわ。
そんなこんなで彼のプロポーズを受けてこの世界で家族ができたの。
その後も色々あったけれど・・・そのたびに喧嘩して仲直りして、幸せに暮らしたわ。
息子が産まれ、娘も2人産まれ、子供達の成長を見守って・・・
孫までたくさんできたわ。
幸せだった。
私は私の人生に悔いなし、と自信を持って言える。
ねぇ神様達?私の人生、面白かったですか?
私はベッドの上、しわくちゃになった自分と違い、出会った当時と変わらず若く見える夫に手を握られながら最後のスキルを使った。
スキル「多数決」
A.良い人生だった
B.つまんない人生だった
C.その他
・・・・・・・・・多数決の結果「A」が選択されました!
皆さんAを選んでくださったのですね。今までありがとうございました。
悩むことも、もちろん辛いこともあったけど、思い残すことはなにも・・・
そうして私の、巻き込まれ召喚されたけど、普通を選んだ人生は幕を終えた。
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「C」を選択した神の中から創造神の回答を表示します。
「こんな執着心の強い腹黒男につかまってしまうとはのぉ。災難というべきかなんというか。
お主の魂に惹かれたからといって、わざわざ聖女召喚の魔術に干渉してまでこの世界まで連れてくるし、ちゃっかり自分も魔術神としての身分を捨てて、いきなり人間の魔術師としてこの国に降りる。
さらには精神干渉魔法まで使って王宮から追い出されるように仕向けて・・・本来ならあの場で騎士団長との縁ができていたんじゃがなぁ・・・
アフロディーテも「わたくしの予定とちがーう!!」と怒っておったぞ。まぁ捨てられそうになった時、最初は爆笑しておったがやつの必死な言葉を聞いて「愛の女神としては、あの言葉は認めてやらざるをえないわ・・・!」とも言っておったが。
なぜこうも魔術神となる者はすぐに神の資格をおりてしまうのか・・・?やはり人間の魂からの昇格は問題なのかの?
アフロディーテも今は人間の恋を見て満足しておるがいつか自分も恋したいと言い出しかねないな。こればかりは創造神といえども予想できんわ。
まぁ、お主達の人生、とても楽しませてもらった。
今もお主の傍で泣きながら「来世もお前の傍にいるのは俺だ、他の男なんて選ばさせないからな」と言ってる怖いやつじゃが、またよろしく頼むよ」です。
お読みいただきありがとうございました!
短編にまとめているので書ききれていない点があるかもしれませんが、考えた設定部分はかけたのではないかなと思います。