巻き込まれ召喚、貴方は何を選択する?
巻き込まれ召喚は沢山の設定がありますよね!こんなのも面白そうというのを書いてみました!
スキル「多数決」
神様達だったらこの状況どうしますか?
A.動揺した様子で取り乱す
B.落ち着いた様子で問いかける
・・・・・・・・・多数決の結果「B」が選択されました!
Bよねやっぱり。
私の見た目的に取り乱したりすると相手の不興をかいかねないもの。
「申し訳ありませんが質問をしてもよろしいでしょうか?」
私の発言を聞いてやっと周囲の人間の視線が私に向いた。
見た目でいうと王様、王子様(複数)、宰相、騎士団長、神官、魔術師的な人?
そして王子様に手を取られて頬を染めていたけど私の声でじゃまされて不快そうな顔を隠しもしない女子高生。
その中で1番偉いであろう王様が声をかけてくる。
「おぉ、すまない。・・・してそなたは一体なぜそこに?」
こっちが聞きたいくらいなんだけど・・・
そんな答えしたらよくあるパターンの追放かな。
「私もなぜここにいるのか、ここがどこなのか、この状況が何なのか分かりません。
ですので、よろしければ皆さんにお話を伺えたらと思いお声をかけさせていただきました。
不敬であれば申し訳ありません」
深く頭を下げゆっくりと頭を上げてから王様に視線を合わせる。
「ふむ、そうか。伝承によれば召喚した聖女様は状況を理解していると聞いていたのだが・・・」
「陛下、発言をしてもよろしいでしょうか?」
神官的な人が王様に声をかける。
「うむ、なんじゃ?」
「恐らくそこの女性は聖女様の召喚に巻き込まれてしまったのではないでしょうか?過去の文献でも1度だけですがお2人で召喚された事例がありました」
聖女召喚・・・ね、やっぱりこれ最近流行の異世界転生だよねぇ。
本当に自分の身に起こるとは。こういう場合どうするのがいいんだっけ?
なんとなく状況を察した私は心の中で考えを巡らせる。さっきまでのは夢だと思ってたけど現実だったのかな。神様から説明されたスキルがどうのこうのって話とか、
神様達が暇つぶしに私の人生を見ていてスキルを使ったらアドバイスをしてくれるって話とか。
「過去にもあったとは本当か?聖女様が2人など・・・儂は聞いたことないがの」
「いえ、聖女様がお2人ではなく、あくまでももう1人は巻き込まれたという・・・」
王様と神官的な人が話し、宰相や騎士団長が聞いている間、王子様達と女子高生は楽しそうに会話している。
私のことはまた完全に放置。
目が覚めた時も女子高生にむかって聖女様が召喚に答えて下さった!とかで盛り上がってて私のことは視界にすら入ってなさそうだった。
それで暇だったから夢の中で神様からきいたスキルとやらを使ってみたりしてたけど・・・
これはもう悪者にされるパターン的なやつかなぁ?神様達どう思います?
スキル「多数決」
A.少しのお金をもらって城からでていく
B.一般常識を学ぶ為に城に置いてくれとお願いする
C.その他
・・・・・・・・・多数決の結果「A」が選択されました!
「C」を選択した神の中から愛の女神アフロディーテの回答を表示します。
「騎士団長と恋に落ちる希望!」です。
希望!ってなによ。そりゃ小説とかならそういうパターンもあるし、そういう恋愛は見ていて最高よね分かる。
まぁ実際に体験してみるとあれって無理だなとか思う。だって騎士団長さんなんて私の方見てすらいない気がするもの。あきらかに仕事してますって感じ。
まぁどう見てもイケメンだしあっちから迫られれば絶対落ちるけどね!
おっと、そんなことより王様と神官的な人の話も終わりそうかな?
「では彼女は聖女様ではないのだな?」
「はい、聖女様としての力はないらしいです。しかし強力なスキルを持っている場合もあると文献にはありましたのでよろしければ教会の方で・・・」
「それはなりません父上!」
「ん?どうしたエルヴィンよ」
いきなり王子様達の内1番下っぽい子が叫ぶ。
「聖女様からお聞きしてみればそこの女は聖女様を傷つけようとしているらしいのです!聖女様の側におけば何をするか分かりません。」
は?セイジョサマヲキズツケヨウトシテイル?
そこの女子高生が聖女様だよね?初めて会ったし話したことすらないんですけど。
「わ、わたしここにくる前の世界で周りから虐められてて・・・その人は、あの、その」
目に涙を浮かべて声を詰まらせる彼女は確かに庇護欲そそる。かわいらしい見た目に甘え上手な性格、王子の裾を指先で軽くつまんで体は王子の胸に寄り添う。
だがしかし、彼らの反対側にいる私に対してにやりとこちらを見る顔は優越感に浸った悪女のような雰囲気。状況把握からの私を追い出そうとする行動力、これはあれだ、あの子もこういう小説よく読んでるな。
となるとあの話し方的に私を追い出して自分1人がちやほやされるパターンにしようとしてる感じね。
「聖女様、どうか泣かないで下さい。聞きましたか父上!聖女様を傷つける女なんて今すぐに追い出すべきです!」
「いやしかしだな、そこな女性は召喚に巻き込まれたというではないか・・・すればこちらの都合に巻き込んだともいえる」
「ですが!聖女様を傷つけるような女など・・・」
「あのー、また発言をお許しいただけますか?」
全員の目がこちらを向き誰も声を出さないので続きを話し始める。
「出て行け、というのは分かりました、私も状況的にここにいるのが難しそうというのは察していましたので。
ですが、王様がおっしゃって下さったように私も巻き込まれた、という点を理解していただきたく思います。
できればこの世界で平民?として生きていくことをお許しいただけないでしょうか?」
そう言えば全員が目を丸くして驚いた表情を浮かべる。
「いやしかし・・・こちらの都合で巻き込んでしまったようですし、教会で保護させていただければと思うのですが」
「いえ、保護などといった責任をとる、とは考えていただかなくてかまいません。
私はこの世界に来る前にすでに成人しておりますのでいくばくか援助をしていただければなんとかします」
「成人しているのか!?まだ十やそこいらのお嬢さんかと・・・」
宰相?さんが初めて驚いた表情をした。年上の眼鏡をかけたクールそうなイケメンのちょっと抜けた表情ってキュンとするよね。
「若いという言葉は嬉しいものではありますが、私は29にございます。あちらでは20で成人となるのでもうすぐおばさんと呼ばれる歳になりますね。
そしてそちらにいる聖女様?ですか、彼女は16~18でしょう。ですので正直いって関わりがありません。傷つける、というお話も私には身に覚えがないとしか・・・」
「そ、そうなのか」
王様は納得したようで困った顔で女子高生に目をむける。
「た、たしかにゆりあのこと虐めてたのは違う人でした。
ゆりあ、いきなりこんな知らないとこにいたからびっくりしてて・・・エルヴィンが優しくしてくれてたから、おばさんが虐めてきた訳じゃないって言えなくて」
分が悪いと感じたのか綺麗な手のひら返し、しかしおばさんって本当にいうかこの状況で?涙を流してうつむいた彼女をエルヴィン王子は抱きしめる。
「そうだったんだ。聖女様・・・ゆりあは悪くないよ、急にこの世界に呼ばれたんだからびっくりするよね」
「エルヴィン・・・」
「ゆりあ・・」
名前を呼び合って見つめ合う謝りすらしない失礼な2人は無視する。
「では、誤解も解けた様なので本題に入らさせていただきます。
私は聖女召喚に巻き込まれただけの一般人、それで間違いないですね?」
「一般人・・・、いや聖女様と共に現れる方は強力な・・・」
「強力なスキル?とやらは私にはないです。
この世界のことも何も知らないですし、元の世界の知識でお役にたてるほどの専門的な知識もございません。
ですので私はすぐにでもここを出て行きましょう、その方が皆さんにもよろしいかと」
「わしらが?」
「はい。皆さんにとって聖女召喚は普通のことなのかもしれませんが、私達の世界ではこのような状況のことを誘拐、と言います。」
「ゆ、ゆうかいじゃと!?違うわしらは・・・」
「理由があった、のだと思います。しかし私からすればいきなり知らない世界に連れてこられ、ここで住めば良いと言われましても・・・
正直、不信感しかございません」
きっぱりと自分の気持ちを言い放つ。
不敬かもしれないがこの王様は比較的人情的な気がする。だからたたみかける。
王様は誘拐・・・とちっちゃく呟いている、顔は青く動揺しているみたい。
宰相さんや騎士団長さんは険しい顔をしているからそっちは見ない。
「ですが、王様が私に寄り添おうとしてくださっているの感じました、ありがとうございます」
またまた深く頭を下げて顔をあげたら少し微笑む。
人と人が仲良くなるには笑顔は必要だよね。
王様はちょっとほっとした様子だ。
「ですので、失礼なことは承知の上でいくばくかの援助と共に私を平民としてここから追い出してもらえればなと思っている所存です。
いかかでしょうか?」
「しかしだな・・・」
王様は悩んでいるようだ。他の人は何も言わない、後一押しかな・・・
「では・・・」
「ゆりあは!ゆりあは出ていきたいって本人がいうならその方がいいと思うの、ね?エルヴィン」
「ん?そ、そうだね。ゆりあがそういうならその方が良いと僕も思う。父上そうしましょう!そこの女が自分で出ていくと言っているのですし」
女子高生と年下王子の賛同する意見に王様もついに折れた。
「分かった、そなたの望む通りにしよう。宰相よ平民として過ごすのに問題ないように手配してくれ」
「・・・かしこまりました」
宰相は何か言いたそうではあったが動いてくれるようだ。これでなんとかなるかな・・・
そしてその後は
宰相さんからお金をもらってこの世界の一般常識をかいつまんで教えてもらったり、
王様からは非公式ではあるが、きちんと謝罪をしてもらって
女子高生からは勝ち誇ったような顔で見られて
私はお城を出た。
もちろん、近くの村まで騎士さんに護衛してもらってね。
こうして、いきなり聖女召喚に巻き込まれた私は
さっさとその運命を自分の意思で平民ルートに確定した。
その後の私?
私は平凡な人生を送ったよ
たまに神様達に多数決をとって意見交換する以外は。
村で生活を始めて、宿屋のご夫婦のもとで働きはじめ
働きながら村の人と交流を深めて
私がこの世界に慣れてきた頃、
村の近くのダンジョン目的にきた冒険者と仲良くなり
その中の1人と恋をした
恋人になったはいいけど、彼と同じパーティの女の子に邪魔されたり
彼自身が無口すぎて不安にかられて別れを告げて
そんな時に支えてくれた他の男にほだされて告白されたりして
神様達、特にアフロディーテ様からその男を猛プッシュされて
多数決にそった方が今まで上手くいっていたから
その男との関係を進めようとした
そしたら彼が急に私の前で跪いて言ったの
「お、おれは君が好きだ。言葉にするのは苦手だしこれからも多分ちゃんと言わなくて君を不安にさせることも多いと思う。
だけど君をこの世界で、いや全世界のどこの誰よりも君を愛してる。
君の平凡でいいから幸せに暮らしたいという願い、おれが叶えたい。
おれと一緒に叶えてくれ。
君の全てが愛おしい。
おれの帰りを喜び見せてくれる笑顔も、一生懸命働いて動き回るところも
たまに何にもない空間を見てしかめっつらをするところも
周りに優しく自分に少し厳しいところも、身分が上の者にも発言できる強いところも
おれにだけ見せてくれる弱さも。
だから、どうかおれと結婚してくれ」
ふふ、熱烈なプロポーズでしょ?
これを受けてこの世界で家族ができたの
その後も色々あったけど幸せに暮らしたわ
息子が産まれ、娘も2人産まれ
子供達の成長を見守って
孫もたくさんできた
幸せだった
私は私の人生に悔いなしと自信を持って言えるわ。
ねぇ神様達?私の人生、面白かったですか?
私はベッドの上、しわくちゃになった自分と違い
まだ若く見える夫に手を握られながら最後のスキルを使った
スキル「多数決」
A.良い人生だった
B.つまんない人生だった
C.その他
・・・・・・・・・多数決の結果「A」が選択されました!
皆さんAを選んでくださったのですね。
今までありがとうございました。私も思い残すことは・・・
そうして私の人生は幕を終えた。
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「C」を選択した神の中から創造神の回答を表示します。
「こんな執着心の強い腹黒男につかまってしまうとはのぉ。
お主の魂に惹かれてわざわざ儂の世界に召喚するとは・・・
魔術神としての身分を捨て、いきなり人間の魔術師としてこの国に降りたかと思えば
ちゃっかりとお主の夫になってなぁ。
まぁお主達の人生、とても楽しませてもらった。
今もお主の傍で泣きながら来世もお主の隣にいると言っているでなぁ
またよろしく頼むよ」です。
お読みいただきありがとうございました!短編にしているので詳細省いていますが描きたかった設定部分はかけたのではないかなと思います!