本当のアイドルとは
俺が地元出身の人気女優にデレデレになる姿は想像できる。実際、彼女がヒロインをやったドラマは全部見たし、魅力的に映った。それは認める。でも、真理には天地がひっくり返っても勝てない。
真理とお喋りしながら、七夕を楽しんでいると同級生たちのグループに出くわした。
向こうからこっちに歩いてくる。
俺は、あいつらに自慢したくなった。
俺は真理の手を繋いだ。
「え…?」
「繋いでもいい?」
「う…うん。いいよ。」
俺が手を握ると恥ずかしそうに俯いた。
…もしかして、ワンちゃんあるのだろうか?
俺は男子グループに向けて歩き出した。
奴等の中の一人が俺に気づいた。そして、そいつの目が真理に向けられた時、そいつは固まった。
その姿を見たほかの連中も、同じように固まった。
俺はニタニタと笑いながら近づいた。
「どしたの?お前ら…固まっちゃって。」
「お前…俺達のアイドルとで…デートだと?それも手も握りやがって。」
「ふざけんなよ…」
「真理ちゃん!どうしてこんなヤツ!大してカッコよくもないだろ!?」
イケメンではないことは認めるけど、お前に言われる筋合いないわ。お前もブサ男だろうが。
「う〜ん。みんなは友達だけど、大貴くんはお母さんを助けてくれた人だし。友達以上な人だから…悪く言わないで。」
真理からのまさかの言葉に泣き崩れる情けない男子グループ。…キモォ
「どうされたんですかぁ…?」
その声に俺はとっさに振り向きそうになったが、理性が必死に押し留めた。この声は間違いない。西野涼花さんだ。
「え…えぇぇぇ!!!本物の涼花さんだ!!」
「おい…マジかよ!」
「俺…大ファンなんだよ。」
おいおい、お前らは真理をアイドルって言ってたんじゃないのかよ?
真理は不思議そうにしてる。そういえば、真理はテレビたんまり見ないって言ってたっけ。俺はそっと耳打ちした
「最近、ドラマに引っ張りだこになってるここらへん出身の女優さんだ。俺達とは年齢でいうなら同級生だよ。天才中学生って呼ばれてる。」
「へぇ…。可愛い人だね!」
「真理のほうが可愛いけどな。」
「そう?大貴だけだよ、そういうこと言うのはさ。」
「俺だけがわかってればいいだろ?」
「そちらの可愛い子は芸能事務所とか入ってるの?」
「えっ…私ですか?」
「そう。」
「入ってないですけど、特にテレビとか興味ないので。」
「え〜勿体ないよ。」
そう言って、近寄ってきた彼女と真理の間に立ち塞がった。この人、人気女優だけど、共演NG出されてる人が多い事でも有名なんだ。少し調子に乗りすぎてる節があるんだよね
「な…なに?」
「袂に何を入れるかはその人の自由だけどさ。清純系で売ってるのに、タバコを箱で入れるのはどうなの?」
「え…」
「何なら、箱の銘柄でもここで言ってあげようか?」
「な…何?嫌がらせ?キモォ…」
「キモいか…さっきみたいに声をかけて、事務所に誘ってあげるフリして、地元の先輩にそんな子渡して、小遣い稼ぎしてるくせに…君に言われる筋合いないなぁ。トラブルが起きたらお金で解決?タバコ吸って、女性の強制斡旋、そのうえトラブルを金で解決するって…清純とはほど遠いなぁ…」
「警察呼ぶわよ…」
「呼べよ。」
「え…?」
「呼ばないのか?なら、俺が呼んでやるよ。」
俺は村上さんから預かっていた携帯で電話をかけた。
「あ…村上さんですか。未成年でたばこ所持及び、未成年の斡旋業務をしている方を見つけました。」
『近くにいる私服警官を向かわせる。すぐ着くから…』
「わかりました。はい…失礼します。すぐ警官の方がいらっしゃいますよ。」
「は?そんなわけ…」
「大貴様…お待たせしました。」
確かにすぐに私服だけど明らかに警戒心バチバチな方々がいらっしゃった。
「西野涼花さん。俺、あなたとテレビで共演してるんですよ。貴方は気づいていないと思いますけど…」
「もしかして…未来予知の。」
「そうです。私の予知については、西野さんもご存じですよね?私と別れてからあなたがその袂に入れてるタバコを吸ってるのが見えました。そしてその先輩に電話してるところも…それと、関係を持ってる男性と密会してるところもね。」
「え…」
「まぁ、とりあえず任意同行してもらいましょうか?従ったほうがいいっすよ。疑われることがないなら…大丈夫ですよね?」
彼らが近づこうとしたら、案の定逃げた。はい…アウト!逃げ切れるわけもなく、捕まえられた上、暴れたから公務執行妨害で連れて行かれた。
あ〜あ…天狗になるから。
「お前らも、推し相手はしっかり選べよな。」
俺は真理の両肩に手を置いて、アホどもの前に少し押し出した。
「真理みたいな娘を本当のアイドルって呼ぶんだろうが。」




