この小説は売れますよ
俺は、玄光社との打ち合わせをせっかくなので探偵事務所で行うことにした。
家のテナントには冴島私立探偵事務所と銘打ってある。
その週の週末、10:00にアポイントを取っておいた俺は、事務所の会議室で待機していた。
能力のことは言わずに、部活の体験を活用して小説を書いてみたら、出版社に気に入られたので、今度打ち合わせをやると、村上警視監に報告した所、同席したいというので、能力のことは触れないことを条件に同席を認めた。
俺は別に正装なんてせずに、黒のパーカーに黒のスウェット、さらに黒のマスクを被る。傍からみたら不審者に見えるが、一応ここは俺の事務所なので勝手だろう。
予定時刻の5分前になると、事務員の一人が相手方が到着したことを知らせに来た。
「中にお通ししてくれ。」
「かしこまりました。」
長々とした打ち合わせの結果としては、
玄光社としてこの小説を大々的に売り出したいとのことだった。
俺としては特に問題ないし、村上さんも小説につきっきりにならなければ特に問題ないとのことだったので、お願いすることにした。
著作名を聞かれ、黒龍とした。理由は特にない。
なんか…かっこいいでしょ?
いつの間にか、担当者が公募に出していたらしく、
顔出しNGの現役中学生の新人小説家が出版した小説が日経小説大賞に受賞というニュースが舞い込んできた。
俺は顔出しNG、取材もNGにしていたので特に俺自身が注目を集めることもなく、この話題はそこまで引っ張ることもなく沈静化していった。
ただ、この能力によって、探偵に加えて小説家という肩書も手に入れたのだった。