君のお母さんはきみが守るんだよ?
「宮崎先生!屋上の鍵貸してください。」
「何だ?大貴。もしかして?」
「そのもしかしてです。」
「いいぞ。ただ早くしろよ。」
「ありがとうございます。」
宮崎先生は、学年主任のめちゃくちゃ厳しい先生だが、学力が優秀な生徒にはとんでもなく優しい、俺は親の教育方針で学年1位を取り続けないとゲームや漫画が取り上げられてしまうので、入学からテストで首位を逃したことがない。加えて、宮崎先生からの頼みで 学級委員と学年を取りまとめる学年委員を兼任したことで教師陣の評価は絶大なもので多少のわがままや高速破りは許可してくれている。
そして俺は、彼女を連れて屋上へと来た。
「はぁ…はぁ…はぁ…。突然走り出すんだもんびっくりしたよ。」
「静かに話せる場所ってここぐらいだからさ。」
俺はグラウンドを眺めながら彼女に言った。
「最近、元気ないじゃん。」
「そう…かな。」
「一緒に委員会活動してんだからさ。流石に気づくわ」
「他の男子も七海も椿だって気づかなかったのに。」
七海と椿っていうのは彼女の保育園からの幼馴染だ。
「先に言っとくわ…。済まなかった。」
「ん?何が?」
「悪いとは思ったけど、真理ちゃんの未来予知させてもらったよ。」
「えっ…」
「でも、見てよかったよ。真理ちゃん悪いことは言わない。今すぐお母さんを病院に連れて行くべきだ。手遅れになる前に。」
「どういうこと?」
「気持ちを強く持ってね…。君のお母さんは癌だ。」
「癌…。」
「それも、未来では手遅れだった。」
「そんな…」
「でも、今ならまだ間に合うはずだ。今日中にお母さんを説得するんだ。」
「で…でも、お母さん明日仕事だし。」
俺は彼女の両肩を掴んで彼女の目を見て、伝えた。
彼女が決心しないと未来まで見た意味がない。
「お母さんを失うかもしれないんだよ?救えるのは真理ちゃんだけで、今日動かないとどんどん悪化するんだ。俺は、ツテを使って癌治療の腕の良い医者探しとくからちゃんと説得するんだよ?」
「う…うん。わかった!」
そうして俺は、鍵を返しに行った。
宮崎先生はとてもニヤニヤしていたが気にしない。
そして放課後…
俺は下校中に村上さんに連絡した。
「村上さん。今いいですか?」
「いいよ。どうしたんだい?」
「ちょっとお願いしたいことがあって。」
「なんでも言ってご覧。」
「友達の女の子の母親が癌なんです。おそらく手術すれば切除可能だと思うんですが、名医に心当たりはありませんか?」
「私の友人が丁度、静岡県立静岡がんセンターで医局長をしているよ。彼が君のことを紹介してほしいと言っていてね。彼の頼みを聞いてあげれば、お友達のお母さんも快く受け入れてくれるはずだ。」
「…わかりました。いつですか?」
「明日、そのお母さんを連れて行くときに話してくれ。」
「ありがとうございます。」
「これくらいなんでもないよ。」