俺は特別
「私達は、この男を探してる。名前は…」
「デイビッド…デイビッド•ストラトス。だろ?」
「どうして知っているの?機密情報よ?」
「おいおい、俺を誰だと思ってんだ?世界最高の情報屋だぜ。だからこそ、あんたらCIAも俺に会いに来たんだろ?」
「私達の素性までお見通しってわけ?」
「ドアの外にいるのは、ケビン・コーマン。昨年まで米国の第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊に所属。いくつもの勲章を授与されており、30歳の若さで少佐に。ただ、昨年の冬、任務中の怪我で除隊を決意。その際にCIAにスカウトされ、現在に至る。」
「私達の情報と一緒ね。」
「君は、ミア・ガルシア。現在、25歳。僕の7つ上だね。3年前に政府高官である御父上のコネクシャンにより入隊。学生時代に格闘技を続けてきた経験から、すぐに現場任務を任されるようになる。ただ、情報面での失敗が目立ち、窮地に陥っている。そこで、情報屋で知られる俺に会いに来た。だろ?」
「そのとおりよ。それで?今回の任務も知ってるの?」
「男探してんだろ?機密情報にアクセスして、新しいネットワークシステムのアクセスコードを盗んだやつ。そいつは現在、このロサンゼルスにいる。」
「正確な場所もわかるの?」
「そりゃわかるさ。じゃなきゃ、こんなに正確に説明できないだろ?」
「わかったわ。いくら欲しいの?彼に用意させるわ。」
「金はいらねぇよ。俺がこれまでにどれだけ稼いできたと思ってる?2000万ドルの別荘をこのアメリカに待って、国内では傭兵会社から専属のボディーガードが中隊規模でつく。車も国内各地にあるし、ホテルだってオーナーとしていくつも持ってる。もう、金はいらねぇよ。」
「なら、特別待遇でも欲しいの?」
「もう持ってるわ。君は知らないかもしれないけど、俺はアメリカにとって有益な情報もしくは、アメリカの危機の時には優先的に大統領にだって会えんだ。正直待遇だけなら、君以上なのは確実だね。」
「なら、何がほしいの?」
「外の相棒に一晩遊んでこいって伝えろ。金は俺が出してやるから。」
「何が言いたいの?」
「俺に一晩付き合えってことだ。」
「貴方と寝ろって言いたいの?」
「嫌ならいいぜ?」
「結構よ!」
彼女はプンプンと怒ったようにドアへと歩いていく。
体つき完璧なんだよな。流石に格闘技やってきただけあって引き締まってるし、それにガードが硬すぎてここまで彼氏ができたこともない。
その最初を手に入れられるってんなら、あの犯罪者の情報ぐらい安いもんだ。
彼女がドアに手をかける瞬間…
「ああ…そうだ。忘れるところだったよ。因みに、俺はやつの電話番号を知っている。彼に伝えておくよ。君たちの情報をさ。ロサンゼルスは彼のホームだ。彼に連絡すれば、君達はすぐ確保されるだろね。そうすれば、俺はより多くの女性と楽しい夜を過ごせるってわけか。アッハッハ!」
「…脅してるわけ?いい度胸ね、あなたを拘束することだってできるのよ?」
「できるもんなら、やってみな?」
「覚悟しなさい!」
彼女がステップを踏んで俺に近づき、蹴りを放ったとき、俺は彼女の残った片足を払い、倒した後、両手を抑えて拘束した。
そして、イヤホンマイクの電源をつけ…
「お客様から暴行を受けた。既に拘束済み。ドアの外に居るお客様には事情を説明の上、ご退場させろ。それと部屋に来てこの女を拘束しろ。」
「至急参ります。」
こうすると、防弾チョッキを身にまとったボディーガードが飛んでくるってわけだ。
ご丁寧に相棒くんもノックアウトしている。
仕事が早いこった。
「それと、CIA長官に連絡を取れ。至急連絡をしたいと伝えろ。それと、彼をここに呼べ。」
それから、5分後…
俺の後ろには、護衛のボディーガードが4名。
俺の前には縄で椅子に完全に拘束した捜査官ミア。
彼女の相棒くんは、掃除屋に受け渡し済み。
そして彼女の前には、ネット通話で画面越しに映る
CIA長官。大統領は会議中で会えなかった。
「それで?どうなさるおつもりですか?この建物内はどこの国の情報機関も暴行行為及び殺傷行為は厳禁とご存知の筈ですよね?それに、私が女性に行為を対価として求める可能性もご存知の筈だ。そのうえで、この対応は残念でなりませんよ。この場で今後の方針を教えてください。それによっては、敵に情報を渡さなければなりません。」
「ま…待ってくれ。これはなにかの手違いだ。」
「まぁ、そんなところだろうと思ったよ。渡すどころかすでに呼んであるけどね。デイビッド。挨拶しろよ、CIA長官だぞ。」
「別に現役時代に嫌になるってほど見たけどな。…やぁ、長官。お久しぶりです。」
「デイビッド…貴様!」
「貴方がたCIAは、国際規約を破った。従って、彼に貴方がたの機密ファイルについての情報を公開します。また、ここにいる捜査官は、彼に引き渡しますので、あとの対応はご自分でお願いします。」
「ま…待って」
ガチャリ。
「容赦ねぇな。怖くねぇのか?」
「何が?」
「相手はCIAだぜ?」
「もし、強硬策に出るのなら、俺はアメリカの極秘情報をロシアに全て伝えて、保護してもらうさ。俺には、アメリカを想定敵国と考えている国のトップとの繫がりだってあるんだ。」
「そりゃスゲェや。まぁ、この女については任せとけ。俺の方で処理しとくわ。」
「頼むよ。恐らく、後1時間以内に奴等が部隊をここに派遣する。さっさとここを離れることだな。」
「俺も一旦離れるよ。またな。」