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エマの過去 4

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「そのあと、ぼんやりしていたら、叔父様……お父様の弟が来て、火事になったのはお前のせいだって言われたの。そして、ブラットフォード伯爵家から出て行けって。……だからわたしは、旅に出たの。ロイを探す旅に」


 ロイが今どこにいるのかはわからない。

 でも、探して、許してくれるかどうかはわからないけれど謝りたかった。

 大切な大切な友達だから。


 ――なんだか怖い顔をしてぶつぶつと独り言を言いながらどこかへ飛んでいったわ。


 ふと、ここに来る前に妖精に教えられたことを思い出して、エマはきゅっと唇をかむ。

 もしロイがボギーになっていたら。

 エマのせいで、ボギーになってしまっていたら。


(早く見つけて、元に戻してあげないと……)


 優しくて甘えん坊な、大好きなロイ。

 謝って、抱きしめて、たとえ許してくれなくてもエマはロイに会いたい。

 エマはゆっくりと空を見上げる。

 夜の空に、キラキラと星が瞬いていた。


「がんばったね」


 黙って話を聞いていたユーインが、ポツリと言う。

 エマは空を見上げてまま、小さく笑った。


「がんばってないわ。わたしは、許されないことをしたの。それなのにロイを探して謝って、そうすれば許してくれるんじゃないかって……心の底でそんな期待している、浅はかな人間よ。わたしはね、最低なの」


 ああ……星がかすむ。


 どうしてだろう、あんなに綺麗だった星が、今はぼやけて見えるのは。


 どんどんぼやけていく星を見上げ続けていると、ユーインが手を伸ばして頭を撫でてくれる。


 思えば、妖精が見えると言って、真面目に受け止めてくれたのは彼がはじめてだ。

 両親にも言ったことはあるが、ただの冗談だと面白がられた。

 真面目に、本気で聞いてくれたのは、この十六年間の人生の中で、ユーインだけ。


「そんなことはない。君はがんばった。ちゃんと前を向いて、謝ろうと決めてがんばっているんだ。俺はすごいと思うよ」


 ゆっくりとあやすように頭を撫でてくれるユーインの手が、心地いい。


「だから、泣いていいんだ」

「――っ」


 その言葉で、エマはようやく自分が泣いていたことに気がついた。

 あわてて涙を拭おうとしたエマの腕を、ユーインが優しくとらえる。

 そのまま、ふわりと抱きしめられた。


「泣きたいときは泣くべきだ。君は一人で……ああ、妖精がいるから一人ではないかもしれないけど、でも、頑張りすぎた。たまには誰かを頼って、泣いて、喚いて、心の奥にたまった重たいものを発散させてリセットしないと、いつか壊れてしまう。人間はね、そんなに強くできていないんだ」


 だから、つらいときには泣かないと――、ささやくユーインの声はどこまでも優しかったから、エマの目からどんどん涙が零れ落ちていく。


 おずおずとユーインの背中に腕を回して、エマは泣いた。

 声を上げて。


 泣きじゃくった。



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