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第9話コンバート

キャンプ12日目。


今日は戦術練習を中心に練習が進む。


フォーメーション練習の前に監督から話があった。


東京うちは去年J1から降格したが主力が多数移籍したチームだ。守備を固めるチームや逆に攻撃的に来るチームがあるだろう。だからお前らには状況に応じて様々なフォーメーションをやってもらう。本来の位置とは違うポジションになる奴もいるが開幕までには与えられたポジションをこなせるようになってもらう。いいな‥‥じゃあ言われたとおりのポジションについてもらう」


監督はそう言ってポジションと名前を呼んでいく。


「亀山! お前はフォワードだけだ」


俺のポジションの変更はなかった。


「紅白戦で試すからビブスを来て試合するぞ」




こっちは4−4−2のフォーメーションで、ゴールキーパーに山下さん、左サイドバックに昨年までセンターバックだった宮原さん、センターバックに角田さん、ピサロ、右サイドバックに新垣さん。


左サイドハーフに本来は守備的ミッドフィルダーの李さん、守備的ミッドフィルダーにセンターバックの植森と坪井さん(26歳で大学卒業後あまり試合に出てない控え選手、と植森が言っていた)。


右サイドハーフに本来は左サイドハーフの犬飼さん。


フォワードに俺と本職は攻撃的ミッドフィルダー)の田原さんが入る。


相手側は4−3−1−3のフォーメーションでゴールキーパーには松本さん、センターバックには木田きださん(2年前広島から加入した選手でまだ試合経験のない選手、と植森が言っていた)と本来は守備的ミッドフィルダーの鳳さん、右サイドバックには本職は右サイドハーフの杉本さん。


左サイドバックには練習生が入る。


左サイドハーフには野村芳樹のむらよしきさん(去年湘南から加入したミストラルユース出身の選手で、マークについた相手選手を観察し、一瞬の隙を突いて抜き去るドリブルが持ち味。ユース昇格後は出場機会を求め様々なチームに移籍していた、と天野さんが教えてくれた)。


守備的ミッドフィルダーにはブエゴ、右サイドハーフに本来はFWの天野さん、攻撃的ミッドフィルダーには清水さん。


左ウイングにはフラビオ、センターフォワードにはマイケル、右ライトウイングには戸瀬とせさん(大学卒業後いまだに試合に出てない控え選手、と植森が言っていた)。


試合が相手ボールから始まった。


守備的ミッドフィルダーのブエゴまでボールを下げる。


俺がプレスに行くと、すぐに左サイドバックの練習生にボールを出した。


練習生がドリブルでハーフウェイラインまで進むと清水さんにボールを出す。


清水さんはダイレクトでウイングのフラビオに出し、フラビオはヒールパスを野村さんに出す。


野村さんがクロスを上げ、マイケルとピサロが競り合う。


マイケルが競り勝ち、ゴールを狙ったが、山下さんがキャッチし、すぐにキックする。


そのキックを植森が中盤で受け取ると左サイドの李さんに渡す。


李さんがドリブルで持ち込み、天野さん、杉本さんを抜き低い弾道のセンタリング上げたが、普段上げ慣れていないからかクロスは的外れな方に行く。


急いでボールの着地点に行き、追い掛けて来た木田さんより早くボールをトラップする。


そのまま木田さんを抜いてシュートした。


松本さんに弾かれたが、こぼれたボールに突っ込む。


低空ダイビングヘッドで押し込んだ。


その時、鳳さんがクリアしようとした蹴りが頭に当たった。


「悪いっ! 大丈夫か!?」


「だ、大丈夫っス」


かなり痛かったけど‥‥




その後もこっちがカウンター中心に攻め、得点を奪う。


相手はフラビオ、マイケル、清水さんの三人が守備をしない為、攻撃では猛威を振るが、一度奪われるとカウンターの餌食になる。


はっきり言ってあまり機能していない。


こっちも攻撃的な選手が少ししかいないからカウンターでしか点が取れそうもない。


点は入ってないからリードをした時、試合をクローズする(リードをした際、守りきって試合を終わらせること。基本的にディフェンダーを入れて守りきる。)時には使えるかもしれない。


そんなことを考えながらプレーしていたら監督が笛を吹いた。


「次、フォーメーション変えるぞ」




今度はこっちはフォーメーションは4−4−2でゴールキーパーに山下さん、左サイドバックには宮原さんが、センターバックにはピサロと角田さんが、右サイドバックには杉本さんが入る。


左サイドハーフには野村さんが、守備的ミッドフィルダーに李さんと田原さん、右サイドハーフには天野さんが入る。


フォワードは俺とフラビオだ。


フラビオは俺と同じ172センチで、ぱっと見ただけでは190センチぐらいある角田さんにとても勝てそうには見えない。


相手のフォーメーションは4−4−1−1でゴールキーパーに松本さん、左サイドバックに坪井さんに、センターバックに新垣さんと木田さん、右サイドバックは植森。


右サイドハーフに練習生、守備的ミッドフィルダーにブエゴと鳳さん、右サイドハーフに犬飼さん。


攻撃的ミッドフィルダーに清水さん、フォワードにマイケルが入る。


相手ボールから試合が始まる。


相手は守備的ミッドフィルダーの鳳さんまでボールを下げる。


フラビオがプレッシャーを全くかけないから、俺が行く。


鳳さんが練習生にパスを出すと、練習生は天野さんを抜き、そのままドリブルで進む。


練習生がペナルティーエリアに入る直前でクロスを入れる。


クロスにマイケルが上手く合わせたけど、山下さんが弾く。


こぼれていたボールをピサロがクリア、それを俺が拾う。


鳳さんがプレッシャーをかけてくる。


俺が天野さんにパスを出す。


天野さんが得意のドリブルで一気に進み、途中俺とのワンツーで坪井さんを抜き、クロスを上げる。


フラビオは高く飛び上がり、180センチ近い木田さんにらくらく競り勝った。


フラビオのヘディングはゴール右隅に決まった。




『いつになく本気じゃないか、フラビオ?』


『うるせぇよ、ブエゴ』


『あてられたかい、あの子のプレーに』


『うるせぇって言ってるだろ』


ブエゴとフラビオが俺に離れてそんな会をしてることを、俺は当然知らなかった。




この試合はこっちのチームが圧倒的に攻め立てた。


この後、色々な組み合わせを試し、練習が終わった。




練習後、着替え終わり宿舎の部屋でマイケル、植森と話していると、天野さんが『週間J』を持って入って来た。


「お前らのってたよ、ほら」


天野さんが指を挟んでいたページを開く。


そこではJ2のチームに所属するルーキーの中から選ばれた15人が出ていた。


マイケルは『今後10年出てこない大型ストライカー』、植森は『相手FWを自由にさせないスピードキラー』と紹介され、少し二人のコメントが出ていた。


天野さんによると、去年はFWに有力な選手がいなくてゼロトップだったらしい。


「今年は3人もFWいるからな」


フォワードにはマイケルの他に日大工業高校にちだいこうぎょうこうこうから水戸コリエンテに加入した『短気なスピードスター』片岡星彦かたおかほしひこ、アヴァランチ大阪ユースからアヴァランチ大阪に昇格した『次世代型ストライカー』姫風理央ひめかぜりおが選ばれ、サブにもう一人札幌リュミエールユースから昇格した『雪国育ちのゴールハンター』西園寺細雪さいおんじさざめが書いてある。


攻撃的ミッドフィルダーには東京シュトルツユースから熊本シャランジュに加入した『和製ジダン』久米新くめあらた、守備的ミッドフィルダーに日大工業から水戸コリエンテに加入した『水戸にやってきたスーパーマン』山口都河士やまぐちとかし桜青学院大付属高校おうせいがくいんだいふぞくこうこうからレンディル仙台に加入した『桜の国からやって来たエリート』龍道千足、リザーブに明極高校めいきょくこうこうからリノヴァティオ鳥栖に加入した『勤勉な天才』水原夢人みずはらゆめと極句高校きょくくからヴェント湘南に加入した『Mr.ポリパレント』平山有矢ひらやまゆうやが書かれていた。


サイドバックには札幌リュミエールユースから札幌リュミエールに昇格した『雪の王子様プリンス五月雨大河さみだれたいが、東新高校から水戸コリエンテに加入した『東新を支えた影の男』上田刀麻うえだとうま、リザーブには柏井工業高校かしわいこうぎょうこうこうからリノヴァティオ鳥栖に加入した『気障なサイドの魔術士』三鷹蘭東みたからんどうが書かれている。


センターバックには椿川学園つばきがわがくえんからアヴァランチ大阪に加入した『超・超・攻撃的CB』名田尋斗なだひろと、リザーブには日大工業から熊本シャランジュに加入した『新・熊本の壁』蒲田未来かまたみらい、GKにはバジェーナ岐阜に加入した『ゴール前の巨人』川原光示かわはらこうじが書かれていた。


「大変だね、亀山」


天野さんはそう言って雑誌を持って部屋を出て行った。


「大変って‥‥?」


「U−18代表だろ? 今年の夏だぜ、確か」


正直全く自分と関係ない世界なので気にしていなかった。


「代表か‥」


「ま、クラブでアピールしなきゃだけどね」


植森がそう言ってマイケルを見る。


「三日後からの練習試合で結果残すしかないぜ」


「三日後練習試合なの?」


知らなかった‥‥


「お前本当に人の話聞いてないよな」


植森は呆れ顔だ。


「徳島とだよ。さらにその三日後栃木と。」


「じゃそこで結果残せばいいんだ」


「ま、そうだけどね」


俄然やる気が―――勿論元からあったけど―――出てきた。



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