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第18話ミス

序盤は東京がペースを握る。


フラビオのプレスに大阪市の花である桜をイメージしたらしいピンクと紺のユニフォームを来たアヴァランチ大阪ディフェンダー陣が戸惑ったのかミスを繰り返すし、東京がチャンスを量産する。


しかし相手ゴールキーパーの神懸かり的セーブでなかなかゴールを奪えない。


徐々に相手ディフェンダーが慣れてくると相手全体が落ち着いてくる。


サイドの勝負では互角、少なくとも決定的な仕事はさせていないが、御倉井や石田が相手フォワードにパスを通す場面が増えてくる。


宮本のシュートがピサロに当たり、こぼれた球をクリア、天野さんに渡る前に石田にカットされた。


石田がエドルにパスを通す。


ワントラップしたエドルが前を向き、野村さんとの1対1に挑む。


左に抜こうとするが野村さんは読んでいた。


きちんとボールに対して足を出し奪った。


しかし、主審の笛がなり、ファールになる。


野村さんがどうしてといったような表情になるが、黙って壁に立つ。


35メートルのサイドからのFKだが、御倉井の射程距離だということは前日のミーティングに見たDVDの映像で理解している。


しかし右足で蹴るため、今回は誰かに合わせそうだ。


主審の笛が鳴り、御倉井が蹴る。


嫌な予感がした。


回転のかかった球が高い弾道で勢いよく飛んできた。


宮本が角田さんの肩に腕を乗せて跳ぶ。


宮本のヘディングシュートは山下さんの手をかすめネットを揺らした。


大阪サポーターが沸く。


東京の選手は一斉に抗議をする。


「今のはファールだろうが!」


角田さんが珍しく声を荒らげる。


いつもは無口な李さんも抗議している。


野村さんは副審に確認させようとするがおそらく副審もファールとはとらないだろう。


1,2分してようやくボールはセンターサークルにたどり着いた。




ゲームが再開されても大阪ペースは変わらず、それどころか勢いを増す。


東京の選手は苛立ちからかプレーが雑になる。


山下さんがなんとか守っているが、いつ2点目が入ってもおかしくない。


現に1点取られてから既に5本以上シュートを打たれ、その打ち4本はフリーのシュートだ。


監督がテクニカルエリアぎりぎりまで出て指示を飛ばしているがおそらく耳には入っていない。


徐々に大阪は中盤でパスを回し始めた。


無理をせずに確実にボールをキープする。


東京の対応が後手に回り、なかなかボールが取れない。


フラストレーションばかり溜まる。


石田から御倉井へパスが通り、エドルにスルーパスが通る。


フリーで受けるとドリブルで進み、ペナルティーエリア内で角田さんとの1対1になる。


エドルはシュートを打つために先程と同じく左に抜けようとするが角田さんが足を出す。


しっかりボールにいったがエドルが倒れ笛がなる。


初めはエドルのシュミレーションかと思った。


しかし主審はイエローカードを角田さんに出した。


PKとなる。


スタンドからは大阪サポーターの歓声が起こる。


角田さんが完全にキレた。


「こいつが勝手に倒れただろうが!」


山下さんや宮原さんも抗議し、主審に詰め寄るが主審は相手にしないどころか「これ以上はカードを出す」といったそぶりを見せる。


納得出来ないままPKになる。


山下さんが大きく両腕を広げ、自分を大きく見せようとする。


キッカーは宮本だ。


大阪サポーターの宮本コールが場内を包む。


宮本が助走に入る。


右足で思いきり右下に蹴った。


山下さんの跳んだ方とは真逆に蹴られたボールはネットを揺らす。


痛恨の追加点を許してしまう。


山下さんが地面を叩く。


東京の選手達はもはや声も出ていない。


監督だけがテクニカルエリアから声を出している。


監督がベンチに戻って俺達にアップを命じる。


残り時間はまだ15分以上残っている。




試合はさながら大阪のシュート練習と化している。


主審の判定基準が微妙でなかなか思い切った守備が出来ないために相手にいいようにやられている。


さらに点差がついてもおかしくなかったが山下さんがなんとか防ぎきり、前半を0対2で折り返した。




ハーフタイムの間、リザーブの選手はピッチでアップをする。


シュート練習を松本さんに向かって行う。


きっちりと決めていく。


時間が来てロッカールームに行く。


ロッカールームを開けると、意外と声が出ていた。


修正点でも話しているのだろうか。


監督が俺を向き、ホワイトボードを指差す。


そこには俺の名前があった。


「後半、角田に代えてお前だ、準備しろ」


「ハイ!」


「気張れよ」


角田さんに頭をポンと叩かれる。


俺の出番がやって来た。


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