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第17話開幕戦

開幕戦の朝を迎えた。


俺達の泊まったビジネスホテルは驚くほど静かで、少しの物音でも響く。


相部屋になった田原さんはまだ寝ていた。


起こさないように静かに廊下に出た。


窓の外は車が凄い勢いで行き交っている。


ホテルからアヴァランチ大阪のスタジアムが見えた。


後8時間後にはあのスタジアムでプロチームの一員として参加することになる。


希望で胸が高鳴る。




朝食を取り、ホテルを出発する準備をする。


スーツケースに荷物を入れ、閉めた。


隣の田原さんはゆっくりと準備をする。


田原さんの準備が終わった頃には出発時刻ぎりぎりになっていた。


バスに乗り込み、天野さんの隣に座る。


「遅かったな」


「俺のせいじゃないっす」


俺がそう言うと天野さんは少し笑った後黙り込んでしまう。


バスの中の空気が重い。


だれもしゃべる人はいなくて、みな緊張しているように見える。


中には不安そうな顔をしてる人もいる。




スタジアムに着いて、ロッカールームに入る。


すぐにウェアを脱ぎ、ユニフォーム姿になる。


アップをしにフィールドに出る。


観客はまだ4、5割しかおらず、多分満員にはならないだろう。


東京ミストラルのサボーターは100人くらいだろうか。


50,000人収容出来るこのスタジアムではかなり少なく見える。


ボールを使ってアップを始める。


既にアヴァランチ大阪はアップを始めていた。


アップ中に選手紹介が行われる。


アウェイの東京の選手紹介は手短に行われる。


「ゴールキーパー、背番号1、山下洋明、ディフェンダー、背番号2、ピサロ・フェルナンデス、背番号3、角田和紀、背番号4、宮原保、ミッドフィルダー、背番号6、ブエゴ・ボカティージョ、背番号7李日晃、背番号8、杉本正一、背番号13、野村芳樹、背番号10、田原久敬、フォワード、背番号9、フラビオ・ヘルセペス、背番号11、天野浩司。リザーブ、GK背番号16、松本良明、DF背番号5、新垣正義、MF背番号17、鳳尊、背番号18、犬飼茂男、FW背番号28、亀山俊彦」


東京サポーターから拍手が起こる。


「続いて、我らがアヴァランチ大阪のスターティングメンバーの発表です!」


大阪サポーターが沸く。


ゴールキーパー、ディフェンダーと名前が呼ばれるたびに拍手と歓声が起こる。


「中盤の底からチャンスを作り出すアヴァランチのキャプテン、6番、石田穂! 右サイドを駆ける仕事人、8番、エドル!」


エドルが大阪のサポーターの歓声に応える。


何故かフラビオがエドルを睨みつけている。


「ナンバー10を背負うアヴァランチの若きバンディエラ、10番、御倉井司!」


誰よりも大きい歓声がスタジアムを包み込む。


「帰って来たアヴァランチのエースストライカー、9番、宮本剛!」


大きな拍手が起こる。


宮本が手を挙げて歓声に応える。


アヴァランチ大阪サポーターの応援に熱が入る。


アップを切り上げ、ロッカールームに戻る。


それぞれがそれぞれの方法で集中する。


監督が手を叩く。


「相手はJ2屈指のタレントが揃ってる。だが勝機はある。相手は3−5−2のフォーメーションだ。つまりサイドは一人だ。ここで優位に立てばゲームを支配出来る。野村、杉本、お前らにかかってる」


監督が野村さんと杉本さんの顔を見る。


二人とも頷く。


「守備はとにかく相手フォワードの宮本とアウダイールにフリーでボールを持たせるな。特に宮本にボールを出されると厄介だ。なるべくボールを宮本に出ないように守れ」


守備陣の顔を見ていく。


みな黙って頷く。


監督は一人一人に声をかける。


「もう一度言うが相手はJ2屈指の選手が揃ってる。だがチームとしてはウチの方が上だと俺は信じている。頼むぞ」


「ハイ!」


山下さんが監督に代わり中心に立ち、円陣を組んだ。


「今日が今シーズンの始まりだ。しっかり勝つぞ!」


「オウ!」


腹の底から声を出す。


ロッカールームのドアを開け、外に出た。


『相手の8番と知り合い?』


フラビオに聞いた。


『‥昔のチームメイトだ』


ブエゴから聞いた話と今のフラビオの表情から想像すると、あまり愉快な仲間ではなさそうだ。


『今日だけは何があっても、負けられない』


フラビオの表情が血に飢えた野獣のそれへと変わる。




ピッチでは開幕のセレモニーが行われる。


それをベンチから眺める。


足が疼く。


体の中から早く試合に出たいと叫ぶ声が聞こえる気がする。


なんとか押さえてセレモニーが終わったピッチを見つめる。


試合が始まった。


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