第16話帰還
宮崎から東京に戻る時間になった。
宿舎の人に小さなセレモニーをしてもらい、空港に出発した。
バスの中は先程の練習試合の疲れからか寝ている選手が多かった。
空港に着いて、搭乗の準備をする。
空いた時間を使って寮にいる月美さんに電話した。
「もしもし」
「あ、亀山!?」
月美さんの嬉しそうな声が聞こえる。
「今どこ?」
「宮崎の空港です」
「お、もうすぐだね!」
まだだいぶ後だけど‥‥
「沢山ご馳走作って待ってるから! じゃあね!」
切られた。
東京に戻って来た。
クラブハウスで解散した。
マイケルのバイクはちゃんと管理されていた。
マイケルに乗せてってもらう。
寮に着くと、いい匂いが漂っていた。
「今日の夕飯は旨そうだぜ」
「そうだな」
俺達は急いで『食堂』に入った。
『食堂』には豪華な料理が並ぶ。
もちろん、栄養やカロリーのことも考えているメニューだ。
月美さんが楽しそうにキャンプ中の話を聞きまくる。
主に話しているのは植森だ。
俺は試合の疲れからか満腹になると眠くなってきた。
「すんません、先寝ます‥‥」
『食堂』を後にする。
部屋に入ると机の上に何か置いてあった。
お守りと手紙だった。
お守りには『必勝祈願』と書いてある。
手紙を読んでみる。
「亀山へ。キャンプお疲れ様でした。有意義なキャンプになったみたいですね。清水さんとフラビオの復活に一役買ったと兄に聞きました。兄や杉本が1年近くトライしていたんですよ?」
知らなかった‥‥
「開幕戦はアヴァランチ大阪に決まりました。練習試合で結果を出し続けてる亀山ならスタメンもあるかもしれません。相手はJ2屈指のタレントを揃えるチームですが、サッカーは名前だけでするものじゃないってことを証明してください。大阪までは行けませんが、寮のTVで見てます。今日はしっかり疲れを癒して早めに寝て明日に備えてください。宮原月美」
月美さんの言葉に甘え寝ることにする。
明日の練習終了後で明々後日の開幕戦遠征メンバーが発表される。
電気を消して目を閉じた。
めずらしく月美さんに起こされる前に起きた。
昨日練習試合をしてすぐに移動したのに体がかなり軽い。
今日が試合ならいいのに、と思うくらいだ。
『食堂』にいた月美さんに手紙とお守りのお礼をしたら、照れた笑みを見せた。
練習自体は疲労も考えてか戦術の確認やセットプレーの確認程度だった。
今日の練習が終わる。
「集合!」
明後日の遠征メンバーとスターティングメンバーが発表される。
「スタメンから名前呼んでいくからな」
緊張の瞬間がやってくる。
「ゴールキーパー山下。センターバック宮原、ピサロ、角田。守備的ミッドフィルダー李、ブエゴ、右サイドハーフ杉本、左サイドハーフ野村、フォワードフラビオ、天野」
俺の名前はなかった。
「リザーブはゴールキーパー松本、ディフェンダー新垣、ミッドフィルダー鳳、犬飼、フォワード亀山、以上の16名が遠征メンバーだ」
俺も遠征メンバーに入った。
「もう知ってるだろうが開幕戦はアヴァランチ大阪だ。アウェイだが守備的に戦うつもりはない。勝ちに行くぞ!」
「はい!」