1話
ぼくはきょうだいのなかで、いちばん遅く殻を破った。
だから先に殻を出てごはんをもらっていたきょうだいより、ひとまわり小さかった。し、ママのくちばしからごはんを受け取ろうにも、ほかのきょうだいに押しのけられて、力では敵わなかった。
きょうだいはたくさんいたから、ごはんを食べてそれぞれカサが増すと、いよいよそこにぼくの居場所はなくなった。
例えではなくて。
単純に巣が狭くなって、生き残るちからの弱そうなぼくはママに蹴落とされたんだ。
巣から落ちて、初めてぼくは、高い木の上に棲んでいたって知った。
木に沿って落ちていく間、羽毛も生えてないぼくは、ただ寒かった。
ぼくに起こったことは、仕方のないことだった。
そういう習性の鳥だから。
そうして取捨選択しないと、生き残れない世界に、ママも兄弟もまるごといたから。
野に生きるってそういうことだから。
仕方のないことだった。
仕方のないことだった。
仕方のないことだった。
ちょっと泣いた。
ママみたいに、空を飛ぶ生き物に生まれたのに、鳥っていうのは、風切り羽とか小翼羽とか、そういうものが生えないと飛べないんだ。
空を飛ぶ生き物に生まれたから、今、ぼくは無抵抗に落ちていくしかできないんだ。
お腹が減っていた。
風が、寒かった。
ぼくが狐やイタチや木や草、とにかくぼくじゃないものに生まれていたら、ぼくは、こんなになす術ない終わり方をしなかったのかも知れないのに。
もしくは殻を破るのが、もう少し早ければ、ママに選ばれないなんてことにはならなかったかも知れない。
ちいさくて弱いぼくのからだ。
それはぼくのせいなのかな。
落っこちていくとき、虫がないていた。
「えっちょ、待っ!
その下、うちの巣があるんですけどおおおぉ」
こえは遠く、小さくなっていって、ぼくはやわらかい何層かの何かを引きちぎって、落ちた。