表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

元カノからのダメ出し

樹里との初デートを終えて自宅アパートに戻った誠であるが、姿を消してずっと付いて来ているはずである幽霊の晴香の名前を呼んだのだが、晴香は姿を現さなかった。


「晴香、もういいよ。出て来いよ」


誠は再度呼びかけてみたが、やはり晴香は現れない。


(呼ばなくても現れると思ってたのに、いったいどうしたんだ? ここにはいないのか?)


誠は晴香が姿を見せない理由が見当たらないので、晴香はこの部屋にはいないと考えた。


しかし、どこに行ったのかはわからないし、どこかに行く理由も見当たらない。


誠は疑問を抱えながらも、お腹が空いていた事に気付いた。ご飯をわざわざ炊くのもめんどくさいので、冷凍庫に買いだめしていた冷凍食品の中から、チャーハンと白身魚のフライをレンジでチンして晩ごはんとして食べる事にした。


(今、晴香が帰って来たら「自分だけ食べて、ずる〜い!」とか言うのかな?)


誠は熱々のチャーハンをほお張りながら、ふと晴香の事を考えた。


(いや、幽霊だからお腹は空かないのかもな)


仮に幽霊でもお腹が空くとしても、誠の食べている料理に触る事が出来ないのだから、食べる事は出来ないのかもしれない。誠は色々と考えながら晩ごはんを食べていた。


誠は晩ごはんを食べ終わり、テレビを視たりしてくつろいでいたのだが、晴香は姿を見せずそろそろシャワーを浴びて寝る時間となった。


(晴香はどこ行ったんだろうか? いや、そもそもあの幽霊は本当にいたのか? 幻覚でも見たのかも……)


誠はあの幽霊の幽霊は幻覚ではないかと思い始めていた。


(断ち切れてないのかもしれないなぁ……)


ひょっとしたら、樹里と付き合う事になっても、未だに引きずっている晴香への想いが見せた幻影なのかもしれないと誠は考えた。


(幻影でも良かったよ。晴香にまた会えて)


誠は独りでしんみりと晴香の事を想った。


そして、シャワーでも浴びようかと立ち上がった。


「うわぁ、遅くなっちゃった!」


耳をつんざくような大声とともに晴香が部屋の窓を通り抜けて現れた。


「ごめん、ごめん。カワイイ男子高校生がいたから、ずっとくっついていたの。トイレとかお風呂とかを観賞してたら遅くなっちゃった」


晴香はペロッと舌を出しながら、イヒヒと意地悪な笑みを浮かべて、どうみても申し訳なく思ってはいないような態度で言葉だけで誠に謝罪した。


晴香にロマンチックな想いを寄せてしんみりとしていた誠は、ため息を吐きながら晴香をただ眺めるだけだった。


「どこ行ったのかと思ってたら、男の下半身を見物しに行ってたとはね……」


誠はイケメン男子の下半身をゆっくり見物してご満悦といった様子の晴香に呆れるしかなかった。


「まぁ、とりあえず、おかえりなさい」


「ただいま」


はた迷惑な幽霊だが、これでもかつては婚約者だった。たとえ幽霊とはいえ、再び会う事ができて、誠としては嬉しくもあっただけに、晴香が幻影ではなくてホッとしていたのも事実である。


「姿を消したまま、ずっと僕のそばにいるんじゃなかったの?」


「だって、退屈なデートでつまらなかったんだもの」


「どのあたりまで僕にくっついていたんだい?」


「サッカーの試合が始まる前あたりまで」


誠自身も感じていたのだが、初デートとはいえ味気なさすぎた。だからといって、イチャイチャしていたら晴香は腹を立てるに違いないのだが……


シャワーを浴びるために、一度は立ち上がった誠だが、改めて座布団の上に座り直した。晴香もフワフワ浮かんでいたが、誠が座るのを見て、誠の目の前にちょこんと座った。


「あれ? 朝と服が違うね」


朝はTシャツにジーンズだったのが、今は部屋着のつもりか上下ともスウェットである。


「念じるだけで、自由自在に服装は変えられるのよ。だから、コスプレやり放題。やってみせるわね」


晴香は次々と衣装を変えていった。メイド、ナース、巫女、キャビンアテンダント、女性警察官などなど、様々な衣装にどんどん変わっていく。


「今はどんな衣装がいい?」


「くつろぐ時間だから、さっきの部屋着でいいよ」


晴香は先ほどのスウェット姿に戻った。


「家でのんびりする時間にナースや巫女とかいたら、落ち着かないよ」


「つまんないの」


晴香は不満気だが、誠としては場の雰囲気は守ってもらいたいところである。


「さて、晴香もさっき言ってたけど、僕も今日のデートは味気なかったと思う」


「サッカーマニアの子をサッカー観戦に連れて行ったら、サッカーに夢中になりすぎるのは当然よ。誠のプランが良くないわ」


晴香が思っていた事を言った。


「もう少しロマンチックな雰囲気にならないとな。どうすれば良かったんだろ? 晴香は何がいけなかったと思う?」


誠が晴香に尋ねた。晴香は少しのあいだ目を閉じて考えた。


「そうね。まずエスコートがなってない。手も繋がず、腕も組まず。ただ、一緒に歩くだけ。これじゃ、ただの友達と変わらないわ」


「他には?」


「誠がサッカーに興味がないのに、いくらあの子がサッカーマニアだからといって、サッカー観戦に行くのはどうかと思うわ」


晴香はどんどんダメ出しをする。「サッカーのスタジアムに着いたあたりで、私は退屈して誠から離れたけど、試合後はどうせただ帰って来ただけでしょ?」


「そうだけど」


誠の答えに晴香はため息を吐いた。


「もっと強引にでも親密にならないと」


晴香は誠の不器用さが歯痒く感じてしかたなかった。


「相手に楽しんでもらうのはいいけど、誠自身も楽しめるようなプランにしないとね」


晴香も誠が奥手なのはわかっているが、それにしても、誠はデートのプランニングの段階で退屈な内容になるのに気がつかなかったのか疑問だった。


その後も元カノからは次々とダメ出しされて誠は頭を抱えるしなかったのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ