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 家族構成4

「弟も見えるんだって。家族みんな見えるって言ってた」

 いつも通りに千穂と壱華の部屋に集まり状況を共有する。

「やっぱりそうなんだ」

見える血筋なんだねと武尊が考える風にする。

「千穂たちの村も見える人多いんだもんね。やっぱり遺伝なのかな」

「俺の父ちゃんと母ちゃんはほとんど見えないぜ?」

うっすーく見えるから見過ごすって言ってた。と啓太が説明する。そうなんだ、と武尊は俯いた。

「そう言えば、父さんが見えるのかは聞くの忘れたな」

ずっと遺伝だと思ってた。

「おじさんが見えるから、見えてても不思議じゃないよね」

「見えてるんじゃないかしら。剣とか銀の器とかに詳しいみたいだし」

壱華の言葉に武尊は視線を上げる。

「遺伝の人もいるし、そうじゃないやつもいるって事だな」

たぶん、と啓太が締めくくる。

「俺はどっちなんだろう」

「武尊は血だと思うよ」

ひょいと碧が武尊の首に飛びつく。おんぶのような形になりながら碧は続けた。

「武尊の霊力はすごく強いもの。土台がないとここまではいかないよ」

「突然変異するにしても元が必要だって事か」

啓太が珍しく難しい言葉を使う。

「どっちにしても、武尊の力は強すぎだよ」

千穂は壱華が淹れてくれたお茶に手を伸ばす。湯呑は少々熱かったが持つことは不可能ではなかった。

「貴輝も強すぎだったの?」

少し、千穂の顔が強張る。それを見とどけて、武尊は説明を他の三人に求めた。剣を持つ者が、どれぐらいの強さを持つものなのか知っておきたいと武尊は思ったのだ。

「俺たちの中では頭一つ抜けてた」

啓太が目を細める。

「でも、それよりずっと、武尊の方が強いよ」

啓太がじっと武尊を見つめた。武尊はぼすっと背中をソファに預ける。

「よく分からないな~」

「武尊はここら辺のことは何も教わらずに来たものね」

壱華が足を組み直しながらフォローを入れる。武尊はうんと頷いた。

「どうして何も教えなかったんだろうね」

すこし恨めがましそうな目で宙を睨む。

「何にも教えてくれなかったの?お父さん」

千穂は足をプラプラしながら問いかける。武尊はうーんと考え込む。

「―武術とかは一通り習ったかな」

こてんと首を傾げながら武尊はそう口にした。―碧は器用に首にぶら下がったままだった。

「そっちか」

啓太が手を叩く。それにみなの注意が集まる。ああ、と啓太は手を下ろす。

「いや、剣を持った時に戦えるようにって路線での教育かと」

「「ああ」」

啓太以外の四人がそう声をあげる。

「じゃあ、武尊のお父さんは武尊が金色の使い手になるって武尊が小さい時から思ってたってこと?」

千穂は足をプラプラさせたまま言う。

「そうなるかな?」

樹が首を傾げる。その行動に自信のなさが溢れている。

「でも、使い手にならなかったら元の学校に戻すつもりだったんでしょ?」

先生が言うにはさ、と武尊は少しむくれた顔で言った。

「本当、剣に特化してるよな」

「できたら、私たちの仲間にしたくなかったのかしらね」

『あいつらには気を付けろ』

壱華の言葉に伊予の言葉を武尊は思い出す。

―千穂たちが危ないってのは本当ってこと?

―できたら関係を持たせたくなかった?

つくづく父親の考えていることが分からなくて、武尊は不機嫌になる。

「何企んでるんだ?」

「企むって、大げさな」

啓太がお茶に手を伸ばしながら笑う。それに武尊はちらと視線を向ける。

「あいつは何か企んでるよ。確実に」

―本来なら千穂の村に俺を住ませることだってできたんだ

それをわざわざしないで学校を作るという膨大な時間と労力をかけている。回りくどいこのやり方の裏に、絶対なにか企みがあるはずだと武尊は考えた。

―まさか、轟もその一環だとか言わないよな

だったら絶対許さないと武尊は機嫌をさらに悪化させる。

「過大評価なような―」

樹が首を傾げる。父親に対する武尊のスタンスがよく分からなくて樹は困惑する。

―すごいとは認めてるみたいだけど、好きではないみたいだし

うーんと樹は唸った。

―兄弟とかいたらまた違ったのかな

自分のように―。樹は隣に座っている啓太をちらと見上げた。普段はまったく頼りにならないが、いざとなったら行動力はある男だ。その長身とがっしりとした体形がうらやましい。樹は自分の両手に視線を落とす。まだまだ細くて、女の子と言われても仕方がないと思った。今度は視線を上げて、向かいに座っている武尊を見る。背は特別高いわけではないが、体は無駄なく引き締まっている。

―俺も、武道とか習ってたらこんなヒョロヒョロじゃなかったのかな

そんなことを考えていると少し悲しくなってくる。はあ、と一つため息をこぼす。

「疲れた?」

それに気づいた武尊が尋ねてくる。それに小さく笑って、樹は首を横に振った。

「平気だよ」

「とりあえず、お父様の企みは置いておいて、問題は轟よね」

壱華がずれにずれていた話題を元に戻す。

「霊感があって、弟の方が優秀。弟も見える」

千穂がそう口にすると、武尊は頷いた。

「今のところそれくらいしか情報ないね」

「優秀って、何が優秀なんだろう」

樹はうーんと考えながら口にする。

「単純に考えると、霊能力者として、だよな」

啓太が自分の膝に肘を立てながら言う。

「結界術の家柄だって、熊は言ってたものね」

壱華が足を組み直す。その拍子に、長い黒髪がさらりと揺れた。

「じゃあ、結界術の使い手として弟より劣ってるから、私が欲しいってこと?」

そのために、この学校に来たってこと?千穂の顔に不安の色が現れる。

「そうだとして、その狙いに対して親が協力的じゃないと学校なんて変われないよ?」

「じゃあ、親が轟の銀の器が欲しいって願いを応援してるってことか?」

「一族総出で狙ってたりして」

「それはバックが強すぎないか?」

困るよと、樹と啓太は会話を交わした。

―この学校の学費をそう簡単に出せるんだろうか

武尊は考える。

―霊能力の一族って、儲かるのかな

親は経営者ではなさそうだとあかりが言っていた。

―一族で狙ってるとしたら、どうして優秀な弟の方をよこさなかった?

―兄の方で事足りるってことか?

それとも―

「裏に、家とは別の支援者がいるってこと?」

「どういうこと?」

小さく呟いたはずの言葉は、隣にいた千穂の耳に届いたようだった。千穂が説明を求める。

「―どうして、この学校に来たのか聞いた方がよさそうかなって」

「狙いなんて教えてくれるの?」

「表面上どう取り繕うのか気になる」

「どう取り繕うかか」

啓太が考えるように口にする。

「その言い訳、俺たちも作っとくべきだったな」

その言葉に、幼馴染たちは苦笑いを浮かべるだけだった。

「まあ、とりあえず聞いてみるよ」

武尊の言葉で、会議はお開きとなった。


「なんでこの学校に来たか?」

 理科室のとある席で轟は首を傾げた。彼の隣には教科書に視線を落としている武尊が座っている。ちなみに、授業はまだ始まってはいない。

―珍しいことがあるものだ

千穂以外のクラスメイト達はその光景に緊張せずにはいられなかった。

―下手に機嫌を害してくれるなよ

そんな願いの込められた視線が轟に集まっていた。

「俺は、親が行けって言ったから来た」

轟は違うの?と言外に問いかける。

「僕は、親戚のおじさんに勧められてかな」

にっこりと轟は笑う。その笑顔を横目にちらと見て、武尊は教科書に視線を戻した。

「どうして勧められたか知ってる?」

その問いに、轟は困ったように笑った。

「ちょっと、親とも弟ともうまくいってなかったから、一度距離を取ってみたらって言われたんだ」

ここ、寮があるし、地元から遠いし。

「僕も、ちょうどいいかなと思って」

「そうなんだ」

「二階堂君はどうしてこの学校にしろって言われたのか知ってるの?」

「分からない」

「分からないのに了承したの?」

「あいつ、嫌いだけど間違ったことは言わないから」

「信用してるんだ」

「・・・・・・そんなんじゃない」

武尊はばさりと教科書を閉じた。その行動に、理科室中に緊張が走る。しかし、救世主とは現れるものなのか、生物教師大脇が理科室に入ってくる。

「それでは授業を始めますよ」

二人の注意はお互いから大脇にへと移った。


「二階堂って、よく分からない行動するよな」

 昼休み、大島が優実の買ったポテトチップスに手を伸ばしながらぼやくように言った。

「よく分からないって?」

また、千穂や大島には頭痛をもたらしそうな洋書を片手に武尊は説明を求めた。

「轟のこと、嫌いなんじゃねえの?」

「嫌いだよ」

「じゃあ、どうしてあいつの隣に今日は座ったんだよ」

「嫌いでも、たまには話してみたいと思うこともあるでしょ」

「そっか?」

大島は自分の記憶に検索をかけているようで、視線を上げて考え込む。

「俺、そんなことないわ」

「部活でも?」

ずっと携帯を見ていたはずの佐々木がちゃっかり入ってくる。

「あー部活だったらあるかも?」

チームプレイって大事だし。と大島はまたポテトチップスに手を伸ばした。

「あんまりばくなく食べないでよ。女子分無くなっちゃうじゃん」

優実が大島の手の速さに釘をさす。それにはーいと大島は気の抜けた返事を返しただけだった。

「それで、会話は実りあるものになったのかしら」

あかりが優しく笑みながら問いかける。その言葉に、んーと武尊は考え込む。

「まあ、上々かな」

―ほかにも訊きたいことはたくさんあるけど―

今の時点ではあれくらいで十分だろうと武尊は判断した。

―やっぱり、家では肩身の狭い思いをしていたみたいだ

―弟の方が優秀って、多分結界術のことだよね

―一族がって言うよりも、親戚のおじさんが裏にいるっぽい

そう脳内で整理する。あとは―

―親戚のおじさんが何者かって事だよね

―本当に親戚かも分からないし

すっと目を細める。空気が変わる。恐れるほどではない、けれど清々しい空気が広がる。それに大島は首を傾げて佐々木に視線を投げる。佐々木は分からないとでも言うように肩をすくめて見せただけだった。そんな中、千穂だけが、後から武尊に話を聞かねばと使命感に内心頷いていた。

―轟と話をして、結果どうだったのか聞かないと

うん、と力強く頷いた千穂に、優実とあかりは目を合わせて首を傾げたのだった。

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