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夏のホラー2017 裏野ドリームランド

ジェットコースター崩落事件

作者: そらからり

ホラーじゃないよね? これ

 やれやれ……これが膠着状態ってやつかい?

 俺の能力は相手に通じず、相手の能力は俺には通じない。互いに通じない能力を掛け合うことほど無駄なことはないが、実はそれには一つ間違いがある。

 俺の能力はまだ全力ではなく、本質を出し切ってはいない。


「ヒャハハハ! いくらお前が暗殺に長けた野郎でもこう正面からぶつかっちゃあ勝ち目はないようだな。喰らえ! 『オールオールマイティ』!」


 俺と今向かい合っている男――烏賊狩枝垂が懐から取り出したナイフを投げつけてくる。

 それは上下左右に投げられた後放物線を描いて俺の方へと軌道を修正しながら切っ先を俺の方へと向け飛んでくる。


「くっ!? 『ウィークエレクトリック』」


 俺の手から放たれた微弱な電流がナイフへと当たるとナイフはあらぬ方へと飛んで行ってしまう。


「ヒャハハ。やるねえ。だけど、そんなことやってっと死人がでるぜ?」

「……ゲスが」


 くそ、今の飛んで行ったナイフはその後どこに行ったのか分からない。……一般人に当たってないことを祈るが。


「ゲスはそこらで死んでいるやつらだろ? なんせ俺は選ばれた人間だからよ! お前もそうだろ? なあ、殺し屋さんよ」

「お前のようなやつと一緒にするな。俺が殺すのはお前らのような能力を悪用する外道だけだ」

「外道か。人間の道から外れたっていうなら確かに外道だ。そしてお前もな」


 俺と烏賊狩は能力者。これは揺るぎない事実で、他の多数の人間は非能力者であることも変わらない事実だ。

 多くの能力者は自分の能力こそが最強だと勘違いし――実際に最強とも言える能力を持つ人間もいるが――、他の人間は下等だと見下して虐殺を始める。

 烏賊狩もその例に漏れず、つい一週間前に能力が発現したにも関わらず、すでに十人単位で人を殺している。負傷者で数えたらその数倍だ。

 そしてその能力が……俺の能力と相性がそこまで良くはなかった。お互いに。


「しっかし、良く俺の居場所が分かったなあ。こんなに人が多いのによお」

「俺の仲間に人探しの得意なやつがいてな。それもお前のような血の臭いが濃い奴ほど探しやすいんだとよ!」


 ここは裏野ドリームランドという遊園地。休日ということもあってか客数も多い。今は仲間や協力者、係員によって避難が始まっているが、それも全員避難できたかというと怪しい。

 何とかやつを追い詰めて行ったら、やつはジェットコースターに乗り始めたのだ。俺の能力なら勝てると思い、乗り込んでみたがそれは間違い。くそ、やつの能力がここまで強大だったなんて。


 万物の自動化。それが烏賊狩枝垂の能力だ。ナイフを投げれば自動で相手へと飛んでいくし、知らなかったがこうやってジェットコースターさえ自動で運転できるようだ。やつはその能力で爆弾や様々な銃火器、さらには車などを自分の思い通りに動かすことで虐殺を繰り返してきた。

 一応、能力には制約というものがある。強大な能力にはそれなりの制約があるはず……俺の能力がそうであるように。


 俺の能力は電流の貯蔵と放出だ。俺の体内で作られている電気を流すという能力。とはいえ普段はそこまでの電流を出せない。せいぜいがピリッとするくらいの電流だ。俺に大量の電気を作る能力はなかったらしい。

 さて、俺が普段どうやって闘っているかというと、相手が高所にいるところにこっそりと近づいて電流を流す。これだけだ。まあ流す場所くらいは選んでいるけどな。俺の電気を流す場所は三半規管。ここに上手く電気を流してやれば平衡感覚を狂わせることができる。

 大抵の相手はこれで落下してその衝撃で死ぬ……はずだったんだけどな。


「まさか、自分の身体すら自動化していたとはな」

「自動化であり最適化だ。平衡感覚とかそんなもの俺の身体も脳もとっくに使ってねえよ。ちなみに脳みそに電気流して狂わせようたって無駄だぜ? 俺の身体はすでに脳からの指令を受け自動化されている。いくつもの指令を受けて全ての行動を取れるようにしている。今しゃべっているのもすでに発せられた指令通りなんだぜ?」

「なるほど。やはり能力の情報に誤差があったようだな。万物の自動化ではなく、万物への命令か。生き物は自分だけのようだが、それでも厄介なことに変わりない。制約は……指令できる数ってところか?」

「……」


 烏賊狩は答えない。正解だから黙ったのかそれともそれは予想外だったのか……どちらにしても今までも最大で操ってみせたのは4つ……いや、やつの身体を含めると5つってとこか。

 しかし助かったがやつの能力である指令とかいうのが電気を介してであったことだ。多系統だと思っていたが同系統の能力だったのか。おかげで打ち消すことはできないが、少しだけ書き換えることはできた。


「ヒャハハ。さあジェットコースターも佳境だぜ!」


 今までは上昇をしていたジェットコースターであるが、頂上まで上り下降を始めようとしている。


「っ!? 『ウィークエレクトリック』!」


 俺は慌てて自分の身体に電流を流し筋肉の増強と平衡感覚の強化をする。必死にジェットコースターに捕まるが、やはり電気をケチったせいか辛い。


「無様だな。さて、決着の時だ。『オールオールマイティ』」


 いつの間にか地面に刺さっていたナイフを拾い烏賊狩は笑う。

 ……俺の書き換えた指令は俺に刺さらないことだけ。まさかその後の戻ってくるという指令まであったとは。

 もし膠着状態があるならばやつのナイフなどの武器が切れたとき、もしくは俺の体内の電気が無くなったときだけと思っていた。俺の電気は無くならないはずだから、勝てると思っていたが……。


「くたばれやぁ!」


 しょうがない。奥の手だ。手足に出来る限りの電気を流して筋力を底上げする。


「『ウイーク』……いや、『ストロングエレクトリック』!」


 俺の能力は電気の貯蔵と放出。今まで大事に溜めておいた電気を自在に放出することができる。およそ生まれてからずっと溜めて置いた電気をな。


「ヒャハハ。俺の身体にでも電気を流そうってのか? そんなもの効かね、え?」


 ガクン、と揺れた。烏賊狩の身体がではない。俺の身体でもない。いや、揺れたでは正しい表現ではないな。

 動いていたジェットコースターに流されたやつの指令を無理やり書き換えて動きを止めさせる。約一年分ってとこか。かなり持っていかれたが、一瞬でも止められれば儲けものだ。

 俺はジェットコースターにしがみついている。やつは余裕の面をして突っ立っている。

 急下降していたジェットコースターが急に止まると起きること。


「慣性の法則って知ってるか?」


 いくら身体を自動化して落ちないようにバランスをとっていたとしても運動エネルギーには勝てないだろ?


「う、うわぁぁぁぁ!?」


 それは指令通りではなかったのだろう。やつは悲鳴を上げながら落下していった。


「やれやれ。結局落下死かよ。過程は違えど結果は同じってか」


 いくら下降していたとはいえ、この高さだ。死んだはず……

 

『すぐそこから離れろ!!』


 胸元のトランシーバーから仲間の声が聞こえた。


「何が起きている? ターゲットはたった今殺したが」

『死んではいない。かろうじてだが受身の姿勢をとって生き延びた。……やつめ、残された力でジェットコースターを丸ごと動かそうとしている。はやく逃げろ!』


 いや、俺そのジェットコースターに乗ってるんですけど……。

 見るとレールがうねうねと意思を持っているかのごとく動き始め、コースターも再び動き始める。

 くそ、恐らくだがもうやつは瀕死のはずだ。

 

『前を見ろ! レールが途切れているぞ』

「……ああ、見えた。それよりも烏賊狩はどうしてる?」

『それよりもって……まあいい。今俺が止めを刺した。だが、能力が止まらない。恐らくだがお前を殺すまで止まらなくなっているようだ』

「そうか……ならお前も避難しておけ。巻き込まれても知らんぞ」

『あれをやるのか!? だが、それは……』

「どのみちここで死ぬなら無駄になるだけ。ならば使うしかないだろ」


 俺は体内に流れる電気を感じようと意識する。手、足、指、脳、果ては内臓まで身体中から電気を集め一点に絞る。

 俺はピストル状に人差し指を立て、レールへと向ける。


「……また溜め直しか。『ストロングサンダー』」


 指先から放たれる電流。それは先ほどまでとは比べ物にならないほどの熱量を伴った電流となりレールへとぶつかり光る。

 レールからレールへと伝わった電流は烏賊狩からの指令を消し飛ばすには十分すぎたようで、物理的にも破壊されたレールは今にも崩れそうであった。というか溶けていた。


「今のうちに降りないと……」


 強化された平衡感覚と筋力を駆使してどうにか下へと降りる。レールが動いていなければこうしてレールを伝って降りることくらいはできるのだ。


『見ていたぞ。おつかれ。後は他のやつらに任せておけ』

「ああ、お疲れさん。俺はもう帰るわ。体内の電気もすっからかんだ」


 ふわあ、とあくびをした直後、背後で凄まじい音が鳴り響いた。

 恐る恐る後ろを振り返るとそこには完全に崩れ落ちたジェットコースターの姿が。


「……はやく帰ろ」


 後始末は任せたぞ、同士諸君!





 後日ニュースにはジェットコースターで事故があったとあり、裏野ドリームランドはその責任から廃園となるそうだ。……俺のせいみたいで申し訳ない。

 ネットではナイフがどこからともなく飛んできて騒ぎに便乗した暴漢の腕に刺さったやら、ジェットコースターが光ったやら色んな噂が飛んでいたが、全部俺の能力のせいだとは言わないでおこう。

 しばらくは俺も休業だ。あんなに電気を使ったんじゃいざというときに奥の手も使えないからまともに闘えない。


「それに学生の本文は勉強だからな」


 まだ朝飯をむぐむぐと食べている妹を見ながら俺は微笑む。

 この日常を壊すわけにはいかない。そのためなら俺はこの手を何時まででも汚し続けるだろう。何人でも悪人を殺し続けるだろう。

 朝食を食べ終わった妹の手を繋ぎ家を出る。今日は小テストがあるとか言ってたな。……まあ赤点は覚悟しておこう。


すいませんふざけすぎました……


結局まだまともにホラー書いてないという情けなさ


つ、次こそは!

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