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絢爛豪華な調度品であふれた居室は内装もまた見事なものである。
美夜は今いるこの場がどこであるのか理解するのと同時に深い溜息をついた。
ここは美夜が以前使っていた部屋だ。ここの大半の調度品がとある人物から送られたものであり、美夜自身も調度品の良し悪しなど使えれば良かったので送られるがままに受け取り、使っていた。
後から知ったのだが、最高級の品を王宮に納めるいわゆる王室御用達の店からオーダーメイドで取り寄せていたらしい。図案から考える暇があるならもっとしっかり国政に励んでこいと言いたくもなる。
(さて、あの問題児はどこにいるのやら)
とりあえず自分をここに呼び出した手紙の主、マクシミリアンを探しに部屋を出ようとした時だった。
部屋の扉が急に勢いよく開かれ、一人の青年が転がり込んできた。
ハァハァと息をつくその姿に、一体何から逃げてきたんだと思わずにはいられない。
生憎と部屋の中を見渡しても水分補給できそうなものは置いていないが、背中をさすってやることはできるだろうと美夜はその青年に近寄った。
「あの、大丈夫?」
「……ミ、ミヤ?」
あらゆる種類の光を受け輝く長い金髪を高く一つに結い、今にも零れ落ちそうな双眸はサファイアというよりもアウィナイトの輝きに近い。細いが決して骨と皮だけというわけでもなく、程よく鍛え上げられているのだろう身体は美夜が覚えているよりも少々成長し、幾分か大人びたようだが、生来の泣き虫っぷりは成長しても変わらないらしい。
現に今も部屋の中にいるのが美夜だと分かった瞬間、青年―マクシミリアンは涙をボロボロと溢して抱き着いてきた。
「あ、会いたかったよぅ!」
「ちょ、分かったから!! 苦しいから離して!!」
もう昔のように小さな子供ではないのだから、そこら辺の力加減はしっかり覚えて欲しいところだ。
(そりゃあ、小さい頃は二人がかりで飛び込んでこられても受け止めきれるくらいの力はあったけど。もうこの体格差になれば一人でも無理だわ。下手すりゃ圧死する)
やっとの思いで引き剥がした青年の手を引き、柔らかいクッションのきいた猫脚ソファへと座らせた。その隣に腰かけると、マクシミリアンはここぞとばかりに頭を摺り寄せてきた。まるで大型犬のような甘え方に、美夜もよくほだされ、頭を撫でていたものだ。
……が。
今はまず先に問い詰めることがあった。
美夜の手が自分の頭に乗せられる雰囲気を察したのか、マクシミリアンはいそいそと頭を低く下げた。
しかし、美夜の手は彼の頭を撫でることはなく、それどころかグイッと押し剥がしにかかる。
「……ミ、ミヤぁ」
「今はそれよりも先に言うことがあるでしょ?」
一瞬ポカンとするマクシミリアンだったが、思い当たる節に考えがたどり着いたのか、身体ごと美夜の方へ向き直り、バッと頭を下げた。
「また召喚しちゃってごめんなさい!」
「……ハァ」
「許してくれる?」
「許すも許さないも、ここまで来ちゃったら仕方ないでしょ? それよりも、なに? あの手紙の量は。あれじゃ、あなたもあの子と大して変わらないわ」
「だ、だって……」
指で膝の上に丸を描く姿は子供の時なら可愛かった。
だが、成長した今ではどうか。いくら見目が極上の部類に入るとはいえきついものがある。それがこの国、ブラッドフォード王国の王太子サマならなおさら。
口をへの字に曲げ、不服だということを顔中で表現しているこの青年・マクシミリアンこそ、美夜が二年前、十五年間にも渡る異世界生活に終止符を打ったはずの王国の次期国王となる男であるというのだからこの国の未来が怖い。
美夜はもう一度ハァと深い溜息をついた。




