夜の新幹線
三十路から五十を過ぎていく男には、若さが死んでいくにおいがする。
つんとすえて漂う。
ぶち落ちる一歩手前、高層ビルの屋上でかなでる断末魔のように。
生への執着にみちみちた獣のくさみ。
ああ、この男も死んでいく。
狭いフロアをひとまわりすると、私は宗教家になる。クレーム対応をする男、走り回る男、窓際に座ったまま生返事を繰り返す男、太い腕をくんで仕切りたがる男。夜の新幹線に乗ればそこらじゅうにいて、だが幼い時分に新幹線に乗ったときには決して気づかなかった。ポテチを喰らい、ご褒美の缶ビールをテーブルに並べて時折スマホをいじり、そうして脇から体から頭からのべつなしに死をにおわせて走る大人たちの姿。
ちっぽけな空間、魂の棺桶。