宇宙から還りし王第8回キメラ怪獣アゴルフォスは山稜王の命令に従わず、ケインを殺そうとするが 、ケインの前に山上宮殿に通ずるサンズの川が出現。いやいやながらアゴルフォスは 船を操る。
宇宙から還りし王(山稜王改題)第8回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
声は続ける。
「他人の過去をとやかく言うではない」
アゴルフォスは空の方を向いて答えた。
「でも、山陵王、こやつは、」
「いいんだ、その人は、私から小説の原稿をもらうためにこられた方なの
だ」
声はケインヘの質問に変っていた。
「そうだね、ケイン君」
ケインはその声に圧倒され、答えている。
「そ、そうです。あなたが山陵王なのですか」
「でも、山陵王、こやつの正体は」アゴルフォスが横から口を入れ
ようとした。
「やめろというのだ、アゴルフォス」
突然、空が曇り、稲妻が走った。
大きな音がする。
何度目かの稲光りが、ケインの目の前におちた。
アゴルフォスの体が白熱する。
「ぐわっ」
アゴルフォスは前のめりに倒れる。体は黒こげになっている。が
しばらくして顔をあげる。
「山陵王、な、何をなさるのですか」
「お前が、私の命令に従わないからだ」
「が、こやつは、山陵王の秘密をねらっております」
「だまれ」
怒りの声は、アゴルフォスの体をふるえさせた。が山陵
王の姿はまったく見えないのだ。
先刻よりも大きな光が、アゴルフォスの体を包んだ。
「わかった、アゴルフォス、私の命令は絶対なのだ」
アゴルフォスは身動きしない。
ケインは今度こそアゴルフォスが死んだかとも思った。
「さて、ケイン」
声はケインにしゃべりかけてくる。
「お前は、私の原稿が必要なのだな」
「そ、そうです」
「ケイン、その船に乗れ」
ケインの前に、突如、川が出現している。
その川は山の中央部にむかって流れていた。迷流しているのだ。その川の岸にある小船を
声は示しているようだった。
「この船は一体」
「この「黄泉の川」を辿って、私の山上宮殿に辿りつくための船だよ。
「夢想船」とも言う。舵はアゴルフォスがとる」
「では、この船であなたの元へ行けるわけですね」
「そういう事だ」
ケインは船にのった。
ケインにとっては初めて体験する密林の川
なのだ。が彼は今、ロケットの内部にいて、機械類に包まれている
ような幻想を感じた。
安心のせいだろうか、ケインの眼じりが重くなる。警戒心があれ
ば、眠れるわけなどないのだ。がケインは船の中に横たわる。上か
らアゴルフォスが言った。
「安心しろ、ケイン、山陵王がああ言われる以上、山上宮殿までは
安全だ。我輩はお前を攻撃はしない」
アゴルフォスはにやりと笑ったように感じた。それがケインの意
識が最後に見たシーンだった。
「これから、精神攻撃が始まるのだよ、ケイン。君の過去に立ち戻
ってね」
アゴルフォスがほくそえみながら、ケインの寝姿を見てい
た。アゴルフォスは黄泉の川へと船を出した。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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