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宇宙から還りし王第27回■アンバサダー号は、捨て身の人類の船だとわかる。乗り込み員のネイサンだけが取り残される。かれは宇宙空間にいる

宇宙から還りし王(山稜王改題)第27回■

(1978年作品-2020年改訂)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/


「ポール、だめなんだ、艇が操船不可能だ」

 ナノウが泣き出していた。


「ワイラー、ワイラー、俺達を助けろ」

アンバサダー号船長ワイラーからは返事がかえってこない。


「くそっ、本船との連絡もできんぞ」

 探査艇は、ホール内へすべり込むようにすいこまれていく。光点

に近づく。


 光の中心は、、木だった。


いや木にみえるだけだろう。


先刻から聞こえている音源はこの木のようだった。


 がそいつは木に似ているだけで地球上の植物とはまったく異なっ

たものだ。


そいつは急に限石くらいの大きさに膨張した。

探査艇はその木に着艇する。


 「こいつは何だ」

 そのあと、ナノウとポールの絶叫が本船のモニターから流れた。

 「ポール、ナノウ、応答しろ」


 アンバサダー号のコクピットでも騒ぎが。


「だめです。連絡できません」

 「信号もとぎれました」

 「ワイラー船長、アンバサダー号もホールの方へ流されつつありま

す」

 「何だと、誰がエンジンを始動しろと言った」

 「違います。何かわけのわからぬ力に船が引き寄せられているので

す」

 「くそっ、奴らの仕わざか」


 医療班のパト=オブライェンは救助艇に忍び込んでいた。


 

オブライェンは思う。

(もういやだ。なぜ30年間も地球をはなれる決心をしたのだろう。

それにさっきのワイラー船長のしゃべりを聞けば、我々乗組み員は実験材料じゃ

ないか。恒星タンホイザーゲイトが人類に対してどんな反応をするのかの。

俺は逃げてやるぞ。)


 オブライェンは、思いつめて救助艇の発射ボタンを押す。


 が救助艇は、急速にカーブを描き、ホールの方へ吸い寄せられて

いった。


 ワシリー船長は、操作卓のスイッチを押そうとした。

「船長、そのスイッチは自爆スイッチです」


 オペレーターのジャービスが止めようとした。

「わかっている」冷たくワシリー船長は言った。


「なぜですか」不審な顔でジャービスは止める。


「奴らに地球の情報を与えないためにだ」

「奴らですって」


 ジャービスは船長の右腕を押さえていたのだが、ワシリー船長は左腕

のひじをつかって自爆スイッチを押した。


 衝撃がアンバサダー号の船体を襲う。


 ネイサンはショックで気を失しなっていた。


ようやく目ざめる。


いったいアンバサダー号になにが起ったのか、ネイサンは理解して

いなかった。


先刻まで話をしていた人類学者のマーガレットの姿がなかった。


 それ以上に驚いた事に、船内に誰の姿もないのだ。


急いでコックピットに入り、船内の生命反応を見る。ただ一つだけだった。


それは自分自身だ。


ネイサンの生体反応だ。


 アンバサダー号は自動的に動いている。

タンホイザーゲイトのホールヘ向かい直進していた。


 もうホールは目の前だ。衝撃が再びあり、ネイサンは床にたたき

つけられた。


アンバサダー号もタンホイザーゲイトのホールをくぐったのだ。


 ネイサンは自分の体がアンバサダー号をつきぬけて、


宇宙空間の中に浮んでいるのに気づく。



(続く)

■宇宙から還りし王(山稜王改題)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

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