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宇宙から還りし王第10回ラシュモア山に住む麻薬王リャンの宮殿を乗っ取ったのは、 宇宙から帰ってきた男、ネイサンだった。

宇宙から還りし王(山稜王改題)第10回

(1978年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/



自分の眼をこすってみた。ありえない。最初は幻かと思

った。

がその男は、まぎれもなく存在していて、リャンの宮殿の方

へと歩を進めていた。


 部下達が、その男を制止しようとするが、逆に部下の体が静止し

て動かなくなる。

 見ている内に、男はもうリャンの横たわるベッドの前に立っている。


 見知らぬ男は長身で、その眼は冷たい湖を思わせた。


 「今日から、私が山陵王だ。リャン、ここを立ち去れ」

 「何だと、笑わすな、誰かはしらんが、俺に対して冗談を言った瞬

間が最期だと思え。ところで、お前、どこからここまで辿り着いた

のだ」

 男は空を指さす。


 「上からやってきた」

 「空からだと」

リャンは笑いころげる。


 「お前は何さまのつもりだ。第一ここラシュモア山には、どんな飛

行物体も近づけるわけはないのだ」

 

「が現に私はここにいる」

 「だから不思議なのだ。お前は何者なのだ」


 「だから、先刻から言っている。山陵王だと」


 「もう、お前のおふざけにはつきあっておれん、こやつをとらえろ」

 部下は侵入者を取り押えようとする。

 「やめろ」

その男は叫ぶ。手下たちの体は勤けない。その男の言葉

が頭の中でトゲの様につきささり、その声で命令を受けているよう

なのだ。


 「リャンを葬れ」

その来訪者は皆にむかって言った。手下達はその

言葉を夢見ごこちで聞き、言葉に従おうとする。

 リャンはあわてて

「こら、お前達は何を考えている。俺は山陵王、敵はあやつだ」


 「むだだよ、リャン、君の山陵王としての役割は終りだ。今日、こ

の日から、私が君にかわり、山陵王となるのだ」


 リャンは侵入者の顔をやっと思い出した。

 「お、お前の顔は、ニュースで見た事がある」

 「記憶がいい男だね、リャン」


 「お前はネイサンだな、お前ら、こいつは犯罪人なのだぞ」


 リャンの言葉はあとが続かなかった。リャンの体は手下たちによ

ってなぐられ、けられる。今までのリャンの圧政に対する報復なの

だ。リャンに対する反発や怒りが集中されていた。しばらく後リャ

ンの体は骨がくだけ、皮膚は破れている。


 「リャン、静かに眠りたまえ」


 ネイサンが言った。リャンは夢の中にいる気分だ。


夢の中でリャンの姿は子供になっていた。故郷の花畑の中で遊んでいる。リャン

は考える。


一体、俺の一生は何だったのだ。


その時、ネイサンのとどめがリャンの心臓を直撃し、リャンの意識を闇が包みこんだ。

(続く)

■宇宙から還りし王(山稜王改題)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

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