オデッセウス再び
???????
うわっ!!!
何だ? 何処だここ?
いきなり真っ暗な場所に放り出された。
気のせいかなんか音が変だ、なんだ?
空は暗い、夜みたいだ。
なんか、微妙に夜空がなんかおかしい……
辺りは一面砂漠みたいだ、何も無い。
『ど、何処なんだここ……』
『月だな』
『は?』
『だから月だよここ』
『は?』
『だからオマエらが月とか呼んでる地球の衛星だ』
『月、月ってあのお月さんか?』
『ああ、そのお月さんだ』
確かに言われてみればなんかテレビで見たことあるような景色だ。
『空気とか呼吸とかどうなってるの? 俺ら大丈夫なのアトさん?』
『空気? アホかオマエは、エピゴノス乗るたびにオマエの身体は原子より細かいエネルギーに分解して再構築されてるんだぞ、ちなみに今も厳密には呼吸とかしてないから』
『は? マジで、え? 毎回俺の身体バラバラにされてるの?』
『うん』
『うん、じゃないよ!!!』
ああああああいいいいやあああああ、アトさん黙ってそういうのやるのやめてええっ!!!
『しかし、まあ見事にハメられたな』
『ううううっ』
くそう、もっと警戒すれば良かった、てかペトロさんの目的は何なんだ? 月なんかに飛ばしてもアトなら簡単に帰れそうなんだけど……
『!? 伏せろ!!!』
『え?』
突然アトに袖を引っ張られる。
―――バッ!!!!!―――
何だ?
エピゴノスのすぐ近くで爆発が起こった。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!―――
『チッ! 流石に同じ奇襲は効かないか』
『そ、その声は!』
あの時は月をバックにそれは浮かんでいた、今回は地球をバックに浮かんでいる。
『久しぶりだな白いの!』
『オデッセウス!』
この、くそ忙しいのに次から次へと、連戦じゃねーか!!!
オデッセウスの機体は前回とは姿が変わっていた。
前回は下半身が無く上半身だけグルグルに包帯で巻いたような格好だったが、今回は下半身も付いている。
さらにその身体を光る輪が包んでいる、モニターにはペネロペとか呼ばれていた女性も映っていた。
『ずいぶん姿が変わってるな』
『ふん、姿だけじゃないぜ』
オデッセウスがそう言うと機体の周りにある光る輪が高速で回り始める。
『げっ、あれは!』
『!?』
アトさんが珍しく『げっ』なんて言い出した。
アトさん、『げっ』なんて言うんだね……
『驚くのも無理は無い、この間男の弓に宿る力は創造の神から授かった力、この銀河を四度破壊出来る程の力だからな!!!』
ぎ、銀河を四度破壊出来る力って!?
おいおい、そんなの食らったらエピゴノスでもひとたまりも無いだろ……
『いや、あの、間男の弓って、間男ってあの間男か?』
『これは私が生前長旅から帰郷したとき、我が妻ペネロペに求婚していた愚か者共を射殺した弓、そしていまは神の力が宿りし必中の弓! 因果を逆転し必ず当たる矢が放たれる!』
俺の質問にオデッセウスは誇らしげに答えた。
厳密には間男では無いような気がしないでもないが……下ネタ系多いなほんと。
なんか今回静かだなと思ったら、ペネロペと呼ばれた女性はオデッセウスの背後でずっと何か呪文を唱えているようだ。
『分かった、オデッセウス、今回は降参だ』
『え?』
なんかアトさんが突然降参しだした。
おいおいおいおいおいおいおいおいアトさんなんだって!!!
『ちょ、アトさん! 早すぎない?』
―――少し時間を稼ぐ、黙れ―――
『!?』
アトはオデッセウスに聞こえないようにテレパシーで直接語りかけてきた、アトさんほんとなんでも出来るな。
『それは受け入れられないな』
『むう、やはりか、そこをなんとかコイツだけでも見逃してはくれまいか?』
『駄目だ、創造の神から下された命はオマエ達の抹殺だ、残念だが中央値の少年も見逃すわけにはいかない!』
『そうか、残念だ』
なんだ? アトさんの首の辺り、黒いスジが、チョーカーみたいなものが浮き出てきた……
『さあ、無駄話は終わりだ! 創造神の敵! 世界の破壊者! さらばだ!』
地球をバックに矢を構えるオデッセウスはまるで地球の守護神のようにも見える……
『フン……』
『アトさん!!!』