飛べ、38万キロの彼方へ
『ペトロ! 海藻の鎖が! 何かの干渉を受けている!』
『なんだと? もたんか?』
『すまん、破られそうだ!』
『ソーニャの相手をしていたら時間を食ってしまったな』
アトが海藻の鎖を解除しているのか?
ソーニャさんが時間を稼いでくれたおかげで、なんとかアトが間に合うかもしれない。 ソーニャさんの死は無駄では無かった!!!(たぶん死んでないけど)
デウッサーデがこちらに向き直る。
うお、マズイ!!! アトさん早く!!!
デウッサーデはカミナリの様な槍を構えてこちらに向かってくる。
『それでは白き龍エピゴノス!! さらばです!!!』
あ、あかん! アトの解除が間に合わない! こうなったら一か八か!!!
俺は鉄パイプを手離す。
『!?』
ソーニャさんに教えてもらった技を!!!
―――意識を鉄パイプに集中する―――
『これは!』
鉄パイプは弾丸の様にデウッサーデへと向かって行く。
『くっ!!!』
―――ガッ!!!―――
『操剣術か!』
よし! 上手くいった! サンキューソーニャさん!!!
『くそ、調査ではタダの学生の筈だが!』
操作した鉄パイプでデウッサーデと斬り結ぶ。
―――ガッ!!! ガッ!!!―――
結構疲れる、神経めちゃくちゃ使うなこれ!! 長時間は無理だ!!!
『ハア、ハア、ハア……』
突然のオート鉄パイプに動揺したのか戸惑っていたペトロさん、だが何度目かに斬りかかったときに鉄パイプをあしらわれてしまった、しょせんこっちは素人だ。
『ふっ、基本が出来ていませんな』
『くそっ!!!』
少しだけ時間が稼げたがこれはもう駄目かも……
『アト! まだかよ!!!』
『おいよ』
『アト!!!』
アトが螺旋階段から降りてきた。
『向こうであの海藻切ってきたわ』
アトはそう言いながら螺旋階段の上を指差す。
『ヨッシャ!!!』
自分に絡まっていた海藻の様なものがボロボロと崩れだした。
『すまんペトロ、ここまでが限界だ』
ナタナエルさんが操る海藻が崩れ落ちてゆく。
『くっ、解除されたか』
『うし! これなら!』
俺はすぐさま鉄パイプを呼び戻しデウッサーデへと斬り掛かった。
『やっとマトモに戦える!』
『このデウッサーデのケラウノスならば!!!』
―――ガキン!!!!!!―――
エピゴノスとデウッサーデで鍔迫り合う。
『ふふふ、やりますな白き騎士殿』
『そっちこそ!!!』
―――ガオン!!!!―――
『ペトロさん! あんたには悪いけどデシメーターもまだいる! 早めにケリつけさせてもらいますよ!』
『舐められたものですな!』
―――ガキッ!!!!!―――
『何!?』
デウッサーデの武器にヒビが入る。
『馬鹿な!? ケラウノスが!』
『アトの剣は気合いを入れればなんだって切れるんです!』
さっきの海藻は切れなかったから半魚人の相当凄い技なんだろう。
『そんな出鱈目な! クソ!』
デウッサーデはエピゴノスと距離を取る。
『出でよ、アイギスの盾!』
デウッサーデの前方に半透明の盾の様なものが出現する。
『ギリシャ最強の盾ならば!』
『次から次に無駄だと思いますよ』
デウッサーデがさらに距離を取ろうとするのを追い詰める。
『おのれ!!!』
『ハア!!!』
―――ザウッ!!!!―――
デウッサーデが振るうケラウノス、そしてアイギスの盾ごとアトの剣は切り裂いた。
『これで終わりです』
『くっ、やりますな、だが!!!』
『!?』
切り裂いたデウッサーデがなんだ?
真っ二つになったデウッサーデから円状に何かが広がっていく。
『ナタナエル!!!』
『ああ!』
デウッサーデが手を伸ばした先にはアレスティーナが、なんだこの手際の良さは?
モニターにはデウッサーデからアレスティーナへと乗り移ったペトロさんの姿。
『贄だ』
『贄?』
『最強の添柱を一体そのまま捧げる大転移魔法……』
魔法! 罠か! なんかトントン拍子で行くと思ったら!!!
『アト!』
『無茶言うな、残念ながらもう間に合わん』
『飛べ、38万キロの彼方へ』
デウッサーデの姿が完全に消え、円形に広がったフィールドに飲み込まれる!!!
『ゆ、裕也様?』