デシメーター海の民!!!
メルカート・トリオンファーレ。
バチカンから少し北に向かった所にある市場だ、ソーニャさんがそこを案内してくれるというので来てみたのだが……
『なんでも欲しいものとか食べたいものがあったら言ってね、ゆうやちゃん』
とかなんとか始めは言っていたソーニャさんだが、市場に入ると俺そっちのけで買い物してる。
『あ、あ、あ、あああああ、この無花果のチーズめちゃ美味いにゃーーー』
チーズ屋さんに来たんだが、ソーニャさん試食のチーズ全部食べてもうた。
『こっちのクルミチーズも美味ーーーー』
『あの、ソーニャさん試食っぽいの全部食べていいんですか?』
『いいの、いいの、気にしない気にしにゃい、いつも沢山ここで買ってるから』
『そうですか』
『ゆうやちゃんも食べる?』
『いや、自分はいいです』
なんかソーニャさんの相変わらずな食べっぷりを見ているだけでお腹一杯だ。
となりの茸屋さん? にはボルチーニ茸とか売ってる。
ボルチーニ茸のパスタ美味いんだよなーーー。
けど100グラムで10ユーロかあ、日本よりは安いけどやっぱ結構するなあ。
買っていってアトにボルチーニ茸のパスタでも食べさせてやろうかなあ、けどあいつ茸の味とか分かるかなあ?
などと考えていると遠くから土煙を上げて何かが近づいてくる。
何だ?
? マリアか、あれ?
凄い形相だ、なんかあったのか? また新たなデシメーターが出たのか?
こちらが身構えてるとマリアは目の前で急停止した。
???????????
『どうしたマリア?』
マリアは固まったまま天を仰いでいる。
―――よく考えたらコイツに何て言えばいいのよ―――
『おい、マリア、どうした?』
そのまま3分くらい過ぎただろうか、マリアはすんごい汗かきながら口を開いた。
『お、おはよう! 今日も良い天気ね!』
『お、おう、おはよう』
なんなんだこの人。
『と、ところでなんだけど、昨日は迷惑をかけたみたいね』
『昨日? ああ、店でオマエが酔い潰れたやつか』
『そ、そ、そのようね、ところでアンタ、私に変なことしなかったでしょうね?』
『変なこと?』
『そう、変なことよ』
マリアはかなりバツが悪そうだ。
『別に変なことなんかしてないが……』
『本当? 変なとこ触ったりしてないでしょうね』
『うーーむ、まあ背負うときにお尻やら胸は触ってしまったと思うが仕方ないだろ、あれは』
マリアは顔真っ赤だ。
『な、な、な、やっぱひ、私のいろんなとこ触ってんじゃない』
『けどあの状況ではしょーがないと思うにゃあ、私も見てたけど、ゆうやちゃんも必要以上に触ったりはしてなかったから許してあげてほしいにゃマリア様ーーー』
『オマエも見とったんかーーーい!!!』
マリアのアッパーカットがソーニャさんに炸裂する。
あっ、ハムが!!!!
ソーニャさんがまた試食で貰ったであろうハムが宙に弧を描く。
『ハッ!!!』
すかさず体勢を立て直しソーニャさんはハムを空中で咥え直した。
『ふう、危なかったにゃあ、モグモグ』
マリアは怒りでフルフル震えている。
『みんなでなんなのよ!!! いい加減にしなさいよ!!!』
むう、確かに、先ほどのソーニャさんの口ぶりだと、どうやら何か仕組まれていたようだな。
『まあ、マリア落ち着けって、とりあえず謝るよ、勝手に背負ったこと、なっ』
『何よ!!!』
『てか、俺もオマエに言いたいことがあったんだよ』
『は?』
なんかマリアめっちゃ驚いてるな。
『な、な、な、何よそんな改まって』
なんかマリアはモジモジしとる。
『その、何というか、あんまり気を張りすぎなくていいと思う』
『???』
『俺もオマエのことは出来るだけ手助けしようと思ってるから、その、デシメーターを倒す事とか、あんまり一人で背負なよ、だから』
俺は右手を差し出した。
『何よ、握手?』
『そう、とりあえず、謝るし、仲直り、そしてこれから協力する時は握手するもんだろ?』
『まあ確かに、アンタもヤコブ達にハメられたみたいだしね……ふん、変なの、まあいいわ』
マリアは渋々右手を差し出した。
そして俺とマリアが握手したその時だった。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
『何だ?』
空が、何だ? この雲は?
赤い雲?
今まで快晴だった空に突然赤い雲が……
そして確か昼前だったはずだが太陽の位置がおかしい、日が沈みそうな高さにある、突然数時間進んだような感じだ。
『ああああ、これは、ザ・ヒストリーの予言にある雲……』
マリアが空を見上げ虚ろに呟いた。
『ザ・ヒストリー? マリア、なんなんだこのおかしな感じは!!!』
『デシメーター……』
『!?』
『あ、現れるんだわ!!! ついにヨーロッパのデシメーター、本体が!!!』
『デシメーターの本体?』
『そう!!! その名!!! デシメーター海の民!!!』