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イキナリタマ取りに来たわね!

挿絵(By みてみん)


『ゆうやちゃん』

『?』

『ゆうやちゃん』

『?』

『ゆうやちゃん』

『???????』

『うわ!?』


 何というか起きたら目の前がソーニャさんだった。

 うん、そうとしか表現出来ない程近い、視界の90パーセントくらいがソーニャさんで埋め尽くされている感じだ。


『わわわ、ソーニャさん! 朝からどうしたんですか?』

『いやーー、あのーーミコトに頼まれたのにゃん』


 ソーニャさんはいまだ距離を保ったままだ、近!!!


『た、頼まれた? 何をですか?』

『特訓』

『特訓? な、何の?』

『その、何というか、性教育の、ポッ』

『ポッじゃないでしょ! 嘘を付くな! ミコトさんがそんなこと頼む訳ないでしょが!』


 近くにあるのでソーニャさんの頭をグリグリやる。


『あだだだだだっだだ、ハイ、すみません、嘘ですにゃん』

『だから、本当は何の特訓するんですか?』

『剣です』

『剣?』

『だから剣術』


 ソーニャさんは心底つまらなそうに言った。


『剣術かあ』


 ミコトさんらしい、確かにエピゴノスの鉄パイプはめちゃくちゃ凄い切れ味だけど、自分の剣術が上達すればより強力になる。


『ミコトから五皇の剣術を教えるように頼まれたので、アンダーノアのサン・ピエトロ広場で練習するよん』

『了解、今すぐですか?』

『そう、ソーニャちゃんもこう見えて忙しい身なのにゃ』


 ソーニャさんはいつの間に取出したのか、木刀を肩に担いでトントンやりながら答えた。


挿絵(By みてみん)


 アンダーノアは12使徒さん達以外にあまり人はいない、だからサン・ピエトロ広場にも人は全くおらずただガランとしている。

 まったく人の居ない広場にカンケール達の駆動音がかすかに響くだけだ。

 広場中央で木刀を持ったソーニャさんと対峙する、ソーニャさんは木刀をこちらにほいっと投げた。


『まずはそれで適当に打ち込んできてにゃん』


 ソーニャさんから渡された木刀は硬い、本当によくあるただの木刀だ。


『いいんですか? これで殴ったら相当痛いですよ?』

『いいよん、気にせず打ち込んで、たぶん一発も当たらないから』


 ムムム、いやいや、流石に受け流されるかもしれないが少しは当たるやろ。


『ほんじゃ行きますよーーー』


 俺は木刀を構える。


『はーーい、いらっしゃーーい』

『ハァ!!!』


 まあなんちゅうか、ソーニャさんにダッシュしながら木刀を振り降ろす。

 勢いよく木刀は空を切った。

 ソーニャさんは最低限の動きで俺の打ち込みを躱す。

 うわ、本当にかすりもせんな。

 横に薙ぐのはどうだろうか?


『せい!!!』


 これもソーニャさん、ニョホホほほとか言いながら軽やかに躱す。

 うわ、本当に当たらん、というか、どうやって躱されてるのか分からん。

 木刀を振った瞬間視界からソーニャさんがヒュっと消える。


『本当に当たんないですね』

『でしょ? でしょ?』

『けど、こんなトレーニングでいいんですか?』

『いや、これまあウォーミングアップだから』

『え?』

『この打ち込みを30分やって貰うにゃ』


 30分! 結構キツイな。


『それで程よく身体のチカラを抜いて、そっから本番にゃ』

『ううう、ハイ』


 まあ滅多に無いトレーニングだ有り難くやらして貰おう。

 それから30分ほど延々とソーニャさんに木刀を打ち込む。

 30分、何回木刀を打ち込んだだろう? 一発もソーニャさんにはかすりもしなかった。


『ハア、ハア、ハア、ハア、ソーニャさん凄いっすね……』


 ソーニャさんはヒラヒラニョホホ躱しながら息一つ上がってない。


『そう? これくらい使徒なら当たり前にゃよ』

『そ、そうなんだ……』


 何というか根本的にミコトさんとかソーニャさんは、俺とやってきたことがが違うんだろうな。


『ここに拾われてからは毎日8時間、10年以上なにかしらの訓練してるからにゃーー』

『はははは、そりゃ当たらんわ』

『じゃ、今度は私が打ち込んでみようかにゃ?』

『え! それはこちらが受けるってこと?』

『そうにゃりよ』

『そんな、ソーニャさんの打ち込みなんて、俺じゃうまく捌けませんよ』

『まあまあ、ゆうやちゃん構えて』


 ソーニャさんに言われ木刀を構える、たぶん全くサマになってないと思うが。


『それではいくにゃよ!!!』

『仕方ない! よっしゃ! こいや!』


 さあこいや! 避けるのは無理でもなんとか木刀で触ってやる!


『チェストーーーー!!!!』


 そうこちらが息を巻いてると突然後頭部に衝撃が走った。


『ウぐっ!!!』


 なんだ? ソーニャさんは全く動いていない、振り向くと空中に木刀が浮いていた。


『な!? 何なんですかこれ!!!』

『アハはははは、ごめんにゃ、それが五皇の剣術、操剣術なりよ』

『ソウケンジュツ?』

『基本的にデシメーターと戦うときは、四方八方360度に気を向けないといけない、こちらの攻撃も360度に展開したものを考えなければいけないのにゃよ』

『てことは、今みたいに後ろからいきなりバッサリとかも想定しなきゃいけないのか……』

『そうなり、そうなり』

『そんな無茶な』

『さてと、それではこっから本番、程良く疲れたでしょ?』

『ハイ、正直かなり疲れました』

『じゃ、今の操剣術やってみようか?』

『だから、いきなり無理では?』

『まあ、まあ、とりあえず地面に木刀置いてみて』

『……………………』


 一応ソーニャさんに言われたとおり地面に木刀を置く。


『えと、ここからどうすれば……』

『うーーん、なんというか念じるんにゃよ』


 んな、念じて動く訳ないでしょ。


『いや、あの、えーー、無理ですよソーニャさん』

『まあまあ、暫くやってみるにゃよ、エピゴノス呼ぶみたいに!』


 確かに、エピゴノスは俺が心で念じて呼べば現れる、あの要領かあ。

 けどあれはアトが俺に与えた能力であって、特訓とかして得たものじゃあ無い。


『うううう』


 地面に置いた木刀を見つめ、唸る。

 動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け。


 ―――シ――ン―――


 うーーむ、やっぱり動かない。


『プハーーッ、ソーニャさんサッパリ動かないよ』

『はははは、そりゃそんな簡単に動かないにゃよ、ちなみにソーニャちゃんはこの訓練150日くらいやって初めて木刀がピクっときたから、まだまだ初日だにゃ!!!』

『ひゃ、150日!!!!』


 ソーニャさんほど鍛えてきた人が150日もかかったのか、ひえーー、気が遠くなる。


『けどゆうやちゃんはエピゴノスと既に繋がってるから、そんなに時間はかからないと思うにゃよ、それでも一月くらいはかかるかニャーーー』


 ソーニャさん、この訓練結構長期間やるみたいだな……


『ううう、時間の許す限り頑張ってみます……』

『そうだね、それではまた唸ってみるにゃ!!!』


 しかし本当にこんなの動くのかな? エピゴノスにも乗って無いのに。


『なんだ、なんだ? おい、何をやっているんだ?』


 ソーニャさんに言われ木刀を見つめながら唸っていると、何処らとも無くアトが現れた。


『あ、アトさんおはよう』

『うむ、おはよう』

『アトにゃん!!!』


挿絵(By みてみん)


 ソーニャさんはすかさずアトに飛びつき頬ずりする。

 アトはもうこのやり取りに慣れたのか、頬ずりされたまま俺に話しかける。


『何をやってるんだお前は?』

『いや、ソーニャさんに剣術の訓練して貰ってるんだよ』

『剣術って、木刀見つめて唸っとるだけにしか見えないが』

『その何というか、念じて木刀を動かす訓練とか何とか』


 アトはゼロ距離にいるソーニャさんに話しかける。


『操剣術か?』

『流石アトちゃん!!! そうそうなる操剣術にゃ!!!』

『ふむ……、おい』

『なんだよアト』

『これを使え』


 アトがそう言うと目の前に鉄パイプが降ってきた。


『エピゴノスに乗ってるときの鉄パイプか?』

『そうだ、どうせなら本番で使うモノが良いだろう』

『おおおおおおお、助かるにゃん』

『サービス終了だ』


 アトさんはそう言うとソーニャさんの腕の中から少し離れた所にワープした。

 ソーニャさんは渋々始めの位置に戻る。


『おい、鉄パイプを動かす意識は止めて、エピゴノスを動かすつもりで動かしてみろ』

『エピゴノスを?』

『そうだ、エピゴノスの中にいる状態をイメージしてみろ』


 うーーむ、俺は瞳を閉じ、エピゴノスの中にいる状態をイメージしてみる。

 暗い、赤い地平線、光る鉄格子、白い螺旋階段、イメージの床に鉄パイプを置いて念じる。


 ―――動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け―――


 俺の勝手なイメージ。

 螺旋階段の部屋の中、鉄パイプが跳ねる。

 鉄パイプは空中に舞うと赤い地平線に向かって猛スピードで飛んで行った。

 まあ、あくまでイメージなんだけど……

 瞳を開けて、現実世界の鉄パイプをみる。

 あれ? 鉄パイプが無い。


挿絵(By みてみん)


『あああああああああああああああああああ』


 ソーニャさん?

 視線を上げソーニャさんを見る。

 見れば鉄パイプは、ソーニャさんの後ろに建っているデカイ柱に深々と突き刺さっていた。


『はわわわわ、あっぶなあ! イキナリタマ取りに来たわね! ゆうやちゃん!!!』

『あわわわわ、すみません、目を開けたらいつの間にかこんなことに』

『ふん、もう少し右だったな』

『もう少し右は死ぬにゃ!!!!』


 アトは舌打ちしてる。


『というか、ゆうやちゃん才能あるとかのレベルじゃないにゃよ、もう無茶苦茶、嫉妬する気にもならないレベル』


 ソーニャさんはそう言うが、木刀じゃなくてエピゴノスの一部ならそら動くわ。


『ミコトに暫くシゴいて欲しいって頼まれたけど、初日でクリアされてしまったにゃーーー』

『じゃ、もう訓練は終わりなんですか?』

『まあ、これ以上は剣術の基礎からまたやらないといけないだろうし、正直、柱神の操縦はすでに同等のレベルな気もするにゃ』

『そうなんだ』

『本当は柱神で神器を動かすほうが木刀を動かすよりずっと難しいにゃよ、生身で木刀動かせるようになって、さらに柱神で訓練してやっと柱神に乗った状態で操剣術は使えるんだにゃ』


 ふーーん、自分の場合は順序が逆なんだな。


『じゃあこれからどうします? 今日は訓練終了?』

『うーーん、なんか特訓するのも馬鹿らしくなってきたので地上を観光案内するにゃよ』


 その後朝食を取りソーニャさんと共に地上へと移動した。

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