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久しぶりのダンジョン攻略

挿絵(By みてみん)


 ドイツ、レーゲンスブルグにあるノイプファル広場。

 広場には観光客が多く集まる。

 お嬢様から仰せつかったように、地元の警察に頼んで規制線を張って貰いその中に建てられたテントに入る。


『久しぶりのダンジョン攻略なので充分注意するように、徳重はメイン装備を忍者でサポート装備を僧侶でお願いね』

『はっ、承知いたしました、お嬢様はいつも通りメインをサムライでサポートを魔法使いでしょうか?』

『はい、いつも通りで』


 相変わらずミコトお嬢様は火力重視だ。

 サポートの役割は一通りこちらでこなさなければ、宝箱の処理などご自身でなさるつもりは無いようだ。


『それでは行きますよ』

『はっ』


 お嬢様が両手をパンッと合わせる。


挿絵(By みてみん)


 結界を破ると辺りはすでにダンジョンの中になっていた。

 相変わらずお見事。

 ダンジョン内は視界が確保できるように薄暗く壁自体が発光している。


『親切なことですわね、このシステムを考えたデシメーターは遊びが過ぎますわ』


 確かに、通常ならイキナリ真っ暗な洞窟に放りだされてもおかしくはない、だが何故かデシメーターが造るダンジョンは大昔のコンピュータゲームのようにキチンと整備されている、ダンジョン内壁などはまるでエジプトにある神殿のような造りだ。


『一応このダンジョン特有のアイテムもあるでしょうから、それらを集めながら進みましょうか』

『ダンジョン攻略の基本、右壁沿いに一周してマッピングですなお嬢様』

『そうですね、あらあら、さっそくですわ』


 ――――グルルルルるるうるるぅぅうううう!!!―――


 隣のフロアあたりから低いうなり声が聞こえる。


『最上階フロアならまだ低レベルでしょうし、徳重、チャッチャッと片付けてしまいましょう』

 お嬢様は草薙剣を抜く。

『承知』


 さてさて、久しぶりのダンジョン攻略なのでまずは軽くカシナットの剣で体を慣らすとしようか。

 しかしこのカシナットの剣、威力はもうしぶんないのだが、ミキサーのような形状からして携帯しにくいのが難点だ。


 ――――ギュイーン!!!――――


 私はカシナットの剣を抜いて暗いダンジョンの奥、ギラギラと光る瞳と対峙した。


挿絵(By みてみん)


 お嬢様とダンジョンに入ってからもう5日くらいは経っただろうか?

 デシメーターの造るダンジョン内は外と時間の流れが違う。

 恐らく外では1日も経っていないはずだ、すでにここはダンジョン40階になる。

 30階あたりで手に入れた全体マップには、50階までの記載があるので残りは10階くらいか……

 もしかしたら隠しエリアがあるかもしれないが。


『徳重少し休憩します、結界を』

『はっ』


 苦無をダンジョン通路の5メートル四方四隅に打ち込み簡易的な結界を張る。


『しかし思い出しますなあ、お嬢様と初めて一緒に入った足柄山のダンジョンを』

『懐かしいですわね、あの頃はまだ10歳、まともな装備も父から支給されず苦労しましたね』

『旦那様はスパルタでしたからね……』

『しかしほとんどの装備を現地調達はあり得ませんわ、旧日本軍じゃあるまいし……』

『草薙剣もまだ拝領してませんでしたしね……』

『先に休みます、見張りをお願いしますね』

『はっ、かしこまりました』


 携帯食と軽く水分を取りお嬢様はそのままスヤスヤと寝息を立てられる。

 熱の出ない魔力の光がゆらゆらと辺りを照らす。

 30分程経っただろうか2つ先程のフロアにモンスターの気配を感じた、こちらに近づいて来ているな。

 ふうむ、移動音から察するに大型のデーモンタイプ2体といったところか……

 結界の中、お嬢様は未だ眠ったままだ。


『熟睡は信頼の証……』


 身体もこなれてきた、モンスターの首を刎ねる確率も上がっている、もはや装備は素手で充分だろう。

 結界に何かあればすぐさま自分に連絡が入るように細工をしておく、さて、お嬢様はあと1時間程休憩されるだろうから、それまでにコーヒーを淹れなくては。


挿絵(By みてみん)


『う、うん』

『おはようございます』

『ああ、おはようございます、徳重、何か変わりはありましたか?』

『いえいえ、何も』

『そうですか』

『お嬢様こちらを』

『ええ、ありがとう、貰うわ』

『…………』

『ダンジョン攻略中、食の愉しみってあなたのコーヒーくらいしかないのよね』

『電磁波で温めてますゆえ、味はそれ程でも……』

『いえいえ、それでも充分美味しいですわ』


 お嬢様は飲み終えると身体を浄化する魔法を唱える。


『さてと、次は徳重が休む番ですわ、私が見張りをしますからお休みなさい』

『はっ』


 ゆっくりと眠りに落ちてゆく中、私のささやかなな楽しみがいつも通り終わってくれたことを、この世界の何処かにいるであろう神に感謝した。

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