来なさいヘルメス!
うん?
あれ、何処だここ?
えーーと、確かナタナエルさんと一緒に列車に乗って、ああ、たぶん俺は疲れて寝てしまったのかな。
辺りを見渡す、先程発車した駅と違う駅に列車は止まっている、どうやら列車はサンタンジェロ城の駅に着いたようだ。
ナタナエルさん?
対面席に座っているナタナエルさんも寝てる。
うーーむ、あちらも相当疲れているのか、かなり忙しいみたいだったし。
相手は女性だから少々気不味いが、起こした方が良いだろう。
『ナタナエルさん、ナタナエルさん』
うーーん、全然起きないな、仕方ない。
軽く肩を揺する。
『う、うーーん』
起きたかな?
『ナタナエルさん起きて下さい、なんか駅に着いたみたいですよ』
『うーーん、はっ!? ひいっ!』
ナタナエルさんは俺の顔を見るなり軽く悲鳴を上げた。
え? なんかおかしいか? 俺? 変な夢でも見てたのかな? なんかちょっとショックなんですけど。
『すみませんナタナエルさん、ここもうサンタンジェロ城なんですか?』
ナタナエルさんは辺りをキョロキョロしている、なんか挙動不審だ、相当おかしな夢でも見たのかな?
『は、はははっは、ハイ、ここはサンタンジェロ城側の駅になります、さ、さあ晩餐会の準備も出来ていますのでこちらへ』
うーーん、なんか変だな……
列車から降りて城内へと案内される、あちらの駅では階段を使って降りたが、こちらの駅にはエレベーターがあった。
普通の近代的なエレベーターに乗り上へと上がる、チンと音が鳴り、エレベーターの扉が開いたときだった。
『あ』
『あ』
『なによ、あんたらこんな所にいたの? 探したじゃないの』
『これは、わざわざすみませんマリア様』
エレベーターの先には少し不機嫌なマリアが立っていた。
『ハッ! ナタナエル、あんたその帽子』
マリアはなぜかナタナエルさんが被っている帽子を睨みつけている。
『ハッ、すみません、あのう、彼の事が凄くその男性として気になって、ポッ』
な、な、な、なんだってーーー!!! そんな! まだ会って数時間なのに! 俺のことが! んな馬鹿な!
『何が『ポッ』よ! 臭い芝居してんじゃないわよ! どうせ変な尋問でもしたんでしょうが!』
尋問? なんじゃそら? けど確かに俺もナタナエルさんもここに着いたとき寝こけてたっけ? もしかしてあのときなんかされたのかな? けどそれならナタナエルさんまで寝てるのはおかしい。
マリアはナタナエルさんから帽子を奪った。
『一応コイツはミコトから預かってるんだから、預かった状態で返さないといけないのよ? 分かる? もし何かおかしなことしてコイツが壊れでもしたらアンタ、ミコトに殺されるわよ』
うーーん、なんか怖い話してるような気がするなあ。
『とりあえずアンタに任せると何するか分からないからコイツは私が預かるわ』
『え? 姫さま、宴の準備が……料理が無駄に……』
『それはスタッフ達で美味しく頂いておきなさい』
マリアはそう言うと俺の腕をグイグイ引っ張る。
『さ、アンタは私と一緒に来なさい』
『一緒って何処に行くんだよ?』
『壊れたマッターホルン治しに行くわよ』
ああ、シモンさんとダダイさんがデシメーターと戦ったときに折っちゃったマッターホルン直しに行くのか。
なんか美味しい物食べれそうな流れだったのに……シクシク。
そのまま強引に腕を引っ張られてエレベーターに押し込まれる。
『今から行くって、ここからマッターホルンかなり距離あるだろ?』
『だから屋上から添柱で行くのよ』
ああ、柱神使うのか、それならたぶん速いわ。
エレベーターの表示が最上階を示し地上のサンタンジェロ城の中に降りる、さらに非常階段みたいなところを通って屋上へ出た。
辺りはもう夕暮れになっている、あれ? ここに来てからそんな時間経ったかな?
『こんな所に柱神呼び出していいのかよ?』
辺りは観光客だらけだ。
『ちゃんと一般人には見えないモードで呼び出すわよ』
あっ、そんな便利なモードあるのね……
マリアはごそごそとなにやら法衣の中から取り出す、小型の刃先が曲がった剣だ。
マリアが屋上で剣を振るう。
『来なさいヘルメス!』
サンタンジェロ城の屋上から見える空模様は快晴だったが頭上から稲妻が降る。
ああ、やっぱこれか、結構デカイ音するから苦手なんだよなあ。
緑色の雷がマリアと俺を貫いた。