赤い地平線!!!!
私は魔力で列車の心臓に火を入れる。
列車の車輪がゆっくりと動きだす。
尋問列車、ハドリアヌスの列車。
かつて地上の権力者達の本心を暴く為に使われた巨大な魔力装置。
この列車の乗客は催眠状態に陥る。
かつての権力者達もみな本心では国のことも世界のことも考えてはいなかったと聞く。
若き日に自分の才能を認めなかった者達への復讐で国を動かす者―――
ただ流されるまま権力に飲み込まれ国を統べる者―――
人間の本心、核というやつは本当に単純だ。
我々には彼らの情報が圧倒的に足りない、だから色々と知らなければならない。
彼があのアトという存在と本当は一体何を考えているのかを。
シンプルな目的を。
ハドリアヌスの列車が走り出して3分程経った、さてそろそろ乗客は催眠状態に入ったかな? 見れば彼、多少フラついている。
サン・ピエトロ大聖堂から隣のサンタンジェロ城まで距離はほとんど無い、車輪は動いてはいるが車体は進んではいない、乗客を催眠状態にしたままこの列車は心の世界を走る。
尋問列車の社内は赤い景色へと変わる、これが乗客の心に入り込んだ合図だ。
さてそれでは手短に済まそう、色々と感付かれてしまうとまずいからな。
私は目の前でコックリ、コックリしている彼の顎をクイと持ち上げる。
『まずはベタな質問から、君の名は?』
彼はフラつきながらも答える。
『……な、ナカジマ、ユウヤ……』
ふむ、大丈夫そうだな尋問列車は効いている、相手が相手だけに効かないかもしれないと思ったが、胸を撫で下ろす。
『何処から来たの?』
『……コマキ…』
『コマキ、情報にあった日本の地方都市だ』
さて、じゃあここから本題。
『アト様に初めて会ったのは何時? 何処?』
『ア、あ、アト……あの日、瓦礫の中、学校で、会った』
ふむふむこれも情報通り。
『エピゴノス、どうやって操縦するの?』
『そ、そ、そ、操縦、身体で、動かして』
操縦方法は柱神とそんなに変わらないみたいね。
『操縦の、そうね、操縦する場所はどうなってるの?』
『操縦、場所は、白い、……、……』
『白い?』
『白い螺旋階段が……』
『白い螺旋階段?』
なんだ? 白い螺旋階段? 操縦席とも思えないし、階段ということは何処かに繋がっているのか?
――――――ガガガガガガガガ!!!!!!――――――
何? この振動?
激しい揺れが車両を襲う。
なんなんだこの揺れは? こんなことは初めてだ、この列車は正確には出発位置から動いてはいない、揺れるはずも無い。
白い螺旋階段の単語が出た途端、車窓の景色が変わった。
先程まで真っ白な世界を走っていた列車、車窓はただ白い光、何も無かった。
しかし今は、車窓には赤い、赤い、なんだ?
赤い地平線!!!!
『これは!?』
暗闇の中、遠く、遥か遠くに赤い地平線が見える――――――
『あ、アト……』
『?!』
催眠状態が解けたのか?
しかもなんだ? 馬鹿な! 車両の速度が上がっている!!!
『とっ、止まれ!!!』
列車の心臓部に停止命令を打ち込むが止まらない! 反対にますます速度は上がっていく!
『なんなんだ……このまま何処へ……』
赤い地平線の向こうから雲が流れてくる……
くっ、意識が……あああ……あああ……




