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鳥籠

挿絵(By みてみん)

 うわっ! また真っ暗だ! 何処だここ!

 って! 初めの場所か!

 うわわ落ちるっ!!


 ドスッ!!!


『いたたっ!』


 いてーーっ! 2メートルくらいの高さから落とされた!


『アトさん! もうちょっとなんとかしてよ!』

『それくらいでガタガタ言うな』


 アトはツレナイ返事だった。

 辺りを見渡すと赤い地平線が見える。

 やっぱり螺旋階段の空間みたいだ。

 そしてアトは自分から少し離れた場所にある、螺旋階段の根元に座っている。


『おーーい! これからどうすればいいんだーー!』


 アトに向かってブンブン手を振ってみる。


『まあこの辺でいいか』


 そう聞こえた瞬間、自分の隣にアトは立っていた。


『うおっ! ワープした!』

『ここは私の中だと言っただろう? 好きに移動することなどたやすいのさ』


 アトがそう言うと床に光輪のようなものが現れる。

 光輪には文字や記号みたいなものが刻まれていた。

 まるで漫画や映画に出てくる魔方陣のようだ。


『その輪の中に立ってみろ』


 アトに言われるままに恐る恐る輪の中に入ってみる。


挿絵(By みてみん)


 輪の中に入った瞬間、青色の格子が床から伸びた。

 そしてそのまま格子はオレの頭上で繋がる。

 ちょうど鳥籠にオレ自身が入ったカタチになってしまった。

 というか牢屋じゃないかこれ!

 思わずアトの方に駆け寄り格子を掴む。


『オオッオイ! アト! なんなんだコレ!』

『落ち着け、それは操縦席のようなものだ』

『操縦席? って言われてもレバーもハンドルも無いぞ?』

『とりあえずそれを離して中央に戻れ』


 しぶしぶ格子から手を離し輪の中央に戻る。


『外の景色を投影するぞ』


挿絵(By みてみん) 


 鳥籠の格子に外の景色が映し出された。

 映っていたのは、アトと一緒に落下した空だ。

 格子の一区画部分にアトが映し出される。


『操縦ってどうやるんだこれ?』

『そうだな……少し鼻の頭を触ってみろ』

『はっ……鼻の頭?』


 またおかしなことを言う。

 なんだか知らないが鼻の先に手を延ばした瞬間、目の前のスクリーンに巨大な手のようなものが映し出された。


『うおっ! なんだこれ?』


 ビックリして思わず身が固まる。

 同時にその巨大な手もピタリと動きを止めた。

 もしかして……

 試しに顔の前あたりで自分の手を開いたり閉じたりしてみる。


 グッパーグッパー

 グーパーグーパー


 それに合わせて画面の巨大な手も開いたり閉じたりする。


 グッパーグッパー

 グーパーグーパー


 うわわわまさか……


『オマエの動きに合わせて動くようになっている』


 試しに左手も顔の前までもってくる。

 やはりスクリーンに今度は巨大な左手がアップで迫った。

 ちょうど顔の前で両手を眺めるカタチでオレはしばらく立ち尽くす。


『さっきの巨人が動いてるのか?』

『そうだ』


 信じられない……

 ゆっくりと顔を上げた先、スクリーンには巨大な両手が映っていた。

 今にもオレを握り潰してしまいそうな巨大な手の平が、青く映る水面を塞ぐように目の前に広がっている。

 なんだろう……

 鳥籠も含めて巨大な手の平が、もう逃げられないとオレに告げているように感じられた。


『ところで、あの化け物と戦えって、この状況からどうすればいいんだよ』

『そうだな……』


 アトがそう呟くと鳥籠の格子区画の一部映像が切り替わる。


『!? あれは!』


 映像には学校を壊滅させたパラボラアンテナともう一体の化け物が映し出されていた。

 アトが言っていたデシメーターという化け物と鎧武者のような巨人が戦っているように見える。


『敵同士なのか?』


 傍から見ている感じでは敵対して戦っているように見えた。


『デシメーターオロチと戦っているのは、どうやらこの地の柱神だな』

『柱神?』

『この国の守り神みたいなものだと思えばいい』

『じゃあ日本を守る神様が、オロチって名前のパラボラアンテナと戦っているのか?』

『そういうことになるな』


 そんなモノがいたのか……

 今日まで神や仏なんて毛程も信じてなかったけど、マジでそんなものがこの世界で機能していたとは!

 普段なら信じられないが、もうこの状況なんでもアリだ!

 今はとりあえず神様に頑張ってもらいたい!

 神道か仏教かキリスト教かイスラム教かヒンドゥー教か、はたまたまったく別の何教かは知らないが神様ガンバッテー!

 ってあれ? なんだか雲行きがあやしい……

 パラボラアンテナのビームみたいなものを切り裂き、剣を突き立てたと思ったらなにもしない……


 あっ……


『あ』


 アトも思わず小さく声を漏らす。

 なんか至近距離でビームをモロにもらったような……

 ズゴゴゴゴゴゴッと音を立てながら倒れた神様にパラボラアンテナが迫る。

 パラボラアンテナの周囲が不気味に発光している。

 またビームかなにか発射するつもりだ。

 どう見てもヤバイだろこれは……


『なんとかならないのか!』

『右手を前に出せ』

『???』


 なんだ? 言われるままにグッと身体の前に右腕を伸ばす。


『いくぞ』

『? いくぞって……どうやって?』

『空間転移で間に飛び込む』


 くっ……空間転移?

 SFとかで出てくるアレか?

 ワープとか瞬間移動とかアレのことか?


『神様とアンテナの間に?』

『そうだ』


 しかしどう見ても今からパラボラアンテナが神様にビームをもう一度発射しようとしているように見えるんだが……


『飛び込んだらビームが……』

『多少痛いが大丈夫だ』


 パチン!


 モニターの中、アトが指を弾く。


 その瞬間、目の前のモニター全体に映っていた空と海がガラスのように砕けた。

 砕け散った空間の向こう側にアンテナの巨体が映し出される。


『マジかよ……』

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