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もしかしてマリア様

挿絵(By みてみん)


 階段を上ると比較的広いスペースに出る、そこから左側に広場を見ながらアーチをくぐる。

 くぐった先にはまたスペースが広がる、なんかデカイ扉が沢山あるな、これ全部入り口なのか?

 マティアさんは開いている真ん中の扉から中に進むようだ。


『こちらフィラレーテの扉からどうぞ』


 促され中に入るとそこには回廊が広がる。


挿絵(By みてみん)


 こりゃ凄い。

 地上のサン・ピエトロ大聖堂をさっきのカンケールで再現しているらしいが本当にこれ、あの蟹で造ったのか?

 テレビやネットでみたことあるような絵画や石像がそこら中に配置されている、十字架の杖を持った聖人やキリストの亡骸を抱えるマリア像。

 自分みたいな絵心も信仰心も無い人間からすると少しこの空間は偏執的にさえ思えた。

 いや本当、天井くっそ高いのに隅っこまで絵やらなんやらで埋め尽くされとるなあ。

 ハッキリ言って全部つぶさに見ようと思ったら時間がいくらあっても足りんなこりゃ。

 俺は口を空けて天井を見上げる。


『ふふふ、ナカジマ様は大変驚いているようですが、ここにあるのはあくまでカンケールの造りしコピーに過ぎません』


 マティアさんは少し憂いを含んだ表情で天井を見上げる。


『人では無いカンケールの造りし言わば魂の無い地上の記録に過ぎませんよ』


 そう言われれば確かにそうなんだか、それでは少しカンケール達が可哀想だな。

 長い回廊をさらに進むとその先には大きな天蓋のような物が見えた、その天蓋の下あたりに人集りが出来ている。


『地上ではあの天蓋の下に初代ペトロの墓があるのですが、ここアンダーノアにはありません、現在は対デシメーターの作戦指揮所になっております』


 対デシメーターか……


『微妙に造りが違うんですね』


 さっきは完ぺきにコピーみたいなこと言ってたが……使いにくい部分は変えてるのかね。


『ハイ、そもそも初代ペトロは教皇などという立場ではありませんでしたし、ここにも地上にも遺骨などはありません』

『なんで地上はここにペトロさんのお墓があることになってるんですか?』

『詳しくは知りませんが、主人が神と契約をなさったときに、そう神に指示されたと伝えられています』

『指示? 結構具体的なんですね』

『ハイ、なんでもキリスト教が世界中に広まるにはその神の細かい指示が大事な役割を果たしたらしいです、実際に行動をしたのは我々の先祖にあたる集団ですが』


 なんか計算された計画でもあったのかな?

 などと話していると天蓋の辺りにたどり着いた。

 人集りは10人程。

 何やら中央には一人掛けのソファーが置いてあり女性が腰掛けているようだ、こんな回廊のど真ん中に一人掛け用のソファーなんて訳分からんな……

 先程話があったマリア様かな?

 しかしマリア様っていうくらいだから、さぞかしおしとやかな美人が座っているに違いない。


 んほほほ、なんか緊張するなあ。


 ソファーの女性はこちらに気が付いたのかスクリと立ち上がって手を振る。


挿絵(By みてみん)


『ミコト! 久しぶり! 元気してた? あれ?』

『???』

『???』


 あっ! さっきの!


『あんた! さっき会った糸目ブサイクじゃない!』

『なっ! お前はさっきの自爆ワンピースじゃないか!』

『誰が自爆ワンピースよ!!!』


 ぐおっ! はっ! 速い! いつの間に俺の間合いに! てか既に首絞められてるんですけど!!!


 ぐえ! またか! この流れ!


 し、死ぬ! くるちい!


『マリア、そこまでです、ユウヤ様にこれ以上の狼藉は許しません、それにしてもいきなりどうしたのマリア?』


 ニッコリとミコトさんは自爆ワンピースに微笑む。


『ハッ! ああ! OK! OK! 分かってるわよ、これ以上手荒な真似はする気無いわよん』


 ミコトさんに草薙剣で静止され、オホホホなんて笑いながら、すかさず自爆ワンピースは俺から離れる。

 この自爆ワンピースもミコトさんの恐ろしさは知ってるみたいだな、助かった、ふう。


挿絵(By みてみん)


『てか、なんであんたここにいるのよ!』

『えーーと、エピゴノス動かしてるの俺だから……』

『なっ!』


 ふふふふふふふふ、自爆ワンピくっそ驚いとるな。

 そして自爆ワンピはフルフル震える指先で俺を指差す。


『ミコト、マジ?』

『マジマジですわ』

『いや、むしろそこは俺がミコトさんに伺いたい! この自爆ワンピがもしかしてもしかしてマリア様?』

『もしかしてマリア様ですわ』


 自爆ワンピと俺は二人同時に深い溜息を吐く。


『なんでよ! 白龍の騎士でしょ? 普通ここは爽やかなるイケメンでしょ?』

『なんでだよ! マリア様だろ? 普通ここは包容力に溢れた歳上のお姉さんだろが!』


 お互い悪態を地面に垂れ流す。


『どうやらマリアもユウヤ様も既に顔見知りのようですね、一体どこでマリアに会ったのですか?』


 マリアに絞められた首筋に怪我は無いか、確認しながらミコトさんは俺に尋ねる。


『え、ああ、ミコトさんが靴の仕立てに行ってる間にカンポ・デ・フィオーリ広場でちょっと一悶着あって』

『まあ、それはマリアがご迷惑をおかけしました、マリア、首を絞めたことユウヤ様に謝りなさい』


挿絵(By みてみん)


『え! いや、私は悪くないわよ』

『今のはどう聞いても貴方が最初に侮辱しましたよ、それにユウヤ様は多少目が細いですがブサイクではありません』

『ちぇ! ハイハイ、私が悪うございました、ごめんね』


 マリアは全然反省してないなこれ、あとミコトさん、フォローが正直過ぎませんかね。


『まあまあマリア様も気を取り直して、今は作戦中ですよ』


 誰だ? マリアの横に立っている男性がなだめて取りなす。


挿絵(By みてみん)


 イタリア人なのかな? よく分からないが年齢は20代後半くらいだろうか? マリアと同じ服を着ている、かなり身長が高い穏やかな顔つきのイケメンさんだ。


『んなもん分かってるわよペトロ』


 ペトロと呼ばれた男性は右手を自分に差し出す。


『こうしてお会い出来て光栄です、12使徒を束ねております第1使徒ペトロと申します』

『あ、どうも、エピゴノスに乗ってるって言えばいいのかな……ナカジマ ユウヤです』


 なんか会えて光栄とか言わると少し照れるな。


『それではナカジマ様、我々12使徒について簡単にまとめてありますのでこちらの端末をご覧下さい』


 俺はペトロさんから小さなタブレットの様な情報端末を渡される、そこには何人かの顔写真と共に名前が表示されていた、しかもご丁寧に日本語表記だ!


 第1使徒ペトロさん、この端末をくれた長身のイケメンさんだ。


 第2使徒ゼベダイのヤコブさん、うーーんなんかすんごい幼い感じの女の子に見える、小学生くらいか?


 第3使徒ヨハネさん、おじいさんみたい、たぶん還暦は過ぎてそう。


 第4使徒ソーニャさん、ロングヘアーのキリッとした美人さんだ


 第5使徒フィリポさん、フードを被っているから顔がよく分からん、金髪のイケメンさんぽい


 第6使徒ナタナエルさん、女性みたいだな、かなりの美人さんだ。


 第7使徒マタイさん、こちらも女性だ、黒髪をおかっぱみたいにしている、こちらもかなりの美人。


 第8使徒ユージンさん、なんだかよく分からないが今はアメリカに行っているらしい。


 第9使徒アルファイのヤコブさん、スキンヘッドにサングラスを掛けている、うーーんかなりの怖面だな、町で会ったら目をそらしてしまいそうだ。


 第10使徒ダダイさん、かなり若い、俺と同じくらいだろうか? 髪をブルーに染めている。


 第11使徒シモンさん、こちらもかなり若い、ダダイさんの反対でこちらは髪が赤毛だ。


 第12使徒マティアさん、さっきここまで案内してくれた人だ、穏やかな好青年といった感じだよね。


 第1から第12使徒までの顔と名前はこんな感じだった。


『現在、ここにいるのは第1、第2、第6、第9、第12使徒でございます』


 ペトロさんの説明に合わせて使徒のみなさんが頭を下げる。


『第4使徒はロシアにて作戦中、第8使徒は北米にて作戦中、第3、第5、第7使徒はドイツにて作戦中、第10、第11使徒はスイスとイタリアの国境付近にて作戦中になります』


 ペトロさんにサラサラサラット説明されたが、半分以上の使徒のみなさんはここには居ないみたい、ドイツとスイス、イタリア国境付近はまだヨーロッパな感じだけど、北米で作戦なんて何をやっているのだろう?

 しかし12使徒のみなさん忙しいみたいだな。

 などと考えていると、どこからともなく、なんだか聞き覚えのある声が響いた。

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