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エピローグ

 深い海の底からゆっくりと浮上するような感覚で目が覚めた……


 意識がまとまらない。


 どこかしらここは?


 畳?


 周りを見渡すとそこは確かに雲雀の間だった。

 あの時、私はオロチを倒し次元の裂け目に飲まれたはず……

 気が付くと傍らで徳重が泣いていた。


『お嬢様……お嬢様……』


 どうやら私は命拾いをしたらしい。


『徳重、もう大丈夫よ安心して』

『お嬢様――――――――――!!!』


 声を掛けると徳重は泣きながら電話をかける。


『……あっ』


 気が付くとすぐ傍でアト様が腕を組み障子にもたれて私と徳重を見つめていた。


『アト様……』


挿絵(By みてみん)


 アト様の髪を見て気が付いたのだが私の髪は元の黒髪に戻っていた。


『これはアト様のお陰ですか?』


 髪を手でさわりながらアト様に質問する。


『髪は女の命なんだろう?』


 普段のアト様からあまり聞けないような答えをもらい、思わず笑みがこぼれる。


『お前のおかげで奴も少し成長したからな。今回は特別サービスさ』


 奴? そう言えば彼は何処にいるのだろう?


『その、奴に私は助けられたのですね』

『ああ、まさか奴が私の手助け無しにミコトを助けるとはな』


 彼の所在も気になるが、この機会にもう少しアト様に聞いておきたいことがある。


『私は人柱としてあそこで散る予定でした、オロチは完全に滅んだのでしょうか?』

『その点なら心配無い、オロチは完全に滅んだよ』


 どうやら心配なさそうだ、しかしそれならばなぜ我々五皇が人柱として散るような予言がされているのだろう?


『先程からスサノオ様の気配をまるで感じません、私は力を失ったのでしょうか?』

『いや、スサノオの回復にはまだもう少し時間がかかるのさ』

『それでは今後もスサノオ様を召喚出来るのですね?』

『ああ、だが以前のようにはいかないだろう。オロチを倒したことによってオマエの一族に掛かっていた呪いは解けたからな』

『呪いが解けた……つまり力の蓄積が出来なくなったと』

『そうだ。だから使えるのは今まで溜めた力のみになる、以前のような力は出せないし徐々に力も衰えていくだろう』


 私としては意外な答えだった。


 オロチを倒し、役目を終え、万世史記の予言ではもうこの世にいるはずのない私がまだ力を使えるらしい。


『まだ私には何か役割があるのでしょうか?』

『さあな、それは私には分からない』


 それからしばらくすると車が急停車する音が響いた。




 ダッダッダッダッ!




 廊下を走ってくる足音が聞こえる。




 ドテン!!!




 あっ、転んだ。




 しばらくの沈黙の後また足音は響き出す。




 私が生き残った意味




 これから先の運命




 色々と分からないことが多いが




 とりあえず今は




 廊下を駆けてくる彼と





 生きている喜びを分かち合おう。


挿絵(By みてみん)



 アトの世界 第一話 完

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