風
”裕也様、もういいんです”
『もういいってどう言うことですか!』
”もう終わりでいいんです”
『終わりって……』
”もう私は全ての力を使い果たしました、もはやスサノオ様の声も聞こえません”
『そんな……』
”このままここにいては裕也様達も次元の修復力に巻き込まれてしまいます”
『イヤです! 絶対に退きません!』
モニターに映っているミコトさんはまったく動かない。
”実は万世史記の予言には続きがございます”
『続き?』
”白き竜が舞い降りるとき、飛来の役目終えるとき、飛来が命人柱となるとき”
『そんなバカな……』
”万世史記の予言は絶対です……お役目も果たし悔いはありません……我々五皇が人柱になることでデシメーターは完全に滅びるのです、ゆえの人柱であり柱神です”
『イヤだ!!!』
”裕也様?”
『ミコトさん! 自由になりたいって言ってたじゃないですか!』
”自由……”
『そうです! オロチも倒したし、これからやっとミコトさんの自由な時間が始まるんじゃないんですか!』
”…………”
とりあえずこの隙間を広げてミコトさんとスサノオさんを助けなくてはならない。
さっきから徐々に隙間が狭くなっている。
もう一度隙間にエピゴノスの手を突っ込んで広げようと試みる。
『ぐぐがががががが!!!』
駄目だ! ビクともしない!
”裕也様、早くここから逃げて下さい”
駄目だ! どんどん隙間が小さくなっていく!
”裕也様、もういいいんです”
ここでミコトさんを見捨てて逃げるなんて絶対にできない!
”もういいんです……”
『よくない! 絶対によくない!』
”もう……”
よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!よくない!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!開け!
開け!!!
エピゴノス!!!!!!!!
その瞬間、鳥籠のモニターが全て消えた。
まるでエピゴノスのエネルギーが切れたかのようにモニターの火が消える。
先程まで外の様子を映していた鳥籠の格子にはなにも映っていない。
今はエピゴノスの内部、真っ暗な天井と床、そして赤い地平線がそのまま見えていた。
まさか! アトが力尽きたのか!
振り返って螺旋階段に座るアトを見る。
アトの息は荒いが意識はありそうだ。。
『アト……』
しかし、あの様子ではおそらくアトも限界だ、もうエピゴノスを動かす力は無いのだろう……
『ううっ……マジか……ここまでか』
またもや両膝が折れる。
ミコトさんが……
『ううっ……』
情けない話だが涙が出てきた。
ここ最近は泣きっぱなしだ。
物心付いてから涙を流したことは数えるくらいしかない。
それが最近はいい歳こいて泣いてばかりだ。
なんとか……なんとか助けなきゃ……
ヒュ――――――――
『?』
ヒュ――――――――――――――――――――――
風だ。
後ろの方から……
風が吹いている……
『なんだよ……これ……』
風が吹く方、螺旋階段と反対側を見る。