身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
『いやぁ、こんなこともあろうかと用意しておいて助かったな』
!?
あれれ? 今、スサノオさんの声が……
『まったく、こんなこともあろうかと、じゃないですわ!』
こっ……今度はミコトさんの声だ!
見ればオロチに刺さった天叢雲剣の持ち手部分。
そこに緑色の光が集まっていく。
緑色の光が持ち手部分に集まると、スサノオさんが指先から徐々に再生されていく。
手、腕、上半身、下半身、頭と光は集まりスサノオさんが姿を現した。
『ミコトさん!』
たいぶ近づいたせいかモニターのひとつがスサノオさんの鳥籠の中を映し出した。
鳥籠の中、緑の光に包まれミコトさんの体も再生されていく。
『裕也様……』
『ミコトさん無事だったんですね!』
そう言うとミコトさんはニッコリ微笑んだ。
『まあ、無事といいますか……最後の神器のおかげですわ』
『最後の神器?』
ミコトさんはそう言うと自らしているピアスを手に取った。
『最後の神器、八尺瓊勾玉……装者の代わりに砕け散る……』
その直後、ミコトさんのピアスは緑色の光を放って砕け散った。
『今のは?』
『三種の神器の一つ八尺瓊勾玉、デシメーターとの戦いにおいて装者が力尽きた場合一度だけその身代わりとなってくれる神器です』
『じゃあ八尺瓊勾玉が無かったら……』
『今の一撃で終わっていました』
キイイイイイイイイイイイイイイッ!!!
何処から音を出しているのかオロチが悲鳴とも非難とも取れるような声を上げる。
『オロチは今の一撃で力を使い切ったようですわ』
『うむ。それ比べてこちらは八尺瓊勾玉のお陰で霊力がずいぶん回復したぞ』
『まあ、少々ズルイ気もしますが……』
スサノオさんは草薙剣を呼び出すとオロチに突き立てた。
ギイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!
『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれと言ったところか!』
スサノオさんの周囲に今までに無いほどの蒼い光が立つ!
『スサノオ様!』
『ミコト殿!』
二人がお互いの名を呼び合った瞬間、蒼い稲妻はオロチを包み込んだ。
オロチを蒼い稲妻が焼いていく――――
だがオロチもなかなかしぶとい。
あれだけの攻撃を至近距離から喰らいながら、まだ触手をスサノオさんに伸ばそうとしている。
『『ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』』
スサノオさんとオロチを包んだ光は蒼い太陽のように周囲を照らす!
『ミコトさん!』
長く美しかったミコトさんの髪が徐々に白に染まっていく……
この光はまさに命の光だ――――
『これが最後だミコト殿! 私の力も全て叩き込め!』
『スサノオ様!』
ミコトさんの髪が全て白に染まると同時にオロチの断末魔が轟いた。