富士山の赤い光
ヨレヨレとエピゴノスを飛ばす。
さっきから鳥籠越しにミコトさんを呼んでいるんだが一向に返事は無かった。
オロチ本体との最終決戦に間に合えばいいんだけど……
しばらくして富士山に赤い光が立つ。
あれか!
赤い光が放たれた部分を鳥籠のモニターで拡大表示する。
同時に声も拾えるようになった。
『かまわん! 他に攻撃するべき対象も見当たらんし、どんな生き物も瞳は弱点だ!』
『そっ……それでは!』
攻撃対象とか生物とか細かい話は分からないがオロチを攻撃する話をしているようだ。
スサノオさんの周りをウネウネと触手が取り巻いている。
その根元を拡大表示すると確かに巨大な瞳のようなものがあった。
もしかしてあれがオロチの本体か?
富士山中に巨大な瞳が埋め込まれている。
闇の中ギョロギョロと動き回る巨大な瞳は、見ているだけでこちらの感覚が色々狂いそうになる。
早くあそこに行かないと!
なんとか急ごうとするのだが速度が上がらない。
そうこうしているうちにスサノオさんが青い光に包まれていく。
天叢雲剣の技を使うつもりだ!
地震がいつ起こるか分からない、一刻の猶予も無いので急いでカタを付けるつもりだ。
天叢雲剣に力を集めるとスサノオさんがオロチの本体に突っ込んだ!
巨大な青い光になって一つ目にスサノオさんが突っ込む。
天叢雲剣は目玉に突き刺さり青い稲妻がオロチを翔けめぐる。
だがそこまでだった。
完全にオロチを仕留めているようには見えない。
目蓋を閉じたオロチの瞳は、遠めでまさにニンマリと言った感じで笑っている。
次第にオロチの触手がスサノオさんを絡めていく。
ヤバイ! ヤバイ! あれじゃあ!
いそげ! いそげ! エピゴノス!
ゆっくりとオロチは一度閉じた目蓋を開いていく。
目蓋からは光が大量に溢れ出ていた。
あれは! パラボラアンテナオロチのエネルギー波か?
パラボラアンテナオロチの何倍もの大きさの一つ目からエネルギー波が解き放たれようとしている。
ヤバイぞ! 小牧山のときの何倍もある!
あんなの至近距離で喰らったらいくらスサノオさんでも……
『ミコトさん!!!』
そう叫んで思わずモニターに手を伸ばした瞬間。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッウウウウ!!!
『!!!!!!!!!!』
ミコトさんとスサノオさんは一つ目の放ったエネルギー波に飲み込まれた……
オロチから放たれたあまりの光量に目を覆う。
しばらくして光が収まったあと、オレの目に飛び込んできたのは無残な光景だった。
『嘘だろ……』
さっきまでスサノオさんがいた場所にはオロチに刺さった草薙剣だけが残り、あとは何も無かった。
『嘘だ……』
エピゴノスを進めながらオロチの周りをモニターで探しまわる。
『いない…いない……ハアッ……いない……』
だめだ……
思わず膝が折れて両手を床に着く。
ハアッ! ハアッ!
全身の汗が吹き出てきた……だめだ……そんな……
『ミコトさんぅ……ミコトさあああああああんんんん!!!!!』




