オデッセウス
声のするモニターに目をやると、そこには金髪の青年が映っていた。
『ペネロペ。倒れてるあいつがアトってやつか?』
『かもしれない』
モニターの向こうで金髪の青年と少女が会話をしている。
向こう側の声が聞こえるならこちらからも話し掛けられるかもしれない。
そう思ってモニター越しに話し掛けてみる。
『いてて……あんた……誰だ?』
右腕がかなり痛む……
モニターに映った青年はキョトンとした顔になった。
どうやら言葉は日本語が通じるらしい。
『おい、ペネロペ。あいつ俺達のこと聞いてきたぞ』
『無視しなさい、無視』
『いいや、ここはいっちょ自己紹介しとくか!』
そう言うと青年は大袈裟にマントを翻しポーズをとって自己紹介をした。
『我が名はオデッセウス! 創造神より貴様の討伐を命ぜられた勇者オデッセウスなり!!!』
勇者オデッセウス?
『そして傍らにいるのは我が妻ペネロペなり!!』
『誰が我が妻よ!』
ゴッ!!!
『ぐふぉ!』
勇者オデッセウスと名乗った青年は、なにやら横から飛んできたレンガのようなもので頭を打たれると血を吐いて倒れこんだ。
なんなんだ……コイツら……
『なっ……なにすんじゃ! ペネロペ! 危うく死ぬとこじゃ!』
『あんたが勝手に私のこと妻とか言うからでしょ!』
『前世はそうじゃろが!』
『前世は前世! あーきもち悪い、やめてよね! ペッペッ!』
『ううっ……』
なにやらペネロペという女性の方がオデッセウスに不満があるらしい。
そうこうしていると残ったパラボラアンテナオロチが積木人形に向かってエネルギー波を一斉に放った。
『おわっ! なんなんだコイツラ!』
モニターの中、オデッセウスが驚いている。
『デシメーターオロチの攻撃よ』
『あれがデシメーターの手下か! 鬱陶しい!』
そう言うとオデッセウスは左腕を前に振り払う動作をする。
キン! キン! キン! キン!
オデッセウスが左腕を前に振り払う動作をした瞬間、甲高い無数の音と共に雲を突き破り、上空から光の矢がパラボラアンテナオロチ軍団に降り注いだ。
す……凄い……
残っていたパラボラアンテナオロチは全てオデッセウスの攻撃で消し飛んだようだ。
オロチを攻撃してくれるなんて、俺達の味方なのか?
けどさっき確かに貴様らの討伐を命ぜられたとか言ってたよな……
もしかしてオデッセウスは何か勘違いしているのかもしれない。
『ありがとう、オロチを攻撃してくれて』
オデッセウスに感謝の言葉を掛ける。
オデッセウスはハアーー??? 摩訶不思議と言った表情だ。
『ナニ言ってんだオマエ? 次はオマエの番だぞ』
『え? けどオロチを攻撃してくれたし仲間じゃないのか?』
『仲間? 冗談じゃない!』
そう言うといきなりオデッセウスは左腕を前に振り払う動作をした。




