アンテナ軍団
恐らく何十いや何百体ものパラボラアンテナオロチが一斉にそのアンテナ部分を対空砲よろしくこちらに向けているのだ。
『裕也様、空中では下から一斉に狙い撃ちされます。一旦地上に降りてあれらを一掃しましょう』
『そのほうがよさそうですね……』
エピゴノスをアンテナ軍団の端の方へと降ろす。
『アト、鉄パイプを』
『ん』
最小限の返事で出された鉄パイプを構える。
ワラワラとアンテナ軍団が集まってきた。
スサノオさんが両手に草薙剣と天叢雲剣を構える。
さて! それでは行きますか!
鉄パイプを構えて前に進もうとしたときだった。
『裕也様、少し後ろに下がっていただいてもよろしいでしょうか?』
『へ?』
おっととっと! 思わず前のめりにツンのめる。
今のオレ、結構ヤル気出てるんですけど……
しぶしぶスサノオさんの後ろに下がる。
『ミコトさん、どうする気なんですか?』
『いつ大地震が起きてもおかしくありません、時は一刻を争います』
そう言うとスサノオさんの手にした草薙剣には赤い光が、天叢雲剣には青い光が浮かび上がった。
『少々数が多いので大技を使います』
『大技?』
赤と青の光はその輝きを一層増した。
『スサノオ様いきます!』
『おうさ!』
ミコトさんの呼びかけにスサノオさんが答える。
スサノオさんが草薙剣を赤い光と共にアンテナ軍団に突き出した。
『ハァ!!!』
グウウオオオオオッ!!!
赤い光がアンテナ軍団に向かう。
赤い光の中アンテナ軍団が半透明に透けた状態になっている。
『ハァ!!!』
もう一撃、今度は天叢雲剣を青い光と共に突き出した。
青い光は雷撃のような形となりアンテナ軍団に襲い掛かる。
赤い光で透明になったアンテナをすり抜けるように、青い雷撃は縦横無尽にアンテナ軍団を駆け抜ける。
うねり渦巻く赤と青の光がお互いの色を消しあい、飲み込まれたアンテナ軍団はその大半が消し飛んだ。
『うわわ、ほとんど消えちまった……』
あんなにいたパラボラアンテナオロチの9割くらいが消し飛んだ。
残るは数十体といったところか。
『ミコトさん! 凄いじゃないですか! これならオロチも一撃ですね!』
モニターのミコトさんに声を掛ける。
ミコトさんはフゥと軽く息を吐くとニッコリ笑った。
『確かに今の技は威力があるのですが、草薙剣と天叢雲剣の力を全力で放つのでかなりの霊力を消費します。同じ技はあと1回が限界です』
『へっ? あと1回なんですか?』
『はい。申し訳ありません』
流石にあんな威力の技は連発できないか……
もうスサノオさんの力の半分を使ってしまった計算になる。
それならばここからは地道にいくしかない。
『ミコトさん、だいぶ数が減ったので残りはオレがエピゴノスで相手をします。時間が無いので先に本体の方に向かって下さい』
『……分かりました』
そう言うとミコトさんは山頂の方へ向かった。
だいぶ数が減ったので、多少地上から狙われても大丈夫だろう。
さて! 今度こそ残りの相手をしますか!
ミコトさんの手前カッコつけたが久々の戦闘だ、大丈夫かなオレ?
多少の不安と共にエピゴノスを滑らせアンテナ軍団に斬りかかる。